クリード 過去の逆襲 : 特集
【これは映画ではない。人生だ】シリーズ最重要作の幕
が上がる――! サーガ―全米最大のヒットの理由は、
血と涙のファイナルラウンドのアツさ・親友との死闘・
衝撃と慟哭の過去…彼らの“答え”を今すぐに目撃せよ
私たち人間は、しばしば映画に対し“映画を超えた体験”を求めるものだ。「クリード 過去の逆襲」(5月26日公開)は、まさにそんな願いを叶えてくれる稀有な一作である。
これはもはや“人生”だ。血と涙のファイナル・ラウンド。親友との死闘。クリードの衝撃的な過去。そして……。
今作はシリーズ最大のヒットを記録し、辛口批評サイト「Rotten Tomatoes」では96%支持の超高評価を受けるなど、全世界のファンに前代未聞級の熱狂をぶちまけている。さらにはシリーズ三部作の“最後にして最重要作”と位置づけられている内容であり、「ロッキー」「クリード」の大ファンはもちろん、「全作観ているわけじゃない」という人にも絶対に観てもらいたい“傑作”でもある。
ということで本特集では見どころをわかりやすく解説しつつ、実際に鑑賞した編集部員による“白熱のレビュー”をお届けする。今こそ魂の連打を浴び、映画館で燃えつきろ――。
【シリーズ最重要作である6つの理由】最大級のラスト
バトル、全米で特大ヒット…もう“間違いない一本”
まずは今作の見どころを。シリーズ最重要作と書いたが、その理由となる“6つの激アツ”をご紹介していこう。
●激アツ①:物語
クリード、ついに引退→“親友”との死闘に挑む…何があったのか?
世界チャンピオンの座を防衛し続け、華々しく引退したクリード(マイケル・B・ジョーダン)。バラ色の引退生活を謳歌していたある日、ムショ上がりの幼なじみ・デイム(ジョナサン・メジャース)が現れる。実は、クリードには家族同然の幼なじみを宿敵に変えた、誰にも言えない過去があったのだ。
やがて運命に導かれ、2人はリングで死闘を繰り広げることになる。長い激闘の日々で満身創痍のクリードは、死の危険を顧みずデイムに向き合うが、それでも戦わなればならない理由とは? 2人の間に何があったのか? 血と涙の殴り合いが始まる――。
●激アツ②:大ヒット
全米で“サーガ”最大の興行収入を記録、圧倒的高評価!
全米で公開されるや規格外のロケットスタートを切り、公開3週目にして世界累計2億2420万ドル(3月20日時点)を突破。これは前作「クリード 炎の宿敵」の全興収(2億1400万ドル)を超える数字だ。また、全米だけの比較でも「ロッキー」「クリード」サーガ全ての作品を越える大ヒット記録を更新した。
さらに米批評サイト「Rotten Tomatoes」では観客スコア96%を記録(4月10日現在)。圧倒的な高評価と快進撃ゆえ、“間違いない一本”と言えそうだ。
●激アツ③:監督&主演
マイケル・B・ジョーダン、完全に覚醒した“スター”が吠える!
主演は前二作に続いて超人気俳優マイケル・B・ジョーダン。今作ではなんと監督も務め、長編映画監督に初挑戦している。
一方で、一作目「クリード チャンプを継ぐ男」の監督だったライアン・クーグラー(「ブラックパンサー」など)は製作・原案として参加。さらにサーガを代表するロッキー役、シルベスター・スタローンも製作としてジョーダン監督をサポートし、今作には出演しない。
功労者たちが表に立たない作品だが、それだけに「クリード」が“「ロッキー」のスピンオフ”という殻を破り、完全に独り立ちしたとも言える。まさに覚醒の時を迎えたジョーダン監督のビジョンと演出は、どれほどの力を秘めているだろうか? 期待して観よう。
●激アツ④:映像
“スポーツ映画史上初”IMAX®で撮影! 劇場が熱気ただようリングに
映画館で観るべき最大の理由がここだ。今作のファイトシーンはIMAXカメラで撮影されており、劇場が熱気バキバキのリングへと早変わりするのだ。また、スポーツ映画がIMAXカメラで撮影されるのは史上初とのこと。
マイケル・B・ジョーダンが「ファイト、アクション、全てにおいて大スクリーンで体験するにふさわしい。全ての人が映画館を出たときに“その場にいたようだ”と思って欲しい」と自信に満ちたコメントを寄せるように、臨場感抜群の映画体験になるだろう。予告編にもその一端は収められているので、ぜひチェックを!
●激アツ⑤:対決
マーベル「ブラックパンサー」「アントマン」の“2大カリスマ”が激突!
キャストもまたアツい。特に主演のマイケル・B・ジョーダンは「ブラックパンサー」のキルモンガー役、今作の宿敵役のジョナサン・メジャースは「アントマン&ワスプ クアントマニア」のカーン役で知られており、つまりマーベル映画の“2大カリスマ”が死闘を演じることに興奮を禁じえない。
また、クリードの妻ビアンカ役のテッサ・トンプソンは「マイティ・ソー バトルロイヤル」、ほか共演のウッド・ハリスが「アントマン」、フロリアン・ムンテアヌが「シャン・チー テン・リングスの伝説」にも出演。「ロッキー」ファンでなくとも、彼らのアンサンブルに強い興味がわいてくるだろう。
●激アツ⑥:神話の“ファイナル・ラウンド”にして再出発 クリードの人生を見届けよう――
こうして今作の事実を整理していくと、長らく愛される“サーガ(伝説)”の集大成ともいえることがよくわかる。“血と涙のファイナル・ラウンド”と銘打たれてもいるため、これまでよりも何十倍もアツい映画体験となることは確実だ。
一方で、「クリード」はさらなる広がりも構想されている。“クリードの人生”は、我々の人生と同じようにまだまだ続くのだ。その行方を、しかと見届けてほしい。
【期待を抑えきれず】実際に観てきた 魂の連打で
完全燃焼する116分間 興奮と感動と感謝で呼吸困難に
さて、ここまでは“観る前に期待すること”を中心に記述してきた。では実際に鑑賞すると、どうだったのか? 映画.com編集部のレビューを、もちろんネタバレなしでつづっていこう。
結論から言えば、今作は“絶対に観るべき一作”だった。
※筆者プロフィール:「クリード」前二作鑑賞済みで、“ボクシング映画に外れなし”と心に刻んでいる男性記者。
●目撃①:これはただの映画ではない。人生だ。
最も強烈に印象に残ったのは、ただ映画を観るのではなく、本当にクリードの人生に寄り添っているかのように感じられたことだ。序盤からその感覚がすさまじく、まさに映画以上の体験を味わうことができた。
子や家族と過ごすクリードの幸福は僕にもよくわかるし、一方で不義理をした昔の親友との気まずい再会も身に覚えがある。遠方で独居する年老いた母に同居をすすめるシーンもあり、僕はまだ経験していないが、いずれは避けて通れぬ出来事なだけに、登場人物たちはどうするのだろうと手に汗握った。
自分の人生とリンクするシーンのなんと多いことか。ディテールやリアリティへのこだわりが、物語を現実のものに感じさせ、何の変哲もない日常の一コマを、心に深く刺さる名場面へと変えていく。特に前二作で若き日のクリードが成長する姿を観ていたことで、なおさら“彼の人生とともにある”ように思えた。
そしてこのことが、映画後半にとんでもない威力となって僕を襲うこととなった。クリードとあなたの人生が交差した時、経験したことのない感動を得られるだろう。
●目撃②:主役俳優の演技力がすごすぎ クリードの葛藤、デイムの苦悩…感情が数十倍に増幅する
派手さとアツさだけではなく、俳優陣の卓抜した演技も素晴らしい。特に主役2人にスポットを当てたい。ただの芝居ではない“降りてきている”クラスの熱演にノックアウトされるからだ。
まずはデイム役のジョナサン・メジャース。出所直後のデイムが、クリードとともにアメリカンダイナーで食事するシーンがすさまじい。デイムは「敵意はない」と示すためか、それともセレブになってしまった親友への気後れか、卑屈っぽい笑顔を浮かべながらめしを食う……全編にわたり、トップ・オブ・トップの一流俳優にしかできない、筆舌に尽くしがたい表情をみせてくれた。
対するクリード役のマイケル・B・ジョーダン。自分のせいで運命が変わってしまった者が目の前にいるのに、自分だけが幸せになって良いのか? あれだけ屈強なクリードが弱さをみせ、ムクムクと罪悪感と贖罪の意識が育っていく様子を完ぺきな精度で体現してみせている。
こうした名演のつるべ打ちに、スクリーンから片時も目が離せない。演技を通じて、映画を観る情動が何倍にもふくれあがっていくのだ。
やがて始まる死闘……ネタバレになるため、具体的に何がどうなって戦うことになるのかは明かせないが、以下から受け取ったメッセージや、その感動の一部は以下からお伝えしていこう。今作鑑賞の大きなモチベーションになるはずだ。
●目撃③:メッセージの衝撃的感動が全身を貫く 過去からは逃げられない、しかし人間は進歩する
今作のメッセージはさまざまあるが、印象深いのは「悪い過去からは逃げることができない」だ。
逃げても、忘れても、過去は必ず追いつき、信じられないほど強い力で振り向かせる……ではどうすればよいのか? 今作の登場人物たちは、その背中で、私たち観客に答えを示してくれる。その過程がとことん涙腺を刺激するのだ。
またもうひとつ、「人間は進歩していく」ということ。ロッキーは少年期~青年期の息子と良好な関係を築けなかった。そのことが「ロッキー」シリーズのみならず「クリード」シリーズにまで波及していた。しかし今作のクリードはボクシングを通じ、娘との絆を深めていく。前の世代の失敗を、次の世代がクリアしていくことのメタファーであり、人間は進歩していくのだと今作は伝えてくれるのだ。
しかし同時に、物語はある局面から「人は過ちを繰り返す」とも示唆する。相反するテーマを同居させつつも、矛盾や破綻の影を一切見せず、テーマの相反を推進力に力強く進んでいく。脚本と演出がゾッとするほど巧い、と舌を巻かざるを得なかった……。
このようにテーマやメッセージは、僕の体を強く突き動かすほど力にあふれ、意識に劇的なさざなみを立てた。登場人物の心情を見事に表現する俳優陣の演技も調和し、ああ、このサーガが好きだな、僕はそんなことを思いながらスクリーンを見つめていた。
●目撃④:IMAXの迫力が異次元 映像の力で「クリード」は飛躍的進化を遂げた
これでレビューも最終ラウンドだ。やはり映像の迫力は語らなければならない。IMAXでのファイトシーンが、これまでの作品とはまったく異なる点であり、シリーズファンもぜひ期待して観に行くとよいし、ファンでなくてもこれには衝撃をくらうだろう。
劇中には多くのファイトが収められている。高精細な映像も目を見張るが、たとえばリングの底から戦う2人を仰ぎ見るようなアングルなど、カメラワークも相まって臨場感が半端ではないのだ。
そして、バトル演出も神がかっている。クリードが対戦相手の重たいパンチをかわす模様が、スローモーションで映し出される。クリードの視線が、ガラ空きになった相手の脇腹に注がれている。通常速度の映像に切り替わり、矢継ぎ早に繰り出されたパンチを再びかわす。再度スローになる。先ほど見つめていた脇腹めがけ、クリードが渾身のカウンターを放つ――まさにヘビー級チャンプの見ている世界を体感できるような映像である。
マイケル・B・ジョーダンは「汗の粒、衝撃、肌に立つ波、足音、パンチ、音楽、すべてを目で確認できる。だから作品の世界に完全に没入するだろう」と言っていた。彼の言葉は嘘偽りではまったくなかったのだ。
上記以外にも「斬新だ」と驚くようなファイトシーンが非常に多く盛り込まれている。4Dでもないのにリングの熱や、まとわりつく空気、戦いのにおいまで感じられるほどで、興奮ゆえ呼吸困難寸前になることも――この映像を体験しにいくだけでも、鑑賞料金分の価値が大いにある。
【結論】何度も観たい、何度だってブチ上がりたい
以上で本記事は終了だ。シリーズ最大級の感動と興奮をしかと食らった様子は、少しでも伝わっただろうか。
ほかにも特訓シーンの小気味よさや、「自分のせいではないのに、夢を諦めなければならないつらさ」といったテーマなど、語りたいことはそれこそ山のようにある。今作は一度の鑑賞でとどまらず、二度、三度と繰り返し観たくなる魅力にあふれているので、何度も劇場に足を運びたいとも思った。
この「クリード 過去の逆襲」は、やはり“ファイナル・ラウンド”にしてシリーズ最重要作。感動と興奮を、いち早く映画館で目撃してほしい。