劇場公開日 2023年4月28日

「マリオが映画の歴史を変えた」ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー みりぽんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マリオが映画の歴史を変えた

2023年5月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 マリオの映画と言えば90年代のアレが黒歴史として語り継がれている。当時の失敗からなのか任天堂の映画と言えばポケモンと相場が決まってしまった。しかしここに来て満を持してのリベンジ。ファミコン時代から追っかけていたファンとしては嫌な予感がしていたが、全米での大ヒットとの触れ込みで一気に期待が膨らむ。

 率直な感想としてはこれぞエンタメの真髄と言ったところ。まずファミリー映画の醍醐味としては子供のみならず親世代も楽しめることである。任天堂の制作陣が拘ったポイントはまさにそこだろう。レトロゲームの懐かしいネタが散りばめられていたり、ゲームを映画化するとこうなるのかという驚きがいい意味で予想を裏切ってくれた。

 前半は少し現実世界の世知辛いシーンが多く退屈ではあった。自分の中でのイメージと違う主人公像に戸惑ったが、そもそもマリオとルイージはゲーム内ではどういう人物なのか語られることはほとんどなかった。なるほど、後から思い返すとゲームでは説明できないことを映画でできるからなのかと納得した。また、ゲーム中では単なる移動手段にしかすぎない「土管」が映画ではかなり不気味な要素を孕んでおり、新しい使い方だと思った。

 さて、そんな不安も中盤からは見どころの連続で一気に眠気も吹き飛ぶ。往年の少年マンガ全盛期のような修行のシーンやライバルとの一騎打ち、クライマックスは必殺技のWキックという熱い展開も必見である。よくもまあ90分という尺の中にこれだけ詰め込めたな、という内容の濃さである。個人的にやはり一番の見どころはトレーラーでもあったカートバトルのシーン。完全にマッドマックスであり、ここだけ見ても十分に楽しめる。マリオ作品の使える要素を惜しみなく散りばめ、原作ファンも唸る出来と言える。

 海外では評論家の意見が思わしくないようだが、渋い顔をして言う下馬評はそもそもナンセンスである。そもそもファミリー向けの映画に下手な小細工は不要なのだが、物足りなさを感じる人はそもそも楽しんでいる部分が違うのである。ネット上ではポリコレに配慮していないとか政治的な主張がないからだ、と言われているがそうではないだろう。

 アンパンマンのような単純な勧善懲悪もので最後にヒーローが悪を倒して終わり、という一本道のストーリーなので結末は容易に予想できる。しかし観客が望むものは結末ではない。本当に重要なのは予想を裏切る楽しい展開の連続なのである。評論家はそもそもゲームをプレイしておらずキャラクターやお約束の展開を十分理解していないのだろう。

 それでも原作とは違いピーチではなくルイージが誘拐されてしまうところや、中年兄弟の厳しい労働環境など最近の世相に配慮したかのような表現は子供向けとは思えない内容もある。強い女性という点ではピーチの勇ましい格闘シーンやバイクでのシーンはとても魅力的でよかった。

 スマブラ以降のこの設定の変更だと思われるが、どちらかと言うとピーチはお姫様というより師匠といったところ。これが意外にもハマり役で、この映画のシナリオに完全にマッチしており当時の判断は英断だったと言える。一方のルイージはまるでヒロインというか、よく考えれば何故中年兄弟が仲良く寄り添っているのかも謎である。ある意味LGBTではないか…?

 とまあ見るからにゲームの販促とUSJの宣伝を兼ねているのは確かではあるが、だからこそ下手に捻らず原作に忠実でファンに寄り添った内容であるし、勿論新規ファンも大きく開拓できる。単なる宣伝ならこんな話題になる作品にはならないだろう。エンタメビジネスとはそもそもそういうものであり、それの何が気に食わないのか。

 ファンを楽しませるのが一番であって観客に自分たちの存在を認めさせることではない。それを理解した任天堂とユニバーサル・スタジオのタッグは、まさに全ての思惑が一致しており決してブレることはない最強のワンチームとなった。今後は任天堂のさらなる映画業界への進出に期待したい。個人的には次回はカービィを映画化し、デデデ大王に表現の自由に挑戦して欲しい。

みりぽん
YOUさんのコメント
2023年5月3日

ゼルダやメトロイドも映画化して、スマブラ映画への道が開けそうですね(笑)

YOU