マッドゴッドのレビュー・感想・評価
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ストップモーション・マスターの内なる狂気をめぐる“2021年地獄の旅”
パペットを扱うストップモーションアニメの伝説的なクリエイターの姓がティペット(Tippett)だなんて何やら運命的なものを感じるが、中世英国から割とある苗字らしく、ショールのように首や肩にかける細長い布(tippet)に由来するとか。
さて本作の監督、フィル・ティペットは「スター・ウォーズ」や「ロボコップ」などのSF大作で特殊効果を手がけた名匠だが、自ら双極性障害(そう鬱質)を認めており、「ジュラシック・パーク」に参加した際にはCGの恐竜を目にし絶望して寝込んだり、神経衰弱になって精神科の施設に入院したりといった逸話も伝えられている。
そんなティペットの闇深い精神世界の奥底へと降りていき、ダークな空想と狂気から創造された異形のクリーチャーたちが無数にうごめく幾層もの地獄をめぐる体験、とでも形容できるだろうか。恐ろしくも強烈な魅力を放つ造形物と、パペットを一コマずつ動かして撮影するストップモーションアニメ独特の作り込まれた小宇宙を好むジャンルのファンなら、ただ映像世界に身を委ねるだけで忘我の境地だろう。睡眠が十分に足りた状態で鑑賞することをおすすめしておきたい。
83分の地獄めぐり
すごいのはわかるが、生理的に無理だった
狂神(ティペット)創造の90分耐久地獄
ハリウッドを代表する視覚効果アーティスト、フィル・ティペット。
彼が90年代に着手しながらも一度断念した企画を、30年の時を経て完成させた監督作。
何があったのか。ここは何処なのか。
地獄のような暗黒世界。本当に地獄なのか、地獄と成り果てたのか…?
そこに降り立った一人の男。
おぞましい生き物が蠢く中、地図を頼りに深部へ入り込んでいく。目的は…?
数年前に話題になった日本の『JUNK HEAD』を彷彿させる。
一応そう始まるが、すぐさまこれは、話を追ってはいけない作品だと分かる。話はあって無いようなもの。
ビジュアルを見る作品。
そのダークな世界観。不気味なクリーチャー。これでもかというくらいのオンパレード。
グロや汚物にもまみれ。
その全てがストップモーション・アニメで表現。
一つ一つに、ティペットのこだわりを感じる。いやもう、狂気と言っていい。
…しかし、話があって無いのが仇となり、途中から飽きてくる。
延々見せつけられるビジュアルにもげんなり。
台詞もナシ。
主人公と思った男が何者かに捕まり、内臓ぐちゃぐちゃ血肉にまみれた辺りから訳が分からなくなってくる。
ストップモーション・アニメの筈が、役者が演じるキャラも。何者…?
再びこの世界に別の人物が送られてきて…。
ラストはもはや理解不能。あの人物、展開はどゆこと…??
視覚効果アーティストとして数々の名作に携わった経歴。
一度絶望まで落とされるも、オスカーを受賞するに至った『ジュラシック・パーク』の経緯。
執念と言っていい本作完成の道程。
華々しいキャリアだけじゃなく、苦労人でもあり、フィル・ティペットご本人はリスペクトに値するが…、
狂神(=ティペット)が創造したこの世界に耐えられるか、否か。
私はダメだった。
(★採点はティペットへと前半までは目を見張ったビジュアルに)
いろいろと気持ち悪い
スゴい「映像作品」※血肉と汚物描写に注意!
鑑賞者は血肉と汚物を見ることに抵抗感がない人である事が大前提、かも…
個人的には、この「夢で一瞬だけ見た事がある」的なシーンたちを具現化し映像化している時点でスゴイ!と感じました。
創作物としてスゴい。
夢で見た事がある映像って、覚えていても脈絡や現実味が無さすぎて言葉や絵で表現する事がとても難しいですが、この作品はそれをやってのけているような印象を受けます。
人間っぽい物たちが作られては無駄に死んで?いく様子が、場面によっては滑稽で見ていてふふんと鼻で笑ってしまったりも…
お笑いファンでも、シュールな笑いが大好きな人とどこが笑えるのか分からないという人で分かれたりしますが、今作もそうなりそう。(むしろもっと明確に分かれると思う)
そして、たまーーーに出てくる綺麗なもの(ラメでできたキラキラしたものなど)に切なさを感じてしまう不思議。
地獄のような世界観の中で「美しいもの」を見たことで、その繊細さや儚さがより際立っていたのかもしれません。
分からない
狂気に満ちた情熱
凄いという噂なので
驚異の映像体験
めくるめく悪夢的世界に圧倒されてしまった。
物語はあってないようなもので、ある目的を持った一人のアサシンが地下世界に潜り込んでグロテスクな光景を目撃していく…という体で進行する。何の脈絡もなくシュールで意味不明な光景が次々と出てくるので、苦手に思う人は多いだろう。
また、セリフが全くないため、この世界観を把握できないまま観ていくことになり、途中で「ワケ分からん」と放り出してしまう人がいても不思議ではない。自分も早々にストーリーを追いかけることを諦め、この独特な世界観に身を委ねながら、邪悪な映像の数々を「体感する」ことにした。
実際、ここまでぶっ飛んだ世界観というのも中々見たことがない。テイストは全く異なるが「ファンタスティック・プラネット」以来の衝撃的体験である。
地下に生息するグロテスクな生き物たちの醜悪さや、至る所に死臭と汚物感が漂う光景は、正直見ててキツいものがある。ただ、これがフィル・ティペットの脳内で生成された世界だと言われれば、その圧倒的物量と情報量には素直に首を垂れるしかない。ここまで画面に浩々と己の世界観を再現したこと自体、他の誰にも真似できないのではないだろうか。
本作の製作は元々は30年前に始まったそうである。ところがCG全盛の時代になり、ティペットの創作意欲も意気消沈。それから20年後に、彼のスタジオのクリエイターたちを中心に再び製作が再開されたということだ。実に苦節30年。正に執念の作品と言うことが出来よう。
アニメーションとしてのクオリティも申し分ない。一部でCGや実写映像を使っている個所もあるが、約90分間。ストップモーションアニメらしい面白さが詰まっている。
最も印象に残ったのは、アサシンの解剖シーンだった。腹の中から取り出されたあのクリーチャーは一体何だったのか?デヴィッド・リンチの「イレイザーヘッド」を思い出してしまった。しかも、あのような顛末が待ちうけていようとは…。時計の針が再び動き出すという展開に「2001年宇宙の旅」のオマージュも感じられた。
尚、アサシンを地下世界に送り出したマッドサイエンティスト役を映画監督のアレックス・コックスが演じている。これまでフィル・ティペットとの繋がりは、少なくとも作品上では無かったので、意外であった。
難しい、、、
タイトルなし(ネタバレ)
前半はとても良かったが、中盤にガスマスクアサシン君が死んだ辺りで映画のテイスト変わった感じがした。
そっからテンション下がってしまったが、終盤少し持ち直した
後半にどことなく既視感があるのと、リアルナースなどの俳優さん達や、アルケミストが出てきてストップモーションが切れた?あたりで一気に冷めた
84分って短いと思うけど後半ちょっと怠さを感じてしまった
制作期間30年とあったが途中で中断してるから実質10年くらいなのかな?
テーマはなんだろう、戦争、時間、始まりと終わりのループとか?
混沌としていて無秩序、意味不明だらけだけど、良い意味で昨今の風潮みたいなものがなく、作りたい側のやりたいことを貫いてる作品だと思う
狂った神様?気持ち悪いだけ
みんな、汚穢から生まれて汚穢に帰るんだ... ハリウッドの特殊効果の第一人者が三十余年を費やして己の脳内をぶちまけた阿鼻叫喚のストップモーションアニメ映画
旧『スター・ウォーズ』シリーズに始まり、『ジュラシック・パーク』や『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズの特殊効果を担った鬼才フィル=ティペットが1990年に着想して以降、自宅をスタジオとしつつ、クラウドファンディングも重ねて遂に作り上げた全編ストップモーション・アニメによる地獄絵図にして彼自身の脳内宇宙そのもの!!
グロテスクな生物たちの饗宴に、巨大で暴力的な機械群に撒き散らされる命の血飛沫・・・全編セリフ無しの物語ゆえにただただ目の前で繰り広げられる狂気の世界にクギ付けになれます。
非常に簡単に言ってしまうと"地獄めぐり"をただただ眺めて刮目して楽しむ作品です。
描写や展開それぞれの意味性を考えるのではなく、目の前の異形がどのように動き回ってどのように"中身"をぶちまけるのか…そんな作品です。(*´艸`)
デジタル全盛の世の中に気の遠くなるような歳月を要して一コマ一コマ紡ぎ出された画面は細部まで凝りに凝っており、またそれだけ造り込まれた事物やキャラキターを盛大に弾けさせるので、エコとかSDGsとかいう概念にも真っ向から喧嘩を吹っ掛けているような異端中の異端作。
意味やメッセージを考えるような作風ではないですが、上記のような細密でサイケなビジュアルに加えて耳障りな金属音のノイズ(さながら『鉄男』のような)が奏でる不協和音音楽との相乗により、何度でも観たくなるような危険な中毒性も秘めています。
これだけの大作をほぼ独力で作られていたのでそりゃ~30年は掛かるだろうな、というところですが、もしこれが2000年前後にフルで完成して広く世の中に出されていればアナログからCGデジタルへの移行がもっと緩やかだったかもしれません。
それぐらいのアナログの可能性と拡がりを感じさせる作品です。
「とりあえず凄いものを観た」、という強烈な印象は確実に残る一作
本作の監督、フィル・ティペットはストップモーション・アニメーションの巨匠として(彼の開発した技法を指して、「ゴー・アニメーション」と表記する場合もあるようですが)様々な名作に参加し、『スター・ウォーズ エピソード』(1977)のミニクリーチャーのチェスなど、誰もが知る名場面を創り出しました。そんな彼が情熱と執念を傾けて、なんと約30年もかけて作り上げた作品が本作です。
ティペットのアニメーションは単にかわいらしいものではなく、おどろおどろしさも含まれていることは、『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)などで理解したつもりではいましたが、彼の頭の中を具現化したら、こんなになっちゃうのね、と言葉を失うほどの奇怪さ。近年のストップモーション・アニメーションの大傑作として、『JUNK HEAD』(2021)があり、こちらもその世界観の異様さには最初に驚かされたものだけど、それでも本作のインパクトは強烈で、丹念に作られたあらゆるカットが、(忘れたくても)忘れられなくなるほど脳裏に焼き付きます。
主人公と覚しきキャラクターの、一種の地獄巡りであることは分かるんだけど(このあたり『JUNK HEAD』と奇妙に符合しています)、ナレーションなどはほとんどないので、観客はただただティペットの作り上げた世界を味わうのみ。グロテスクな描写も包み隠さず(というか、かなりあからさまに)描写しているので、誰にもおすすめできる作品ではないけど、頭に強烈なイメージをインストールしたい!という人にはひとまずお勧めです。
世界観を受容できないと楽しめないかも知れないけど、受け容れてしまえばたちまち大傑作に変貌する作品です。
また資料集としてもそのデザインの秀逸さからしても、パンフレットは購入おすすめ。
超質が高い意味不明な遊戯というか寄せ集め
めっちゃ質が高かったです。ビジュアルと音響・音楽に関しては文句のつけようがありません。どんなに意味不明でも、どんなにグロく気持ち悪くても、個人的には楽しめました。
ただ、設定や展開があまりにどこかのものを連想するものが多かったように思います。地図を見ながら下へ下へと進んでいくのはどこぞのアニメのようで、そういえば一人でやりきったストップモーションも地下世界のお話だった気が・・・とか、世界観にしても(知ってか知らぬか)どことなく黒坂圭太なんだよなー・・・とか、1990年に思いついて一旦中断し時を経て2021年にようやく完成、と言われましてもねぇ・・・ってな感じです。
エンドロールを見ながら、こんだけ人がかかわっているんだから、そりゃあ質が高くなるよなぁ・・・なんて思ったり─。金・人かけてもこれだけ上質な作品を仕上げる保証はなかったわけだから、そういった意味では作品自体の力感は伝わってきました。
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