劇場公開日 2023年11月10日

「上映が終われば自分たちはまた擬態する」正欲 まくらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5上映が終われば自分たちはまた擬態する

2023年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

原作読了済です。原作が好きだったので、映画化と聞いたとき、
ああ、これも消費されてしまうんだ。。と絶望した記憶があります。
原作はキャラクターの心情が文字に全部書かれていますが、
映画では第三者視点と思っておけば大丈夫です。何個かオミットされている部分がありますので、個人的には原作を読んでから映画を見てほしいです。朝井リョウさんの痛烈なメッセージを浴びてほしい。

結論からすると、「作ってくれてありがとう」と思った作品でした。玄関の向こう側にいながら擬態せずにいられた作品でした。よかったです。
また、認知的不協和を発症させない寸前で描写を止めており、その塩梅も絶妙です。

新垣結衣さんと磯村勇斗さんの演技が素にしか見えなかったです。
気づけば2人の言葉に吞み込まれていました。ああ、この映画が終わるまでは擬態してないでいいんだ、と思うとセリフがまっすぐ心の中に入ってきて、
「ここにいていい」と監督から語り掛けられているような気分になりました。

作中気になったのは前半のダンスシーン。ゲイコミュニティが発祥の振り付けがある、と話していたが、本番の文化祭ではHIPHOP調の曲を流していた。あれは「多様性」への逆説的な皮肉なのか気になる。
歌詞もめでたいものだったので、余計わざとなのか、気になった。既存曲なら批判できないよなあと思ったが…。

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玄関を出ると、勝手に自分の中でスイッチが入る。
それは社会に溶け込ませていただくための擬態スイッチで、自分が不適合と分かっていながら、それがバレないように迷惑かけないように擬態する。
上映が終わったとき、ああスイッチを入れ直さないと。と思った作品でした。
134分間だけ玄関の向こう側にいながら擬態せずにいられた時間は、とてもよかったです。

まくら