劇場公開日 2023年11月10日

「普通じゃないとは」正欲 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5普通じゃないとは

2023年11月17日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

難しい

な、なんだろう...。言いたいことは分かるし、この手の映画を見た後は胸にグサッと刺さって何日も考えることなんてざらなのに、全くと言っていいほど心が動かない。体感時間3時間越えの驚異的な居心地の悪さだった。性的マイノリティの人々は常にこんな気持ちなんだよ、と上手いこと片付けようと思えば出来るけど、そうじゃない。演出が淡白過ぎてとても見入れなかった。

稲垣吾郎の役回りがまるで極悪人のように描かれていることがすごく違和感。自分に正直生きているのは彼しかいないし、魅力的な登場人物と言えばこの検事しかいなかったのに、なんでこんな扱いされなきゃならない?この人は言い方に問題があるのであって、本質的にはそこまで変じゃない。そりゃ子どもの今後を考えれば学校に行かせたいし、それほど親しい仲でもない男が家を出入りしているのは誰だって腹立つ。妻の私は分かってますよアピールがマジでムカつく。

自分では理解できない人がこの世には多くいて、彼らのことを除け者扱いするのではなく、そういう人もいるんだと受け止めて尊重することは大切だ。LGBTQや人種、障がい者差別なんてあってはならない。当たり前だ。だが、異性に恋をしたり、結婚して子供を産んだり、父親として母親として生きる人が全体の多くを占めていることだって現実だ。大幅に変更したアカデミー賞の基準やポリコレは、マイノリティの人々を理解しよう、尊重しようとしすぎるがあまり、彼らを間接的に差別することに繋がったり、これまで俳優として生きてきた人が用無しになったりと、悪循環に繋がっている。

以前話題になった男女で分けるトイレの撤廃問題。それは、誰のためにあるのか?私のようなマイノリティに属さない人間は気持ちよく利用することが出来るのか?いや、出来ない。出来たもんじゃない。ようは、ひとつの物差しじゃ全てを測りきれないということだ。稲垣吾郎演じる検事は、法律という物差しで物事を判断している。無情のように思えるかもしれないが、彼のような人間は絶対的に必要だ。犯罪がマイノリティだからと容認されるような世の中になれば、それを利用した事件が横行するに決まっている。それは私のような人間にも、マイノリティの人々にとっても損しかない。全ては不可能なのだ。

ただ、日本の法律や風習、人々の考えは彼らに厳しすぎるというのは100%賛同する。なぜ同性婚が許されていないのか、何度考えようとも理解できない。でも、犯罪を犯罪といえなくなっては世は崩壊してしまうし、検事は決して間違ったことはしていないと思う。だからこそ、この映画は私には響かなかった。なんかこう、すごく違和感。色んな人の意見聞きたいな。

サプライズ
かばこさんのコメント
2023年11月19日

こんにちは

共感をありがとうございます。
ダイバーシティーって、マイノリティ「のみ」心地よくすることじゃないですよね。トイレの例、よく分かります。

かばこ
トミーさんのコメント
2023年11月18日

共感&コメントありがとうございます。
どなたかが触れてましたが、水フェチが何の暗喩なのか? 結構難しい所で、LG某だとすればもう1人当事者が出て来る訳ですから、ここは水に刺激を感じる人々のお話としておきたいと思いました。

トミー
大吉さんのコメント
2023年11月18日

桑名市で、心は女なのになぜ女湯に入ったらダメなのかっていう奴(男)が捕まりましたね。
こういうのが出てくるから困るんでしょうが、いっそこういう奴を主人公にしたら面白いかも、なんて不謹慎なことを思ってしまいました。

大吉
ニコさんのコメント
2023年11月17日

おっしゃる通り、寺井の問題はものの言い方だけなんですよね。それは彼が(この作品での描かれ方として)「多数派」であるということに起因するというより、個人の性格や職業柄によるように見えました。
また、終盤で佳道の性癖を受け止めきれないのも、取り調べに至る流れと性癖のレア度を考えれば、短時間で理解できないのは仕方がない気もします。
この欄でuzさんが書かれているように、価値観の違う人間どうしが同じ社会で生きるには実生活面での歩み寄り、譲り合いが大切ですが、そのバランスを取る過程で、多数派に当たる個人の内心の自由を軽視していいわけではないと思います。

ニコ
トミーさんのコメント
2023年11月17日

稲垣検事さん、決して否定ばかりじゃなかったですがね~新垣奥さんが跳ね飛ばされた所なんか心配してたし。実際には彼も孤立してしまい、皮肉な結末でした。ラストシーン、どちらが希望的かといえば新垣夫妻の方でしょうね・・

トミー
uzさんのコメント
2023年11月17日

こんにちは。

寺井夫妻については、散らかった部屋やレンチン料理が強調されていて、「どっちもどっち」に感じました。
最後の取り調べのシーンなどから、啓樹の問題点は自分の常識以外を頭ごなしに否定するところだと思います。
それが、マイノリティを描く本作では“敵”に見えがちですが、どちらにも非があり、どちらにも正しさがある。
結局は歩み寄り、譲り合うことでしか解決しないんだろうなぁ、というのが自分の感想です。

uz