「男の怒りをブチまけろ! 仁義ある戦い、開幕。」チャトラパティ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
男の怒りをブチまけろ! 仁義ある戦い、開幕。
奴隷として虐げられる難民シヴァージの怒りと逆襲、そして母子の絆を描いた任侠アクション。
監督/脚本は、後にインド映画界を代表する巨匠となるS・S・ラージャマウリ。
「ヤマドンガ」と同じくらい、意味はわからんがとにかくすごい自信を感じさせる言葉「チャトラパティ」だが、これはマラーター王国(1674-1849)の君主の称号である。
祖・シヴァージーはムガル帝国をはじめとするイスラーム王朝に反抗を繰り返し、デカン地方(インド半島中央部)にマラーター王国を建国。
当時、イスラームが趨勢を占めていたインドにおいてヒンドゥー王朝を樹立するというのは大きな快挙。その為ヒンドゥー至上主義者にとってシヴァージーは英雄として崇め奉られているらしい。
ちなみにインド第二の都市ムンバイには「チャトラパティ・シヴァージー国際空港」や「チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅」など、シヴァージーの名を冠した施設がいくつかあるようで、いかにインド国内において彼が英雄視されているかがよくわかる。
本作は虐げられていた難民たちが立ち上がり街の支配者を打倒するという、大ブームを巻き起こしたラージャマウリ監督作品『RRR』(2022)の前身とも言える映画である。
主演はプラバース。同じくラージャマウリ監督作品『バーフバリ』シリーズ(2015-2017)でも主演を務めた俳優さん。
二大ラージャマウリ監督作品の基礎となっている映画である為、ラージャマウリのファンならマストで鑑賞しなければならない一本だろう。
お話としては完全に任侠もの。
悪いヤクザをぶっ殺し、自分たちが良いヤクザになって街を牛耳る、という成り上がり精神に溢れた作品。
クソ幹部の非道にブチ切れたシヴァージがついに拳を振るうあの場面。あそこのカタルシスはそりゃもう半端なかった!!脳汁ジョバーーーッ!!!
シヴァージはほとんど少年漫画の主人公。鮫と戦ったり握撃を繰り出したり弾丸を喰らっても死ななかったり…。花山薫かお前はっ…💦
このシヴァージ、とにかく強すぎる怪物でありリアリティのカケラもない。そんなキャラクターなので、並の俳優ではこの規格外の男を演じることは到底不可能。
しかしそこはさすがのプラバース。デカすぎる身長と高すぎる頭身、そして厚すぎる胸板によってシヴァージをスクリーンに現出させることに成功。
プラバースって頭が小さい上に身体がデカいから、本当にめちゃくちゃデカく見えるんですよね。「灯台みたいな男」って作中で言われていたけど、本当にそのくらいデカい。デカい=強い。これが真理なのである。
プラバースのお相手を務めるのはシュリヤ・サラン。『RRR』でラーマ(少年期)の母親を演じた人。
この人もまたとんでもない美女✨ラージャマウリ作品のヒロインには押し並べて絶世の美女が揃っているが、本作も例外ではない。
快男児と美女を見る、という目的で本作を鑑賞するのもアリだと思います。
つぎから次へと見どころが押し寄せてくる映画であるが、忘れてはいけないのはシヴァージの義弟・アショクの存在。マザコンを拗らせすぎた結果、狂気のモンスターと化してしまった悲しき男。
ひ弱で陰湿な男でありながら、物語を引っ掻き回すトリックスターとして見事に立ち回ってみせてくれました。母親を独占する為、自分の腹に弾丸を打ち込むというサイコパスっぷりには震えたっ!!
まるで「北斗の拳」のような世紀末救世主伝説。
中盤までは文句なしで面白い!!…中盤までは。
シヴァージがチャトラパティになるまではハラハラするドラマと激しいアクションの釣瓶打ちって感じなのだが、いざ成り上がってしまってからは完全に失速。
退屈な人間ドラマとつまらないコメディ要素が大半を占めており、これならチャトラパティになったところで映画を終わらせてしまえば良かったのでは?と思わざるを得ない。
アショクとの関係もすごくなあなあに解決してしまったし、ラスボスとのバトルもイマイチ盛り上がらないし…。
中盤までは本当に面白かっただけに、後半の失速には心底ガッカリしてしまった😞
とまぁ100%満足出来る映画ではなかったが、破茶滅茶すぎる展開には楽しませてもらった。
この頃はまだまだ荒さが目立つラージャマウリ監督だが、ここから17年で『RRR』を監督するんだもんなぁ…。すごいレベルの上がり方だぁ…。