劇場公開日 2023年12月15日

「記念碑的作品」ウィッシュ ツツジさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5記念碑的作品

2023年12月16日
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鑑賞方法:映画館

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映像・演出・演技(20)
吹き替え版・字幕版で2回視聴。
映像・演出ともに非常に美麗で圧巻の作品だった。特に序盤の王とアーシャのミュージカルシーンや、星空は必見の出来。また所々に散りばめられた過去作品のオマージュも探してみると面白いかもしれない。個人的には終盤のシンデレラのオマージュシーンが、原作とは異なる新たなメッセージをわかりやすく表現していて刺さった。楽曲は垂涎の出来。
文句なしの
20点
世界観(20)
『マジカルな管理国家』という『PSYCHO-PASSの社会のような科学的なディストピア』ではない新しいタイプの世界観が斬新で面白い。リベラルを志向するディズニーの思想を表現に最適な形であろう。しかしながら、絵本の話が元になっているため全体的にお話がこじんまりとしているところが残念。
15点
脚本(20)
一応緩急がつけられているし、退屈をしないように多くのミュージカルシーンがある。しかし、予測可能な展開か、展開が裏切られてもそのキャラクターの自体の存在感や意外性が欠けていたりと平凡で非常に残念。後述するがマグニフィコ王の処遇も違和感あり。
素点のみ
10点
キャラクター造形もしくは心理描写(20)
この作品の致命的な欠点の一つ。『キャラが立たせ切れていない』。王様はきっちりキャラが立っているし見てみて愛着が湧いてくるのでオッケー。でもヴィランはそれが当たり前である。問題はスターと脇役のキャラが分散してしまっていることだ。友達役のキャラの数が多すぎる。数を裏切り者と協力者の2人にして一人一人の掘り下げを徹底すればもっと愛着が湧くだろうし、スターも喋れるようにすればキャラとして立っていたはずだ。そして主人公のアーシャもスターというジョーカーを使用して革命を成就させているが故にマグニフィコ王に対する革命の動機、大義が足りない。故にキャラ造形が歪に見えてしまう。
心理描写、造形共にイマイチ
8点
メッセージ性(20)
この映画の核となるメッセージは『夢を持つことの尊さと叶えるための主体性』だ。非常に素朴で分かりやすいので、引っかかることなく飲み込める。100年この理念で作品を作り続けてたディズニーがこれを伝えるからこそ重みが違う。普通にうるっときた場面も何回かあった。しかし、上記のメッセージを伝えるためにはかつて類い稀なる才で豊かな国を作ったマグニフィコ王を地下牢行きにするのは許されるのだろうか?もしディズニーが本当に夢を叶える主体性を重要視しているのなら、王に回心の機会を与え本当の夢を思い出させるのが筋というものだろう。本来ならマグニフィコ王の思想はそこまで糾弾させるべきものではないのだから。主人公が努力せずに革命達成をして、努力で国を作った王が幽閉という結末が本来ディズニーが伝えたいであろうメッセージと真逆の結末になってしまっていることが皮肉。
玉に瑕あり
15点
総評
 近年ディズニーは表現の足枷がはめられている(あるいはみずからはめているのか。)と思われる作品が良くも悪くも目立っている。当然のこの作品もその片鱗が見られる。しかし、この作品はディズニーの根源的な理念が強く垣間見れた気がした。ディズニーの夢に対する純粋な思いがあれば、いつか作品における表現と思想の軋轢を乗り換え、人々に感動を与えることができる作品を作り出していけるかもしれない。
 今回の作品は決して手放しで賞賛できるものではないのかもしれないが、そのメッセージはしっかりと受け取ることができた。
ディズニーの今後の益々の活躍に大いに期待する。
67点

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ツツジ