劇場公開日 2022年11月18日

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「不穏で意味深な展開が観るものを惹きつける」ファイブ・デビルズ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不穏で意味深な展開が観るものを惹きつける

2022年10月31日
PCから投稿

不穏な空気を宿しながら観る者をいざなう作品だ。それは序盤、なんら問題を抱えている様子のない母娘のプールでのやりとりから始まるものの、そこに続く日常描写の中で、そこはかとなく少女の特異な能力について明かされるのが面白いところ。それは何らSF的な派手さはないし、何かが光り輝いたり仰々しく蓋が開くような仕掛けもない。ただ「細かな香りを嗅ぎ分けることができる」という極めて地味な能力を起点として、そこからさらに、香りで気を失うことで過去へとトリップするという序破急の「破」の展開が生まれる。監督2作目となる脚本家出身のレア・ミシウスは、こういった描写を非常にナチュラルに盛り込みながら、いったいこの先に何が待ち構えるのか、観客を引きつけるのが実にうまい。母の過去の傷跡と、幼い娘の心に寄り添いながら、一筋縄ではいかない愛の形を多面的に組み合わせようとする趣向にも魅せられた。これからも注目したい才能である。

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牛津厚信