銀河鉄道の父のレビュー・感想・評価
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個々どうしても気になる点もあるが、今週ではおすすめ枠。
今年147本目(合計798本目/今月(2023年5月度)4本目)。
「銀河鉄道の夜」などで知られる宮沢賢治ではなく、その父に焦点をあてて作られたストーリーです。「実話に基づく」等とは映画内で明示的に書かれていませんが、あることないこと入れると問題になりますので、どうしてもわからない点以外は基本的に史実に沿ったものと考えることが可能です。
この観点ではドキュメンタリー映画の様相にはなっていないものの、事実上はドキュメンタリー映画と同じような見方になってしまうし、歴史(時間軸)の流れも一つだけで(巻き戻し処理は一切存在しない)、ストーリーとして理解に支障をきたす部分はないものの、行政書士以上の法律系の資格持ち(特に憲法、行政法ほか)が混乱したり、明らかに妙な描写もあり、うむむ…といったところです。
ただ、いわゆる「映画の撮影に使われるロケ地」(この場合、京都の太秦映画村?)等、「最大公約数的にどんな映画でも撮れるように作った場所で作成されたから」という理由で発生したものと思える点も見られ、どこまで映画側の帰責問題として論じるのかはかなり微妙です。
また、映画内での描写は明確に不足しているものの、だからといってこの映画を見て「質屋をやってみようか」という方がほぼほぼ存在しないと思われるので、そこの減点幅もないに等しいです。
総じていえば、「実際のドキュメンタリー映画ではないが、それに準じた扱いを受ける」映画であり、ほぼほぼ淡々と事実だけが語られるタイプの映画で、これを映画かというと微妙な部分はありますが、じゃ美術館やプラネタリウムで流すのかというとそれも違うし、まぁ、「どこで流すのか」といえば映画館、ということになろうと思います。
評価は下記の4.3を4.5まで切り上げたものです。
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(減点0.4/質屋取締法(現、質屋営業法)に関する問題)
・ 日本は明治維新に入ったとき、民法はフランス・ドイツの既存のものを参考にしてつくられた経緯があります。2023年時点では条文が変わったりなくなったりしたものもありますが、元はといえば精神は変わっておらず、「フランス・ドイツのごちゃまぜ文化」なのが日本の民法の特徴です。
この当時の民法でも「質権」は物権(担保物権)の中でも扱われていましたが、江戸時代にすでに質屋に相当するものは存在していたので、特別法としての「質屋取締法」(現在は廃止。現在は質屋営業法)が成立しており、一般的な質屋はこの特別法のもとでの運用でした。
しかし当時の「質屋取締法」を見ると(カタカナ表記、漢文表記ほかは、適宜現在の表記に修正)
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>6条 質屋は次の事項を見やすい位置に掲示しなければならない。
1. 利子について
2. 流質期限
(以下省略)
>23条 …(途中省略)6条…(途中省略)…に違反したものには、2円以上50円以下の罰金に処する。
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…という規定が存在していた(なお、現在の「質屋営業法」にも同趣旨の規定(掲示義務とそれに対する違反に対する罰則)はあります)ものの、映画のどこを見てもそのような掲示は見当たらないのですよね…。
もっとも質屋取締法は悪質な質屋を取り締まるための取締法規の側面が強く、それに違反してなされた行為(この例では、質権設定)でも、その違反の有無が契約を結ぶかどうかに大きく影響するのでない限り、法の違反(掲示義務違反)と契約の成立(質権は成立するか)は分けて考えるというのが当時の行政法の考え方であり、これもその例ですが、一応にも当時の法を無視するような描写はまずいです。
※ ただ、先に述べたように、このような特殊な行政法規の存在自体がマニアックだし、映画館でとられるこのような映画は、映画村等でとられているのであろうことから、職業ごとに掲示物をいちいち変えることは(映画村側のルール運用として)できない、と考えることもでき、減点幅はかなり微妙です。
※ なお、当時も今も(2023年時点での民法でも)、民法が定める純粋な「質権」「だけ」が実行されることは思うほど多くありません(個人間が行う質権設定がどれだけあるか微妙ですが、民法だけの範囲ではいわゆる「質流れ」は設定できません(強行規定)。百貨店などであるいわゆる「質流れ品セール」などは、特別法である質屋営業法で特別に認められている質流れが可能なことによります)。
(減点0.3/主人公(父親)が取っている行為が若干怪しい)
※ なお、歴史上実在した人物ですので、個人攻撃に及ばない点は断っておきます。
先に述べた通り、日本は明治維新を経て外国の脅威に触れたため、「早く諸外国においつかなければ」という思いから、フランス・ドイツの民法をもとに明治民法が作られています。この大半は現在でも維持されていますが、家族法(親族相続)だけは当時と異なっていました。まだ男女同権とは言えなかった時代であったし、当時は民法の範囲でも男女同権を明確に否定するような変な条文が多かったのも事実です。
ただ、この主人公(ここでは、父親)のとった行為は映画の描写によると、「男女も関係なく学習する能力があるものに学習させる」といった現近代的な考え方(換言すれば、日本国憲法ができてからの新しい民法的な考え方)がかなりいきわたっていた(何かを制限する法律に対し、家族内といった狭い範囲において、個人の判断でそれを広げて認めることは(第三者を巻き込まない限り)何ら禁止されないし、当時は当然のように大黒柱に事実上すべての家族に関する最終決定権権があったといえる)と思える描写がかなり多い一方、「特定の宗教を否定する」「特定の学校に行くだの行かない」といった、それより上位の「大日本帝国憲法」でも(部分的に)保障されていた部分を否定するといった妙なこだわりがあり、ここは史実上そうだったのでそのように描写されているのだと思いますが、法律系資格持ち(特に憲法が科目に入っているもの)は、この部分はどこまで正しく描写されているのか…が若干微妙な部分があるのは確かです。
タイトルなし
生前は不遇なことも多かった宮沢賢治を支え、最大の支援者となったのが父親だということが分かった映画でした。
撮影のために食事制限したという菅田将暉の病床に伏して衰えた状態での演技はゾクリとしました。
これから観られる方は、宮沢賢治の詩、「永訣の朝」を読んでおくことをお勧めします。
また、彼の作品を読み直し、花巻の宮沢賢治資料館に行って、彼の生涯を再勉強したくなりました。
1つ難点をあげるとすれば、主題歌はインストルメンタルの方が良かったと思います。
こうして、傑作は生まれた。
親子愛、夫婦愛、兄妹愛、家族の絆を描いた素敵な作品でした。こうして「銀河鉄道の夜」などの傑作が生まれたのですね。
主役の父、役所広司さんはもちろんですが、菅田将暉さん、森七菜さん、坂井真紀さん、田中泯さん、それぞれが素晴らしい演技で感動できます。
そして映像がとても美しいのも良かったです。
大事な子を失うオヤジの物語。
家業(質屋)継げと言うオヤジ政次郎(役所広司)と家業は継がないと言う賢治(菅田将暉)、家族交えての話。
妹のトシ(森七菜)の結核の看病に何かないかと書いてあげた詩、それがきっかけで賢治が詩人になるが、後に賢治自身まで結核に。大事な息子と娘を看取るオヤジのストーリー。
オヤジに質屋を継げと言われるが継がない賢治、始めた仕事は人工宝石の製造と宗教、うまくいかず・・。
後に妹のトシが血を吐いて倒れたと賢治に連絡行く、見舞いに何かないかと考えたのは自身で考えた「詩」。
商店で用紙を買い、詩を書いてから実家トシのところへ。結核で倒れたトシを元気づけようと書いた詩を読んであげるんだけど、それを聞くトシが悲しげ、楽しそうに聞く姿を見て本を書く事を始める。
途中、「南無妙法蓮華経」と太鼓を持って狂ったように唱える賢治、特に2回目のシーンではトシが亡くなった直後ってのもあって、泣いてる観客多数なんだけど、私は逆にツボで「志村けんの三連太鼓を持っての、だいじょぶだぁ~うぇ、うぉ、うぁ」の姿にしか見えなくて笑ってしまった(笑)
私個人的に涙が出たのは、政次郎と賢治のシーンでセリフはちょっと違うかもだけど「子供を生まない代わりに本を生んだ」「本はワシの孫だ、孫だからオマエの本を好きなんじゃ」とラストの本を読んでからの列車の中のシーン、ラストのラスト政次郎の「ありがとがんした」が泣けた。
ホントのラストで泣かすのやめて!劇場出れなくなるから!(笑)
ラストにホント菅田将暉好きだわー!!
役所広司に負けない菅田将暉の画力凄いわ!
素敵!最高!!
予告寄りコメディ感は低めだが泣ける
2023年劇場鑑賞101本目。
予告で役所広司が「うるせぇ うるせぇ」という感じで好き放題やって屁理屈こねまくるコメディかと思いましたが割と真面目でした。
でも父親の息子への愛情が描かれていて、最後はしっかり泣きましたね。
父の愛物語
凄く深く愛されていたのが分かる映画。あの時代に父自らが世話をする深さ。宮沢賢治は両親に愛され、そして自由に、天真爛漫に生き、そして最後作家に辿り着いた。
宮沢賢治の本はほぼ読んだことがなくあまり知りません。この映画で生い立ちを知り、少しは彼の本を色々あさってみたくなりました。
日本のレトロな時代設定映画は雰囲気は良いが、中々面白いのはなく好きではなかったが、この映画は本当に面白く感動でした。
有難うがんす。
余談
2回目の南無妙法蓮華経を唱えて現れた場面
あれはさすがに泣けるより、超笑えた
館内そんな雰囲気ではなく、笑い抑えるの必死でした。
役所さん、菅田君とあらば見に行かずにはおれません。期待通りの熱演で...
役所さん、菅田君とあらば見に行かずにはおれません。期待通りの熱演です。
原作未読でもタイトルからしておよその展開は読めます。そこをどう料理されてるのか興味がありました。
一言で言うと
父親の、長男である賢治に対する思い入れと期待、不協和から受容へと変化する物語です。
賢治の創作には妹の存在が大きなきっかけとしてあり、農業に従事し農民と汗水流したことも人生観に大きな影響を与えています。
父親の物語であると同時に、やはり賢治の心理推移も必要なためW主演みたいな感じでした。
役所広司◎ 日本の宝です。詩の朗読で泣けます。(もっと老けていってもよかった)
菅田将暉ま◎ 賢治本人の映画でも一本成り立ちそう。鬼気迫る憑依型演技。(賢治の学生生活のシーンを入れてほしかった)
森七菜◎’ セリフに声が乗っている。「きれいに死ね!」にびっくり&納得。
田中泯◎ もっと賢治に影響を与えるのかと思いきや...。短い見せ場で熱演。
坂井真紀◎ 最後のシーンでもってかれました。クレジットまで誰かわからず。(服装、髪が綺麗すぎる)
蛇足ですが、すべての役者さん共通。鞄をもっと重そうに持ってほしいです。軽々とされるとリアリティーが急に消える。
原作未読ですが…
役者それぞれがきちんといい仕事していて楽しく観ていられます。
カメラワークも物語に入り込みやすい。
森七菜ちゃんがあそこまでキチンと出来るなんて凄い成長を感じます(笑)
グリーンバックがあからさまにわかりやすくて萎えます。
もう少し上手く出来ないものか?(出来るはずですがお金の問題?)
役所広司と菅田将暉の親子は良い感じ。坂井真紀のラストに見せる強さにもグッときます。
子供2人に先に逝かれる悲しさ…
ただ原作未読故なのでしょうが『銀河鉄道の父』じゃなくてもいいよね?
2行だけじゃん。
死生観
64本目。
田舎、長男となると、自分の生きてきた中では遠い話じゃないし、複雑な気分になる。
まあ、それは置いといて。
いつあの作品がと思い観てたけど、そっちを中心にそえてしまうと、本筋からは離れてしまう。
父子の話と言うよりかは、家族の話かな。
賢治も含め劇中、死が3回あるけれど、そちらに涙をもっていかれる感じ。
家族愛が分からない訳ではないけど、死生観を描いた様にも思える。
宮沢賢治の温かな家族
転んで、転んで。ずっと閉じたくなる1ページの数々。世に出たものは宮沢賢治が織りなす物語たち。でもその舞台裏では当たり前に宮沢一家が支え合って、信じて。このことがどれだけ尊いのか。1人では出来ないことは星のように。今にも響く等身大さ、あたたかさで包まれて。
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