「決して「つくり」は悪くない。」大名倒産 talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
決して「つくり」は悪くない。
他のレビュアー諸氏も指摘するとおり、本作は決して「魂を打ち震わせる感動巨編」という訳ではありませんが、数多く公開される映画の中には、本作のように「安心して観ていられる」作品も、何本かは含まれていてほしいものです。個人的にも、こういう作品も、決して嫌いではありません。評論子は。
(公開される映画の全部が全部「魂を打ち震わせるような感動巨編」だったりしたら、疲れて疲れて、とても映画なんか観ていられない。)
そういうことでは、決して「下らない」とか「駄作」とかの評価が当たる一本ではなかったと思います。
まず、キャストの面でも、梶原善の演技が光っていたように思います。
むろん、石橋蓮司や佐藤浩市の「悪さ」は堂に入ったものであることは言うまでもないところですが、それに添えられた「小悪役」とでもいうべきなのか。
彼の色彩なくしては、本作は語れないようにも思います。いい味を出していたと思います。映画は、決して主役だけで成り立っているものでないことを、改めて実感します。
次に、「単なる綺麗事だ」と言われてしまえばそれまでなのかも知れませんが、それでも、為政者としては、「小の虫を殺して大の虫を活かす」ということではなくて、「大の虫を活かすだけでなく、小の虫も活かす」という方策を探ってもらいたいところです、本作のように。
そういう点では、小四郎のリーダーシップは、刮目すべきではないかと思います。
現実の世界では、こうは、なかなかコトが運ばないからこそ(?)、映画の世界くらいは、こうあって欲しいものだという見方にも、一理はあると思います。
そんな、あれやこれやで、娯楽映画ということでは、決して「つくり」の悪い一本ではなかったと思います。評論子は。
(追記)
そこまでの製作意図があったかどうかは、作品からは直接には窺うことができませんでしたけれども。
「お気楽に観ることのできる」(失礼!)本作は、実は「逆境にあっても、ユーモアを忘れてはいけない」ということを教えてくれているのだとすれば、それはそれで、とても素晴らしいことだと思いました。