劇場公開日 2023年11月3日

「折れない日本人が、あの艦とあの幻と共に闘う世界線」ゴジラ-1.0 keebirdzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5折れない日本人が、あの艦とあの幻と共に闘う世界線

2023年11月14日
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政治性や各演技、演出や見せ場の選択など、本作にはやはり色々細かい我々日本人観客からの賛否が分かれているようです。しかしワタシ的には、端的にとても良くできた感動娯楽映画だと思いました。

結果的に米国や世界でどれだけ売れるか分かりませんが、日本にも21世紀が20年過ぎて漸く
「特撮娯楽+感動+自分たちの民族性を誇りを持って分かりやすく堂々と見せる」
映画が出てきたかと思えて大変嬉しいです。世界にフツーに売りに出せる良作。

特撮や演出も、出来る限りを無理せず見せた過不足のない表現で「アベンジャーズ」やら「ダンケルク」のようなド派手さや過剰な?緊張感はありませんが、寧ろ却って現実感を覚えました。どうしても現代日本人的になる使い言葉や風貌はともかく、あの頃の日本人はあんな感じの人々、雰囲気だったのかもしれません。
若い主人公、ヒロインとも怪獣映画という前提と時間枠の下で、同時に求められる80年近く前の役柄の時代的心情や感情表現を見せるのは大変難しかったと思います。よく頑張った。

そして本作で出色だったのは艇長はじめ素晴らしく各人個性を発揮した脇役陣や、(撮影時には実際いない)巨大生物をただ見つめる、又は逃げる、叫ぶだけのチョイ役・モブの全く隙のない演技とその撮影。これらはハリウッド映画でも一線級作品以外ではできず、同じくワタシ的には(独特な日本の独特な映画として)傑作だった「シン・ゴジラ」よりも遥かに素晴らしかった。

そして、本作では太平洋戦の“隠れた帝国海軍(損耗率6〜8割)”だった木造民間船や、史実では戦いを生き残り戦後自沈・爆破・原爆被験体となったフネが、銀幕上で今一度死力を尽くして戦っています。そしてあの幻の異端児も… 子供の頃プラモデルで、大人になってから(笑)はアニメで見知ったあの海空の勇者たちが、ただただ“怒れる邪悪な神”、大自然からの“終末兵器”と化したゴジラに向かっていきます。素晴らしい、そして、ありがとう。

後日蛇足
またDolbyCinemaで見てしまった、至高。
それを前にふと本作のWikipedia 英語版を見たら、「本作は日本では好評不評入り混じった反応である」とあってちょっと驚いたのでその辺り見てみたら、映画批評の大御所?四方田犬彦氏や英字紙等のリベラルぽい方々を中心に復古愛国・好戦的で危険、内容上滑りなエンタメ(ですがなにか?)だとの【少数意見】が絶賛大声でそちら界隈にあるんですねー知りませんでした。監督がそんな皆さんお嫌いの危険なダメ映画(実際国内大ヒットしましたが‥)「永遠の0」を撮った山崎監督で、零戦・人間味ある特攻隊員・なんぞやを守る為に戦うと、いうのが重なってしまいどうもお楽しみになれないようです。
私は山崎氏は娯楽芸術的商業映画製作の名人で、今回も初めから戦争や日本の機微にそう詳しくない日本人中年まで層や欧米人向けに果断に作った記念碑的まじめ風ゴジラ娯楽作品が、見事ツボにハマってスマッシュヒット(ちょい死語)したものに過ぎない(ごめん偉そう)と思ってますが、嫌いな方にはそこも癇に障るようです。めんどくさいな。トマトメーターは依然98%だあんち野郎ども!
あっ、そんなことよりアカデミー視覚効果賞受賞の本邦初快挙、おめでとう!!

keebirdz