劇場公開日 2022年11月18日

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ファイブ・デビルズのレビュー・感想・評価

全33件中、1~20件目を表示

4.0不穏で意味深な展開が観るものを惹きつける

2022年10月31日
PCから投稿

不穏な空気を宿しながら観る者をいざなう作品だ。それは序盤、なんら問題を抱えている様子のない母娘のプールでのやりとりから始まるものの、そこに続く日常描写の中で、そこはかとなく少女の特異な能力について明かされるのが面白いところ。それは何らSF的な派手さはないし、何かが光り輝いたり仰々しく蓋が開くような仕掛けもない。ただ「細かな香りを嗅ぎ分けることができる」という極めて地味な能力を起点として、そこからさらに、香りで気を失うことで過去へとトリップするという序破急の「破」の展開が生まれる。監督2作目となる脚本家出身のレア・ミシウスは、こういった描写を非常にナチュラルに盛り込みながら、いったいこの先に何が待ち構えるのか、観客を引きつけるのが実にうまい。母の過去の傷跡と、幼い娘の心に寄り添いながら、一筋縄ではいかない愛の形を多面的に組み合わせようとする趣向にも魅せられた。これからも注目したい才能である。

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牛津厚信

3.0娘としてはたまりません。

2023年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

父母と叔母の三角関係を、娘視点で描く愛憎劇。

愛憎劇・・・しかも、かなりドロドロとしたものを描いた作品です。
そんな物語にタイムリープを絡め、娘視点にすることでサスペンス色も加えて、マイルドに見せる・・・そんな作品です。

それにしても、大人達の行動が全てあり得なくて驚きます。
特に父親。なんか悲劇的な役回りを演じているようにみえて、一番あり得ない行動をとっているのはこの人のような・・・

サスペンス色はありますが、娘と鑑賞者以外は何が起きたか知っている・・・このような設定は個人的にあまり好きではなく、評価を上げることは出来ませんでした。

私的評価は少し厳しめです。

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よし

4.0どこでもアデルらしい

2023年6月12日
PCから投稿

アデルがでてたので見た。
母親の遍歴をユニークな方法で可視化する娘視点の奇譚。SFにはモノにさわると来歴が見えるサイコメトラーという能力があるが、ヴィッキーは対象の人物に関連した匂いをかぐと過去へリープする。無類の独創性だった。

主人公ジョアンヌ(アデル)は結婚してヴィッキーを生んでいるが旦那の妹ジュリアと同性愛関係にあった。ジュリアは幻視に悩まされていて、周囲からは(頭が)おかしいと思われている。幻視対象はヴィッキーであり、構造はよく解らないが合意しうる説得力があった。分類としてはファンタジーだが肌感はリアルな愛憎劇になっている。

核となる事件のあとの平穏な時勢から話がはじまり、ヴィッキーが匂いをかぐたびに、顛末が見えてくることで倒叙していく。
Léa Mysiusという女性監督で語り口も色使いも音使いもばつぐんにセンスがよかった。

ウィキペディアに『2022年に開催された第75回カンヌ国際映画祭の監督週間部門で上映され、クィア・パルムに選出された。』とあった。

クィア・パルムとはLGBTやクィア(性的アウトサイダー全般)をテーマにした映画に与えられる賞だそうだ。

個人的に映画に使われるクィア値には懐疑心をもっている。クィア値に加点するとなれば、男女の物語では0だったものが男男(あるいは女女)の物語ではプラス勘定になってしまう。欺瞞ではなかろうか。クィア・パルムなんて賞設定自体が欺瞞だと思う。

そういう付加価値判断があるから、彼らが本気で編むときは、みたいなエセLGBT映画がつくられちまうんだ。LGBTがなんだってんだ、あんたが女をすきだろうと男をすきだろうと、じぶんのことを女だと思っていようが男だと思っていようが、知るもんか。──って思いませんか。

ちなみにこの映画には釣りのクィア値はない。それはアデルが演じているからだし、自身がそうだったりクィアが日常に遍在している人たちがつくっているからだと思う。

アデルは演技の気配がなかった。ケシシュの映画でなくてもそうなんだと思う。少しぼーっとしているときの半開きの口から齧歯類のように前歯がちょっとだけのぞいている自然で動物っぽい表情!

なおタイトルの意味はわからなかったw。

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津次郎

4.0面白かった

2023年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

しかしネタバレせずに紹介するのが難しい。恋愛だけでは無い。

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mikyo

4.0SF百合ホラー

2023年5月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

色々な過去映画の要素やジャンルを垣間見せながら、どこへ向かっているのかは判然としなかったストーリーが徐々に顕になっていき、閉鎖された社会の中で型に嵌められた女性の愛情と解放というテーマが浮かび上がりクライマックスへ向かう、というだけなら上手いな〜というぐらいだったんだけど、ツインピークスを想起させるような閉ざされた村のどんよりした美しさや、SFホラージャンルとしての醍醐味もちゃんとあって面白かった。香りでタイムリープするとか『時をかける少女』かよってところもいいし、百合映画なのも個人的にポイント高かった。終わってみると結局何か解決したっけ?という気にもなったし、ホラー的な幕切れは蛇足とも思えたが、かといって他の着地点も思い浮かばないので、多分これで良かったのだろうな。

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yudutarou

3.0少女の眼力

2023年5月4日
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 母親ジョアンヌが主役のようだが、娘のヴィッキーが主役にる思える。ギョロッとして、見つめるヴィッキーの目がとても印象強い。
 山や湖などの自然も美しく、火事の場面の紅炎や、ヴィッキーがいつも着ていた鮮やかな青い上着が、黒い肌ととてもよく合っていて、全体的に色が印象的。
 タイムループものだけど、ヴィッキーの特殊な臭覚の能力により、匂いを嗅ぐことでタイムスリップしてしまうところが面白い。
 閉鎖的な田舎町であり、ヴィッキーが黒人ゆえのイジメに遭っていたり、同性愛者への偏見など、社会的な問題も絡ませて、タイムループ物でも、わかりやすい展開。臭いによって意識を失い、タイムループするヴィッキー、そこで母親父親おばの過去を知る。私たち観る側も同じタイミングでおばが何故街の人もうとまれているのかがわかってくる。ことあたりも面白い。
 事件が起こる前に、パパは別の彼女、現在のジョアンヌの同僚、がいたのに、その彼女と別れてジョアンヌと結婚するに至った経緯がわかるともっと良かったのに。
 最後のシーン、ジョアンヌとジュリアがヨリが戻ったことで悲しむパパを(反対するジョアンヌを無視してジュリアを迎え入れたのは自分なのにね)ヴィッキーが優しく慰めるシーン、小さな娘が屈強なパパを抱きしめて慰めているのがとても良い場面。ただあの少女は誰?
未来にタイムスリップしたジュリアなのか?ヴィッキーの未来の娘なのか?謎!

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アンディぴっと

4.5アデル・エグザルコプロス

2023年1月28日
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鑑賞方法:映画館

『アデル、ブルーは熱い色』のアデル・エグザルコプロスが出ててルックが良いし面白そう〜って軽い気持ちで観にいったらめちゃくちゃよかったとゆう贅沢体験な鑑賞でした。

閉鎖的な村でのスリラーかと思ってたらクィア映画で解釈は色々あると思うけど
村的な閉鎖空間における、“古き良き”家族や、絆とゆうものから受ける女性の痛みを描いててよかったです。
何より映画としてのルックがよい。
アデルの佇まいと繊細な表情の演技がたっぷりみられる。
普段女性として生きる上で、ただ見られるとゆうことに対する恐怖の瞬間みたいな感覚がホラー的な表現で描かれていたり
わざとストーリーが欠けているんだろうなとゆう部分があったりミステリアスなところも好き。
パンフレットの監督のインタビューが充実してて映画への理解が深まってより映像が魅力的なものに感じられて良かったです。

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madu

3.0サイキック物かと思いきや

2023年1月19日
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鑑賞方法:映画館

小さな街の人間関係の【ボタンの掛け違い】を娘ちゃんが導いて正してくれた…といった感じ。
掛け違いがあったから、娘ちゃんが産まれた訳で。紆余曲折あったけど納まるところに夫婦が納まった。あのラストシーンって?!意味ありげに雰囲気出してるけど…、タイムリープを押し出してたし…なーんか勝手に期待し過ぎてしまった。

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ガンビー

2.0ポスター タイトルからしてもっとスケールの高い怖い世界を期待したが!

2023年1月14日
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鑑賞方法:映画館

匂いフェチの自分の世界にいる娘と旦那も子供もいるのに今も同性の相手と関係を続ける主婦の話
相手が同性の場合は不倫になるのかな?タイムスリープと言っても一瞬で何年前だか分からず回想シーンやカットしても良かったかも?

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ゆたぼー

2.0不気味な雰囲気が漂う

2023年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

香りの能力を持つ症少女が母の記憶に飛び込んでいくタイムリープムービー。不気味な雰囲気が漂う作品で雰囲気はなかなか良いがストーリーは面白みが無く不満が残る。

2023-7

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隣組

3.5 ちょっととっ散らかりすぎ、独りよがり。

2022年12月30日
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鑑賞方法:映画館

 ちょっととっ散らかりすぎ、独りよがり。

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えみり

3.0ダイヤモンドアイで全てお見通しよ

2022年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

彼女が幽霊という認識だったのか、なぜ怖かったのか、幽霊を殺せると思ったのか
そのあたりが腑に落ちない

動機やギミックは腑に落ちないものの、それなりに紐解き方がうまいので見ていられたが登場人物の動機と行動が不自然なときは実は・・・というのがあったのかもしれないが、わかりませんでした。

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アモルフィ

5.0日記の代りに匂いを使って何度も過去を遡る『バタフライ・エフェクト』

2022年12月9日
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鑑賞方法:映画館

フランスの山間にある小さな村サンク・ディアブルに住むヴィッキーは微かな匂いを嗅ぐだけでそれが何の匂いかを正確に言い当てることが出来る鋭い嗅覚を持っている8歳の少女。水泳インストラクターをしている母ジョアンヌはある日ヴィッキーの能力に気付いて驚愕するが、長らく連絡を絶っていた父ジミーの妹ジュリアが家に訪ねてきたことをきっかけにしてヴィッキーの能力は更に進化し、匂いを辿って自分が生まれる前まで時間を遡ることが出来るようになってしまう。ヴィッキーはジュリアに関わる匂いを集めることに異常な執着を持ち、その匂いから何度も時間を遡ることで、父と母、ジュリア、そしてサンク・ディアブルの過去に潜む秘密に触れることになる。

まず圧倒されるのはサンク・ディアブルに蔓延する窒息しそうなほどの閉塞感。ヴィッキーに対する同級生達の凄惨な虐めも過去から現在に至るまでジュリアに浴びせられる罵詈雑言もリアルで、協調性が乏しかったり他人とは異なる嗜好を持っているだけで孤立してしまう絶望は世界中どこにでも転がっていることに改めてうんざりさせられます。自分の嗅覚だけで村に隠された秘密を理解しようとするヴィッキーの試行錯誤を周りの大人が全く理解出来ないことにも心底イライラさせられますが、昔起こった悲劇にヴィッキーが辿り着いた時に過去と現在がもつれて繋がる観察者効果をもたらすクライマックスに唖然とさせられた後にようやく訪れる平穏に胸を撫で下ろしました。

劇中でジョアンヌとジュリアがカラオケで歌うボニー・タイラーの“愛のかげり“がさりげなく暗示している通りLGBTQ+に根差した力強い人生讃歌。終幕にすきま風のように忍び込んでくるDanitの“Cuatro Vientos”がエンドロールを眺めている自分の胸にじわじわと染み込んできました。

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よね

2.0全力でつまらない結末へ向かっていく

2022年12月3日
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2022年劇場鑑賞278本目。
代々伝わる力である種の匂いをかぐと失神して過去を見ることが出来るが、同じ力を持つ親族にもその姿が見えてしまうという設定なのかな?理屈は全く分かりません。
まぁそんなへんてこな設定に色々な事情が絡まって、過去と現在をつないでいくのですが、まぁ本編通して重要になる過去の事件の原因がなんだろう、というのが普通の映画の見所なんでしょうが、序盤で上記の設定がわかった時点で原因はすぐ分かってしまうので、主人公の少女が過去を変えようとする気配がない時点でただその通り話が進んでいくだけという退屈な映画でした。タイトルの意味もよくわからないし。原題も5体の悪魔たちだからなんか意味あるんでしょうが、登場人物が悪魔に例えられているなら5は多すぎるし・・・。

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ガゾーサ

4.0『ツイン・ピークス』と重なって…

2022年12月3日
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鑑賞方法:映画館

山の麓の田舎町で不可思議な出来事って『ツイン・ピークス』とカブりますが、

主演の人、見覚えあるな…と思ってたら、

『アデル、ブルーは熱い色』で、レア・セドゥと同性愛カップルを熱演した女優さん!

テンション上がった(笑)

"匂い"によって過去にタイムリープする話で『時をかける少女』みたいな設定。

全体的に、最後は特に、考察したくなります🤔

『ツイン・ピークス』のファンである僕が観てて、これ意識してるでしょ?と思うシーンがあり、

後から調べたら、やっぱり監督が意識して、

『ツイン・ピークス』『シャイニング』『アス』をオマージュしてるそうです。

『ツイン・ピークス』の色が1番つよいけど(笑)

評価は3.5と4の間で、3.5じゃ低いし、少し甘めの4です。

もう1回観よ!

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RAIN DOG

4.0娘と夫と元同性愛の恋人

2022年12月2日
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鑑賞方法:映画館

2021年。レア・ミシウス監督。フランスの田舎町に暮らすスイミング指導者の女性には消防士の夫と10歳の娘がいる。母を溺愛している娘は鋭い臭覚を持っている。問題を抱える父の妹が同居することになったとき、娘は香りを通して母の過去に入り込めるようになり、母の秘密を知っていく。
人造湖の寒々としたさざ波や遠くにそびえる山岳が美しい。タイムリープが事件の原因をつくってしまうというウロボロス的SF設定。時代だなーと思うのは、母親に対して、娘、夫、元同性愛の恋人、の4人がそれぞれに愛情をいただいているという点。さらに、そのなかで唯一無二なのは元同性愛の恋人だという点だ。娘や夫との愛情は偽物ではないが、真実の愛を覆い隠すものとしてある。そしてすごいのは、この苦い現実を夫は受け入れられないのに対して、10歳の女の子は驚異的に成長して受け入れ入れていくことだ。

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文字読み

4.0うーむ、タイトルの意味がよくわからんなぁ、、、

2022年12月1日
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鑑賞方法:映画館

なかなか面白いじゃないの、設定が。
鼻のきくトイレブラシ頭の女の子が、匂いコレクターで叔母さんのキツイ匂い1発決めて過去の出来事が見えちゃうようになり、母や父、父の妹と母の関係に気づいちゃう話し。フランスでも、ど田舎小さな村だとLGBTとかまだきついんだろうなぁ。

娘さんの透視能力で過去がわかる話なんだけど、それがまたある人には見えちゃうってのがミソで、タイムリープものになってます。この能力は父方女性に遺伝傾向があるっつー事ね。面白いネタ組み合わせを田舎町に閉じ込めたらジャンプした中々の怪作だと思う。

Fivedevilsは劇中の村の名前、何でそれがタイトルなをだろ、、、、?
ツインピークスみたいな感じか?

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masayasama

3.0救いが少ないような…。

2022年11月29日
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鑑賞方法:映画館

タイムリープしたおかげでいろいろな人の人生を変えてしまった、と。タイムリープしたための負のイメージが強過ぎていまいち好きになれない。けど、お話としては面白かったかも。微妙な気持ち…。

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peanuts

よかった。

2022年11月27日
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鑑賞方法:映画館

フランス映画なのにある意味わかりやすく、楽しめました。
めずらしいタイムリープもの。
白人黒人見慣れてないので、当初妹さんはDV受けてあざがあるのかな、とか歌を歌う場面が過去なのか現在なのかわからずで。
ただ、特に歌を歌う場面では皆さん演技が上手いのでそれにフォローされたかな。
夫の表情はかなり良かったです。

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khapphom

3.5プルースト効果でタイムリープ! 母と叔母と街に隠された過去に迫る、幼い少女の冒険の旅。

2022年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

何だよ、けっきょく全部お前のせいじゃねえかよ、とちょっと思ってしまった(笑)。

映画としての完成度は高かったし、出演陣はみな芸達者だし、社会派映画としても考えさせられるところは多かったが、基本設定と語り口に、自分にはどうも合わない部分が多かったかも。

ネタに触れずに話をすることの大変に難しい映画だが、
本作のおおもとの発想源は、いわゆる「プルースト効果」である。
香りには、過去の記憶や感情を呼び覚まさせる力がある、というアレだ。
マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』(「スワンの恋」)では、主人公が紅茶に浸したマドレーヌの味と香りをきっかけに、幼少期の家族の思い出を蘇らせる。これには科学的根拠もあるそうで、なんでも嗅覚は五感の中で唯一、嗅細胞、嗅球を介して大脳辺縁系に直接つながっているので、記憶と連動しやすいらしい。
これまでも、ふとした香りが過去の回想のきっかけになる、という物語は山ほど書かれてきた。歌だと昨年ヒットしていた瑛人の『香水』もそうだ。
本作では、この「香りで記憶を蘇らせる」という現象を、そのまま「実際のタイプスリップ」に結び付けてみた、ということになる。
そういえば、『時をかける少女』でも、ヒロインを過去にいざなうのは、「甘くなつかしいかおり」だった。

ヴィッキーは白人でエアロビ・トレーナーの母親と、黒人で消防士の父親のあいだに生まれた8歳の少女だ。利発で賢い子供だが、小学校では独特のアフロヘアのせいで「トイレブラシ」とあだ名をつけられていじめられている。
彼女には、においを嗅ぎ分ける特殊な能力がある。
あの映画『パフューム』の主人公みたいに、極端に鼻がきくのだ。
彼女は、いろいろな物体や動物、人物の「におい瓶」を作って、コレクションしている。

ある日、ヴィッキーの父親が、「叔母」だという黒人女性ジュリアを連れて家に帰って来る。
ジュリアがヴィッキーの母親ジョアンヌと会うのは10年ぶりだというが、どうも様子がおかしい。
三人には、過去に街で起きた事件とかかわる、何かの因縁があるらしい。
子供心に警戒心をつのらせたヴィッキーは、ジュリアの「におい瓶」を作って、様子を探ろうとする。
ところが、ジュリアの「におい瓶」を嗅いだとたん、ヴィッキーは突然昏倒する。
気付くと、彼女は過去に飛ばされていた。
それは、ジョアンヌとジュリアがまだ女子体操をやっている学生だったころの過去。
こうしてヴィッキーは、「におい瓶」を何度も嗅ぐことで、当時の母親と叔母に何が起きたかを断続的に「目撃」することになる……。

パンフなど見ると「母親と叔母の記憶へと入り込む」って書いてあるけど、モノを持ち帰ったりしてるから、100%「記憶」ではないよね? 基本はタイムリープしてるんだけど、世界線が違うから向こうの世界の人間にはヴィッキーは見えないってことだろう(ただジュリアだけは「少女の影」に気づく)。
SF設定としては、タイムリープが特定の時期に「時系列」で順に発生するなど、かなりご都合主義的で、どちらかといえば、母親の過去を作中で平行モンタージュを用いて明かしてゆくための、一種の「口実」ととらえたほうがいいだろう。
その他、ネタバレになるので詳しくはかけないが、ヴィッキーが過去に飛んだこと自体が大いに過去の出来事に影響しているとすると、その出来事がなかったらヴィッキーは産まれていなかったかもしれない事実とお互い思い切り干渉しあっていることになり、あれ?これでいいんだっけ、とちょっと思ってしまった。
それと、「極端に鼻が利く」ということと、「においに反応して過去に飛ぶことができる」ということと、「カラスを煮て嫌なにおいを作り出して相手を攻撃する」ことは、それぞれ大分次元の異なる話である気がするのだが、なんとなくごっちゃになっているのは気になるところ。
あと、現代篇を観ると例の人物がタイムリープ能力について何か知っていることは明らかなのだが、だとすると過去にあんなに動揺していた理由がよくわからない。
10年のあいだいろいろ考えた末に、自分に備わっている「何か」に鑑みて、「きっとこういうことだったに違いない」と、なにが起きたかに確信をもったということか。

まあ、蓋を開けてみれば、バリバリにポリティカルなLGBT映画なんだよね。
明快に主張したいことがあって、それを作中の登場人物に仮託している映画。
その意味では、つい先日観た『ドント・ウォーリー・ダーリン』とよく似た立ち位置の作品といえるかもしれない。
女性監督による女性映画。
ネタ映画の皮をかぶった政治的映画。
「黒人であること」が重要な役割を果たす映画。

母親との関係性を探って記憶をさかのぼる話と、黒人少女のアンデンティティ追求がかけ合わさってるという意味では、セリーヌ・シアマ meets ジョーダン・ピールみたいなところもある。
あと、「魔女」テーマのヴァリエーションってことでは、『ヘレディタリー/継承』とか。

ただ、『ドント・ウォーリー・ダーリン』よりは、直截的で主張が強いし、語り口が明らかに女性寄りなので、たとえば黒人の旦那さんの扱いとかは、かなりひどい気がする。
少なくとも、常に冷静であることを、あんなネガティヴな言われようしたら、やってられないよね……。
監督のレア・ミシウスは、パンフで彼を「実態のない人物として存在し続ける」と分析している。差別と闘うためには「いわゆる冷静なスピーチや、嫌なものを笑いでごまかすような『ジョーク』に魅せられてはいけないのです」とも言ってて、根底の部分でこういう「ドント・ウォーリー・ダーリン」の姿勢で穏便にすまそうとするキャラクターが嫌いなんだろうね。だから、こういう描き方になるのだと思う。

パンフの監督インタビューを読むと、デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』に大きな影響を受けていて、「語りすぎない」ことで「謎を残す」手法を採用し、完成したフィルムから編集作業を通じて徹底的に「情報を取り除いて」いったことが書かれていて興味深い。
いわく、「私たちも、小さな木の板で塔をつくったあと、その板をひとつひとつ取り除いていくカプラゲームのように進めていこうと試みました。編集中はまさに、塔が崩れないようにできるだけ多くの情報を取り除くような感じでした。」

ただ、その結果として、多くの観客にこの映画の肝要なポイントが伝わっていないとしたら、本末転倒だと思う。
とくに、なぜヴィッキーが産まれたかって話で、今の旦那さん(ヴィッキーの父親)が、●●●の役割を果たしたとか、パンフに書いてあるのだが、みんな普通に観ていて気づくもんだろうか?? 言われてみれば「なるほど、そうだったのか!」と得心がいくのだが、たいがいの人はえらいことになったドタバタでつい慰め合ってるうちに孕んで出来婚したくらいにしか思わなかったのではないだろうか……。
あと、ヴィッキーが過去に遡行して、車のなかの母親と叔母を見かけるシーンが、「象徴的な●●のシーン」だと書かれているのだが、あれを観てそう気づく人はそんなにいないと思う……(笑)。
まあ、フランス国内なら、誰か目端の利く人がSNSで流して、「ああそうだったのか!」ってふうに流布していくのかもしれないけど。

でもこうやって観ていると、最近の「ネタ系映画」ってのは、リベラル系の価値観をもつ若手監督たちの「社会派映画」の実験場と化している感があるなあ。
「世界観の反転」や「タイムリープ」という、「既存社会の裏を覗く」ギミックそれ自体が、じつは今の社会の変革もしくは転覆を求めるメンタリティと意外に相性が良いということか。

映画として成功か失敗かと言われると、成功の部類に属する映画だとは思うのだが、結局のところ、ヴィッキーを演じるサリー・ドラメの説得力と演技力ですべては許されている感じもある。
それくらい、この子役の老成した哲学者のような風貌には、人を惹きつける力がある。
愛されたいいたいけな子どもとしての側面と、能力をふりかざすアンファン・テリブルとしての側面が同時に表現され、愛くるしさと小憎たらしさが同居するクセの強いキャラクターを好演している。
依怙地で妥協を許さない偏屈ものの側面(ふつうあれだけいじめられたら、髪型くらいは変えると思う)。慈母のごとく父親を赦し、包むこむ情け深い側面。これを体感的に感性で演じ分けているとすれば、本当に立派なものだ。
監督がこの娘のことを、『ブリキの太鼓』のオスカルみたいって褒めてるのは、女の子に対する誉め言葉としてはどうかとも思うが(笑)。

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じゃい