ファイブ・デビルズのレビュー・感想・評価
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タイムリープ+同性愛の意欲作だが、要素過多の印象が惜しい
レア・ミシウス監督はフランスの国立映画学校ラ・フェミスの卒業生で、セリーヌ・シアマ監督の後輩にあたるが、このフランス人女性監督2人の新作、シアマ監督の「秘密の森の、その向こう」とミシウス監督作「ファイブ・デビルズ」がともにタイムリープを扱っているのは興味深い。2人は「パリ13区」(2021)で共同脚本を務めたことからも少なからぬ交流があるはずだが、タイムリープに関してインスパイアされるような共通の体験があったのだろうか。さらに言えば、9月に日本公開されたフランス・ベルギー合作「地下室のヘンな穴」にもタイムリープの要素がある。近年の仏映画界にタイムリープのブームが来ているのか。
さて、本作の主演はジョアンヌ役のアデル・エグザルコプロス(2013年のカンヌ・パルムドール受賞作「アデル、ブルーは熱い色」では19歳で少女っぽさを残していたが、あれから10年近く経ちすっかり大人の女性の風情)だが、ジョアンヌの娘ヴィッキーが過去へと繰り返しタイムリープし、ジョアンヌとジュリア(ヴィッキーの父ジミーの妹)という2人の秘密を知る、つまり観客の目の代わりになってストーリーを伝える役割を担うので、ヴィッキーが実質的な主人公と考えられなくもない。
ヴィッキーはもともと鋭い嗅覚を持ち、ジュリアがひそかに携行していた小瓶の液体の香りを使うことで、過去にリープする能力を発現させる。過去にいる時のヴィッキーの姿はほぼ誰からも見えないが、唯一ジュリアにだけは幽霊のような姿に映るらしい。ジュリアも、彼女のベッド下にヴィッキーが隠した調合物の香りをかいだことで、過去にリープする。どうやらジュリアとヴィッキーの家系の女性にだけ受け継がれる特殊能力のようで、ラストシーンもそのことを示唆している。
映画は、ジョアンヌとジュリアという女性同士の関係と、山麓の小さな村の閉鎖的なコミュニティーにおける同性愛差別や人種差別などの要素も絡んで展開するのだが、要素が多い割にはそれらの有機的な連動性が物足りない。ジョアンヌがジュリアと別れた後になぜジュリアの兄ジミーと結婚してヴィッキーを生んだのかもあいまいで、ジミーがなんだか都合よく利用されただけの男のようで不憫だ。意欲作ではあるが、詰め込んだ要素をうまく整理できていないのが惜しい。
【”愛のかげり”今作は、嗅覚の異常に鋭い少女が能力に覚醒し、過去の母の姿を観てしまった事により起こった事を描くタイムリープスリラーである。】
■嗅覚が異常に発達した少女・ヴィッキー(サリー・ドラメ)は、こっそり母ジョアンヌ(
アデル・エグザルコプロス)の香りが付いたモノをガラス瓶に詰めて集めている。
そんな彼女の前に突然、過去に村ファイヴ・デ・デビルズを追われた叔母ジュリア(スワラ・エマティ)が現れる。
そのことをきっかけにヴィッキーのさらなる香りの能力が目覚め、自分が生まれる前の母と叔母の封じられた記憶にタイムリープしていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・作品設定が奇抜でありながら、グイグイと作品に魅入られていく作品である。
・香り(パフューム)を題材にした映画は余り記憶にないのだが、今作は”香り”が重要なカギになっている所が魅力的である。
■ヴィッキーは、学校で苛められているのだが、能力により苛めっ子たちを一瞬で昏倒させたり、更にはタイムリープにより過去に行き、独身のジョアンヌとジュリアが恋仲である事を、酒に酔った二人がパブでボニー・タイラーの名曲”愛のかげり”を仲良く歌っている姿をサングラスを掛け乍ら見ているのである。
そして、現代に戻った彼女は言うのである。
”お母さんがジュリアと別の地に行っていたら、私は生まれていなかったんだよね。”と。
・更には、過去にジュリアが皆がダンスを習っていた建物に放火し、そのために現在はジョアンヌの夫であるジミー(スタファ・ムベング)の且つての恋人ナディーヌの顔面に酷いやけどを負わせてしまうシーンもヴィッキーは、観てしまうのである。
<ラストは切ないし、色々と考察したくなるシーンが展開される。ジュリアはジョアンナがいつも寒中水泳をしていた湖に行って、身を沈める。
ー そして、その湖は且つて二人が愛し合っていた場所でもある”愛のかげり”が流れるショットが描かれる。この辺りの描き方は巧い。-
だが、その事を察知したヴィッキーは、母ジョアンナと共に湖に駆け付け、ジョアンナは救急車の中で息を取り戻したジュリアに、涙を流しながら寄り添うのである。
そして、最後に現れた褐色の肌の女の子が突如現れるのである。彼女は、ジミーと且つての恋人ナディーヌの子供なのだろうか・・。
今作は、観る側に色々と考えさせる作品なのである。>
ちょっと悲しい愛の物語
匂いにとても敏感なヴィッキーは特定の匂いでタイムリープしてしまうようになる。両親、叔母ジュリアの過去を覗いてしまうのだが....
母親とジュリアはレズビアンの関係だったのだが、そのジュリアだけにタイムリープしたヴィッキーが見えるために彼女は精神異常と思われてしまい、悲劇を引き起こすのだ。それにより母親とジュリアは別れることになり、ジュリアの兄との間に生まれたのがヴィッキー。悲劇の原因はヴィッキーなのだが、それがなければヴィッキーはいないというタイムパラドックス。まあSF的にはツッコミどころかもしれませんが、ストーリーにとってあまり重要ではありません。
なかなか面白い設定でした。しかしジュリアの「ヴィッキーが見える」に対する振る舞いってどうよ?異常者に見えるような反応をする必要があったのか?というのがこの映画の瑕疵だと思うが、そこがまともだとストーリー自体成り立たないから致し方なし。
アデルさんご無沙汰です。彼女はいい感じです。
ヴィッキーのサングラス姿が可愛い
性愛か家族か。ママが大好きなヴィッキーの視点から、ジュリアとジョアンヌ、間に挟まれたジミーについて描かれる。
ヴィッキーは、目覚めた力によって過去にタイムリープし、自分の存在が邪魔であったことを知る。それは、ジュリアとジョアンヌ、ジミーとナディーヌの関係を知ってしまったからである。現代におけるヴィッキーの存在は、ジョアンヌとジミーを繋ぎ止めるものであり、過去においてはジュリアにしか見えない異端な存在である。また学校においても、ヴィッキーはいじめられ、異端児扱いされている。
最終的にヴィッキーは、ジュリアとジョアンヌの関係を受け入れ、ジミーに寄り添う選択をする。しかしジミーは、2人を横目に、一時の迷いでナディーヌと関係を持ってしまう。その点も、作品全体がヴィッキーの存在を危うくする要素であり、終始ヴィッキーの選択に目が離せない。
またその象徴として、湖の存在が大きく関係している。本作における湖・寒中水泳は、ヴィッキーとジョアンヌの楽しみであると同時に、ジュリアとジョアンヌの思い出でもある。この湖を軸に、それぞれの関係を描くことで、よりヴィッキーの心情や選択を複雑なものとして描いている。
めんどくなぁ
どーしてこんなにひねくれな、あかんのや?
とフランス人には聴きたいw
ママはパパのシスとできていた。
ママはパパのシスとできていた。
そしてパパはシスのせいでママのフレンドとやっちゃった
そしてパパはシスのせいでママのフレンドとやっちゃった
でパパのシスはパパとママがやってできてくる子が見えていた。ってそんな話。なんじゃそれ!
量子的一致が狂うとここまで拗れるんやね◎
首尾一貫して不気味な雰囲気は拍手もの(^^)
考察作品
感想の前に、今作品のいろいろあるティザー画像のミスリードっぷりが目に余るのは苦言を呈したい
そもそも作品自体のテーマ性やコンセプトに即してなく、なにか不気味なホラー映画っぽく印象づけている点に違和感を抱く 色々な予告的宣伝を観て映画鑑賞しようと思っている人に勘違いさせる広告は止めてもらいたいと願うばかりである
さて、今作の鑑賞後のクエスチョンマークの最大は、ラストの女の子である 唐突に現われる『誰何だお前は?』感 幾ら何でも映画会社24のようなイメージを醸していても、これはどうだろうと疑問を持たざるを得ない ここがはっきりと今作の好き嫌いを分けるポイントなのではないだろうか 自分的には"否"と言わざるを得ない テーマ的には現在の諸問題を上手く散りばめつつそれを効果的に結びつけている点が素晴らしかっただけに、せめて、父親と元恋人の過ちの上に産まれた女の子が・・・みたいな匂いをもっと分かり易くみせて欲しかったが、そもそもそうなのかどうかさえ分らない構成であり、監督も敢えて種明かししていないことで、観客の想像に委ねる構造なのである
ジェンダー、母娘、閉鎖的村社会、イジメ問題、SFとしてのタイムループ等々、綺麗に構成されているからこそ、変に終わらせずマスターピースを嵌め込んで欲しかったと言う思いは拭えない あれだけ苛めていた女の子が、主人公の娘に"一緒に遊ぼう"と心変わりした経緯も、その前に集団気絶した際に、それぞれの過去にタイムスリップしたかもしれないなんていうサブストーリー故の理由だなんて想像しただけで面白いのだが・・・
タイトルなし(ネタバレ)
映画で嗅覚ってピンとこない
香りを嗅ぐとタイムリープするってアイデアは面白い
とりあえず、
旦那となぜ結婚したのか
旦那の妹は何故このタイミングでやってきたのかわからなかった
最後に出てきた子はジミーとナディーンの子?
ジミー、ジュリアの血筋に能力があるわけだし、映画内にその描写があるってことはそうなのかしら
ジュリアがあの後去って子ができたとしてヴィッキーのとこくる可能性もあるのかな
か、ヴィッキーの子
ヴィッキーとパパを見に来る理由がある人、自分の出生を脅かされると感じる人ってだれなんだろ
まあこの子を誰が見える見えないにしろ結局過去は変えられない。自分が変われば受け入れられるでハッピーエンドのループってこと?
メインで描かれない感情や描写を読み取れる所が好み
嗅覚が優れている少女が、匂いから過去へタイムリープするスリラー。
時をかける少女やオルファクトグラム等、嗅覚と記憶の話は好みなので鑑賞。
個人的に不倫(浮気)を愛の物語と言うことには抵抗があって、
手放さざるを得なかった恋の物語の方だなと。
親子愛も含めたら愛にはなるのだけど。
ホラーではなかったので人には勧めにくいが私は好きだった。
主人公のヴィッキーがかわいい。
閉鎖的なフランスの山村の話で、ナチュラルに差別意識を隠さないところは
すごく既視感…(田舎あるある)。いじめも辛い。
タコを叩きつけるところは悪魔、鍋でカラスの死体や尿を煮込むところと、
ツリーへの放火は魔女のメタファーかな?
ヴィッキーが原因なのだけど、悪意があったわけではなかった
(嫉妬や焦りはあったとは言え)、でもとんでもない結果になってしまう、
という流れが辛い。
意外性なく始終予定調和ではあるが、メインで描かれない感情や描写を
読み取れる所、説明しすぎない所が良い。
父親の状況や心情を考えるととても辛い。(描写はないが十分想像はできる)
ラストシーンの少女、てっきりヴィッキーの子供で因果応報されるのか…?
と思ったけど、他の人の考察を読んだら父親&ナディーヌの子供とあり、
因果応報感は弱いけれど、理屈ではしっくりくる。
これから先を予感させるラストがとても良い。
「時をかける少女」じゃん。
「ときかけ」はラベンダーの香りが時間旅行を誘発する。設定は同じです。繰り返し無しの時間旅行なので、"Time Loop" じゃなくて、"Time Leap” の方ですね。どちらにしても和製英語なので、現地感覚では ”Time Travel” でしょうか?
登場人物を総じて”Five Devils”としたタイトル。ヴィッキーとヴィッキーの出生に関係する4人。ヴィッキーのタイム・リープは、自らの誕生を確定させるための時間旅行。と言うのがネタバレですが。
ラストに出現した少女もまた、自らの命がこの世に授かる様、ヴィッキーの周囲の人に影響を与えることになる?
アルプスの風景の美しさに魅了され。
ダークな色付けも心地よく。
ビビりのワタクシ的には、ちょうどいい感じのスリラー仕立てで面白かった。
と言うか、下手にNanoテクノロジーの遺伝子云々なんてSFチックにせずに、「ラベンダーの香り」とかのミステリーにしとけよ!
って思いましたw
旦那はよく怒らないでいられるね~よっぽど良くできた人なの?/新進気鋭の女性監督の映画って難しくてやんなっちゃう
火事の現場で泣きながら佇むレオタード姿の女子たち。フランスの田舎町(村)に引っ越してきた黒人の兄妹。ジョアンとジミー。ジョアンは女子体操の強化選手として高校に転校してきた。
地元の高校の体操部に所属するジョアンヌとその友人たち。ジョアンヌには母親はおらず、祖父と暮らしている。
ジョアンヌとジミーの夫婦にはヴッキーという8歳の娘がいて、鋭敏な嗅覚能力を持っており、混ざった臭いも正確にかぎ分ける。ジャムの瓶などにいろんなものを混ぜて、ラベリングして収集している。気持ち悪い。学校でも見事なアフロヘアーをトイレブラシと揶揄されていぢめられている。
そこへ刑期を終えてか、10年ぶりに町に帰って来て、家に居候するジョアン。ヴィッキーはジョアンを嫌っている。ジョアンヌもジョアンをあからさまに煙たがって、早く出て入って欲しいとジミーに言う。ある日、ヴィッキーは庭で大きな鍋にカラスの死骸などをを入れて炊き、瓶に煮汁を入れてジョアンのベッドの下におく。嫌がらせ?悪魔払いのおまじない?
ジョアンヌが勤めるスイミングスクールには顔から首にかけて右半分に醜いケロイドの残った元体操部の同級生と思われる女性が清掃係として勤めている。ジョアンヌの健康的なプロポーションはとても素敵。
ヴィッキーはジョアンと書かれた瓶を嗅ぐと昏倒し、10年前にタイムスリップする。10年前の女子高生3人とジミーは仲良く車で出かけたりしていたが、ヴィッキーの姿を見たジョアンはひどく怯えるのであった。そして、植え込みに隠れたヴィッキーを追い払おうとしてか、たいまつの火を放つと、飾りの旗のヒモに引火して、体育館が火事になる。まるでヒモが
導火線のように激しくよく燃えていた。一度は外に出てきたジョアンヌが体育館の中に戻っていくと、絶叫するジョアン。ヴィッキーはジョアンと会ってから、予知能力も得た様子。
町の名前は英語表記だとファイブデビルズ。
高校生のジョアンヌとジョアンは互いにひかれ合っていたが、祖父は帰ってきたジョアンをレスビアンの放火魔に近づくなとジョアンヌに警告する。
町のレストランバーで食事するジョアンとジミー夫婦とヴィッキーたち。酔ったジョアンヌとジョアンはカラオケで愛の陰り(ボニータイラー)をデュエットすると、周りの客は二人に対する嫌悪をあからさまにしてくる。その雰囲気は子供のヴィッキーにも伝わってしまったと、ジミーはジョアンヌを責める。
湖で入水自殺しようとしたジョアンを低体温だわと服を脱いで素肌で暖めて助けるジョアンヌ。駆けつけた救急隊員の旦那は一瞬躊躇ったあと、ジョアンヌを救急車に同乗させて、ヴィッキーを連れて家に戻る。そのあと、顔半分火傷のケロイド女子と激しくまぐわるジミーの行動の秘密がよくわからなかった。昔はジミーの恋人だったのかな?火傷を負った時に救命される場面ではハサミでレオタードをジョキジョキ切って、焼けただれた体が一瞬見えた。なんで仕事場(スイミングスクールのプール脇)に結婚式の写真や家族写真を飾り、火傷の彼女がそれを泣きながらぐちゃぐちゃにするのか?そこがポイントだね。ホント、女の監督って残酷だと思う。
ヴィッキーは悪魔の妖精なのでしょうか?5人の悪魔っていうことは大人4人も悪魔族?
新進気鋭の女性監督のLEGBT映画なんでしょうけど、その点ではもっと濃厚な白黒ショーが観たかったですw
正直言いますと、あらすじを読んでてもよくわからなかった反面、シーンの展開は結構じれったく、なんだかな~でした。そう言えば、パリ13区の時も、男は置いてきぼりなんていう、レビューを書いたような記憶が・・・・
忙しかった
説明のないまま物語が続くため、いろいろ行間を埋めていく作業で忙しい作品でした。
香りでタイムスリップ(ただし見てるだけ)というアイデアは秀逸。
叔母は、同じ能力があるor感知だけできるのと、若い頃に自分が怯えていた少女の正体にも現代で気づいたと解釈したが……
そうじゃないと、ヴィッキーが仕掛けたあの臭いの罠の意味が通らないので。
他にも、ヴィッキーがクラスメイトからいじめられている原因は、母の過去から、母の元クラスメイトたちが蔑んだことが反映されているのか?
などなど考えられたが、明言されてなくて、最後まで大忙し。
ラストシーンの子供は、ヴィッキーの未来の子なのか?それとも、ジミーの浮気でこれからできる子なのか?
これまた謎で終わりました。
疲れたw
タイムリープ映画ではなく「愛のかげり」映画
ボニー・タイラーの「Total Eclipse Of The Heart(愛のかげり)」といえば80年代の隠れた名曲(全米No.1にもなったし隠れたでもないけど)。時折映画に使われてて、その度にいい曲だなーと思い直す。今回も上映前にこの曲が流れてて、どんな使われ方をするんだろうということが気になってしまった。
話は嗅覚の鋭い娘がある匂いをかいでタイムリープ(と言っても実体はない?ほとんどの人が見えない状態だし)で自分が生まれる前の母の行動を見ることになるというやつ。タイムリープや特殊能力系ではあるが、それよりも家族愛や愛する人との再会を描いた物語だった。
もう少し特殊能力の設定をちゃんとしてほしいとは思ったし、登場するキャラたちの関係性ももう少し説明がほしいところ。ジュリアと別れた後に夫とつきあうことになった流れも全くわからないとどう感情移入していいのか戸惑ってしまう。
でも「愛のかげり」よ。この使われ方がよかった。デュエットするシーンとか妙に切なくなってしまった。あの2人の気持ちもだけど、観ている夫の気持ちも切ない。この曲のおかげで評価が上がってしまう。
最後はハッピーエンドとはいかずに、別れを予感させる若干モヤモヤする終わり方。でも、悪くない。
(以下、ラストシーンについて記述があります。ご注意を。)
最後に出てきたあの子。他の人のレビューも読んだが2つ考えられるようだ。でも私はヴィッキーの娘説に一票。少女の姿だったことを考えると、ジュリアがタイムリープ?してきたヴィッキーを見て驚く意味がわからない(少女時代に見て兄の娘だと知っているから)。特殊能力の説明はおざなりのくせに、最後はあんな能力の遺伝的なシーンを入れてくる。いらなかったかもなとは思う。
愛のかげり
『フットルース』で使われた「Hold Out for a Hero(ヒーロー)」が日本では最も有名なボニー・タイラーの名曲「Total Eclipse of the Heart(愛のかげり:英米NO.1となった))」が聴ける。ドラマチックなバラード曲で、一度は聴いたことがあるはずです。この曲がなければ評価はちょっと下がったかも。
8歳の少女ヴィッキーは嗅覚が優れ、愛するママンの匂いや、栗、松ぼっくりを小瓶に入れ集めていた。水泳教室のコーチである母ジョアンナもびっくりするほどの嗅覚。仕事の後には湖でヴィッキーにワセリンを塗ってもらい寒中水泳するのが日常。そんなある日、消防士である夫ジミーの妹ジュリアが10年ぶりにやってきて自宅に泊まることになった。母を取られると感じたヴィッキーだったが、ジュリアの匂いを基本に自ら調合した匂いによって彼女は卒倒し、叔母ジュリアと母ジョアンナの過去へとタイムリープしてしまう(『時をかける少女』ではラベンダーの香り)。しかし、ヴィッキーの姿が見えるのはジュリアだけだった。「誰?この少女」と不気味に思うジュリア・・・
ヴィッキーは学校で「バカ、ブサイク、トイレブラシ」と呼ばれ、いじめられていたが、彼らも小瓶の匂いを嗅いでしまい気絶してしまうほど。児童の母親からも詰られたジョアンナだったが、愛する娘を守るため、蔑む言葉で応酬する勇ましさ。娘への愛と同時に、ジュリアの過去にも問題があったためだが・・・その過去とは・・・といった展開。
お祖父さんもジュリアを「同性愛の放火魔」と言い嫌っていた。また、右目の火傷の痕が痛々しい水泳教室の同僚ナディーヌは元カレのジミーを奪われたとしてジョアンナを詰っていた。火傷が原因でジョアンナに乗り換えたのなら、ジミーも悪い奴やな。そんでもって、彼ら二人は不倫の仲に。
そんなこんなでジュリアの登場により、過去の経緯が徐々に明かされていくストーリーなのだが、面白いのがそれがタイムリープしたヴィッキーの目線によるものだということ。ジョアンナとジュリアは同性愛で結ばれていたが、ジュリアによる体育館放火という事件によって平和が一気に崩されたのだった。村を去ったジュリアは更生して、ナノバイオの研究者になったとか。
ヴィッキーのタイムリープの能力開花。何度も母と叔母の過去を覗き見するが、そこで母を奪われてしまうと危惧して、オシッコとカラスの死骸を煮た液体をジュリアにも嗅がせるのだった。思いがけずジュリアにもリープの能力が備わってしまったのですね。さらに、放火の原因も明かされ、いつも目に見える謎の少女が怖くて、体操演技を終えたジュリアは体育館横のクリスマスツリーに現われた少女を排除したいと思い、思わず火を放ってしまったのだという事実。なんとまぁ、恐ろしや。
面白いのは嗅覚の優秀さの娘ヴィッキーに対し、母ジョアンナと父ジミーはともに喫煙者であるということ。つまり、ヴィッキーの能力は両親に起こり得ることもなく、同宿していたジュリアにだけ伝播したという点だ。ジュリアにタイムリープ能力が伝播したと考えれば、ラストカットで登場する謎の少女がジュリアの幼少期(または将来のジュリアの娘かヴィッキーの娘)であると想像できるのです。ただし、少女の姿になり、過去ではなく未来へ飛んだことになる・・・ややこしい。
LGBTQのテーマ、それに人種の偏見がない様子が素晴らしい(ジミー、ジュリア、ヴィッキーは黒人)し、いじめの問題も深刻さが伝わってくる。言ってみれば社会派SFの愛の物語!そんな面白いストーリーですが、謎も残る。
○彼女たちが体操部から水泳に趣味を変えている点。もしかしたら放火事件が影響か?
○ジミーが消防士になったのもそれが原因か?
○ジミーはなぜジョアンナを選んだのか?
○村の名前ではあるものの、そもそもファイブ・デビルズというタイトルは誰のことを指すのか?ヴィッキー、ジョアンナ、ジュリア、ジミー、ナディーヌそれぞれが悪魔的な行動をしたとか?
なんだかんだで、最も難解なのがラストカットなのですが、将来のヴィッキーの娘という説が多いみたいけど、個人的にはややこしいジュリアの幼少期だと思いたいです(ちょっとだけジュリアの幼少期が出てたので確認したい)。
叔母 VS 娘
嗅覚が異常に鋭い少女がある日突然家に来た叔母が持っている謎の液体の匂いを嗅いだところ、母親がまだ若かった頃にタイムスリップする話。
母と叔母が結ばれてしまったら自分は生まれてこないことを危惧した娘vs叔母みたいな構図なのだけど、これ、女性の中の母としての自分vs女としての自分に置き換えられるんじゃないかなぁと思った。
だから、最終的に叔母が去るか、それとも娘を置いて出ていくという結末にもしてしまえた所を、母親からどちらも奪わせないし3人でくっ付き合うのが清々しい。家族への愛も恋愛としての愛も、両方同等に大事でも良いよね。『ファイブ・デビルズ』という物騒なタイトルだけど、意外と心あったまる結末だった。
母親と娘の時を超えた愛という題材で今年『秘密の森の、その向こう』って映画も見たけど、母と娘の間の絆には誰も割り込めないっていう雰囲気とはまた違って良かった。
余談だけど同級生4人と同時に意識とんだ時、他の4人も自分の親の過去見たんかなぁと気になった(笑)
フランス風のドラマにホラー➕SFと思いきや・・・
フランス映画のドラマに思考を凝らし、ホラーとタイムスリップ的なものをプラスした作品でした。映画途中までは、スイミングインストラクターのママとパパ、一人子の少女が、香りをきっかけにタイムリープするモノと思い、旧作映画「ある日どこかで」のようなホンワカした展開が進行すのかと想像してましたが・・・。
過去へ行っているのか?、見ているだけなのか?、ママたちの思考にリンクしているのが?・・・あまり深く考えないで観ることに。
でも映画製作者は、何を描きたかったのか?どんな映画を目指して作ったのか?人間ドラマ?不可解な現象ドラマ?・・・なんか消化不良に私的には、感じました。
それぞれの俳優、ママ、パパ、少女は、好演してました。
★Digital5.1ch
★音圧 △
★重低音 ─
★移動音 ─
★分離度 ○
★サイド(左右、後、活躍度) ─
★サラウンド ─
シアター音響は、ほぼスクリーン側の左、中、右のみの使用。
ありえないけど引き込まれる
匂いを嗅ぐことで、過去にタイムスリップ?できる能力を持つ娘が、母親の秘められた過去を探っていくというストーリー。
冒頭に登場する、顔の半分にヤケドの跡が残る母親の同僚や、突然村に戻ってきた夫の妹など、謎めいた登場人物が一体どういう背景を持っているのか徐々に明らかになっていく過程は引き込まれる。
ただ、夫が黒人、娘も黒人に見えるのに、母親は白人という役の設定が、わかりにくくてちょっと混乱する。
なぜ黒人設定なのか?
フランスは黒人多そうだけど、黒人と白人のカップルって、そんなに一般的なのかとか、色々考えてしまう。
最終的に黒人である夫の妹が、過去、建物に火をつけ大火事になっといた、という流れなので、黒人はそういう事をしそうってイメージを植えつけてしまいそうな気もするので、どういう意図があったのか。
素直に白人夫婦に白人の娘って設定で良かった気もする。
最後の最後、抱き合う夫と娘の姿を背後から見ている黒人の女の子は、夫と顔にヤケドを負った女の子どもって事なのかな?
SFスリラー要素を盛り込んだラブストーリー
革新的なイメージがあるフランスの田舎町の保守的な雰囲気も感じることができ、結構面白く観ることができた。
難しいように思えるが、タイムリープで戻った地点も時系列通りだったり、ストレートな表現も多く素直に見るとわかり易い話ではないかと思う。
タイムリープはあくまでも過去を説明する手段でベースはラブストーリー。
ただタイムリープによって事態が変わってしまうこと以外は・・・。
田舎町の父子家庭で育った女の子が都会(パリ)から転校してきた女の子に惹かれ、元々抱いていた現状から逃げたいという気持ちもあり、同性愛に理解がありそうな都会(マルセイユ?)へ一緒に行こうとするが、ある事件が起き結局地元に残ったまま本当に好きなのかどうかわからない相手と家庭を持ち鬱屈した日々を送っていたところ、かつて好きだった相手と再会してしまうといったお話。
タイムリープについては、ジュリアのみがタイムリープしたヴィッキーを見る事ができ、ジュリアに関する匂いを嗅ぐ事で能力を発揮できるということからも、ジュリア、ジミーの家系による能力であることが何となく想像がつく。
それを踏まえると一切説明が無い最後に出てきた女の子は将来のヴィッキーの娘、もしくはジミーとナディーヌの娘であろうかと考えられるが、どちらなのかはご想像にお任せしますという感じ。
主演は「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロスだが日本人好みの可愛い感じが良いが、高校生役でも母親役でもしっかりとハマっており上手な役者さんだなあと思った。
『ファイブ・デビルズ』考察試写会
11月18日公開『ファイブ・デビルズ』を鑑賞。自然に囲まれた田舎町を舞台に女性の社会での属性、家庭内での属性、その連続性を人間の嗅覚と記憶の結び付きをキーアイテムにフィルムグレインと独特の色調で描く。『秘密の森の、その向こう』と同じテーマを別アプローチで描いた作品にも思えました。
タイトルは舞台となる町の名前との事ですが、5人の登場人物がそれぞれに「誰かを悪魔だと思っている」かつ「誰かにとっての悪魔になっている」という意味が込められている気がしました。
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