「多様化時代を反映したシン・リトルマーメイド」リトル・マーメイド みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
多様化時代を反映したシン・リトルマーメイド
1991年日本公開のアニメ版の実写版。アニメ版未鑑賞。原作であるアンデルセン童話・人魚姫は人間と人魚の悲恋物語だが、本作は、前半は原作を踏まえているが後半は原作に新解釈を加え、冒険活劇のような展開で結末をハッピーエンドにしている。多様化が進む現代社会を踏まえ俳優陣の人種も多様化している。原作の映画化というよりは、原作をモチーフにした現代社会を反映したシン・リトルマーメイドに仕上がっている。原作のイメージはリセットして鑑賞した方が楽しめる作品である。
本作の主人公は、海の王国・トリトン王の末娘アリエル(ハリー・ベイリー)。彼女は、人間界に憧れ、嵐に巻き込まれた船からエリック王子(ジョナ・ハウアー=キング)を救出し海岸まで運ぶ。アリエルは王子のことが忘れられず、海の魔女アースラー(メリッサ・マッカーシー)に三日間だけ人間になる魔法をかけてもらう代わりに声を奪われる。アリエルは人間界で王子を見つけ声の出ない状態で懸命に彼に自分の想いを伝えようとするが・・・。
海中シーンは、アクアマン、アバターなどで見慣れてはいるが、美しく幻想的である。リアル感を重視して海中を薄暗くしたことで、海中の美しさが半減してしまったのは残念。アリエルを含めた七人の人魚姫姉妹の肌の色の違いが、多様化する現代社会を反映している。ただし、七人の中で、アリエルが最も主役らしい華があるとは言えない。圧倒的な歌唱力で補強している感が強い。トリトン王(ハビエル・バルデム)の威風堂々とした佇まいは絶品。
終盤、アースラーがアリエルとエリック王子の恋を邪魔する展開は、徐々にエスカレートしていき、最後は海洋冒険活劇のような迫力で見応え十分である。ラスト。異世界との恋は成就する。童話を原作にしているとはいえ、本作のような異世界とのラブストーリーを見せつけられると、多様化に悪戦苦闘している実際の人間世界の器の狭さを感じる。世界は広い。人間は小さい。素直にそう感じた。
「世界は広い。人間は小さい。」まさにそんな話でしたね。ところで、適材適所でないと感じたのは、やはり主役の方ですか?(私は「リトル・マーメイド」(アニメ)は見たことがなく、内容に関しても初めて見知った作品なので、主役の方はかわいいな、と思いつつ、全く違和感がなかったため)
本作は、多様化する現代時代を反映した作品です。しかし、映画で大切な適材適所の配役ではありませんでした。近い将来、多様化と適材適所の配役を融合した作品が登場することを切に願っています。
ー以上ー