「ゴジラという存在の意味」ゴジラ-1.0 nazionaleさんの映画レビュー(感想・評価)
ゴジラという存在の意味
ゴジラとはすなわち
神の化身であり人の罪の象徴であり絶望の実体化
それは戦争の愚かさとも結びつき、今なお互いを殺し合う人の業の果ての姿とも言える。
今作はそのゴジラのオリジンとも言える根底をもう一度描き出し、ゴジラとは何なのかを再定義してし見せたような。
そんな畏怖や愛、何よりその存在に対する敬意が感じられた。
ストーリーとしては根本にある人間ドラマ という部分は割りと真正直。戦後日本を舞台にした場合に描かれやすいテーマが主ではある。
ただそこにゴジラという存在が差し込まれることでより人間同士の関係性や感情が立体的になり、安っぽさへ傾いていない。
そしてゴジラがメインとなるディザスターシーンや海上での衝突。
特にこの部分の見せ方が重要だが、要所で組み込まれる人間目線でのアングルカットや海中から半身だけ乗り出し圧倒的恐怖感をもって艇へ迫るゴジラを並行視点で捉えるショット、予告にもある電車の窓へ映り込むゴジラなど あくまで人間の視点にたったカメラワークが冴えに冴え観衆へ恐怖と興奮と抑えようのない高揚感を与えてくれる。
そして何よりも神々しい放射熱線。
尾から背びれへ徐々にトサカが突き出し青く光りながら放たれる美しい熱線。
そうだよこれが見たいんだよと。
結局のところここの説得力が欠けては成立しないのがゴジラ映画。そういった意味では描写で叩きつけて見せた今作はこの時点で既に成功と言える。
しかしそこに留まらず人間の罪の象徴たるゴジラをそれぞれに後悔や絶望を抱えた人々が再び立ち上がりその罪を乗り越えるため生きて抗うというのは、ゴジラを模して罪からの解放を表しているんではないか とも考えられた。
根底にあるテーマ性をゴジラを用いることによってすくい出しながら、あくまでも怪獣スペクタクルとしての破壊描写や表現を見失わない。
姿勢にブレがなく一貫性が感じられることで観客としても最後まで感情を持続しながら見ることができる。
ただし一つ不満を言うならばマイナスや負 というからにはもっと日本中を巻き込んだ暴走や破壊が見たかったという思いはある。
圧倒的な恐怖や無力感を実際に感じられたのが銀座での場面のみ というのは少し物足りない。
その意味ではシン・ゴジラには劣るように思う。
まるで人がアリかのように踏み荒らし叩き潰し焦土と化す。
絶望の存在であるならば、もっともっとそのどうしようもない絶対性を見せてほしかったと感じるのです。
しかし、最後にゴジラのテーマが流れた時
全身が震え奥底から湧き上がる喜びがたまらなかった。もはや既にその時点で傑作なのかもしれない。