「その卒業の意味に涙なしでは見られない、河合優実の底知れぬ演技に驚く」少女は卒業しない たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
その卒業の意味に涙なしでは見られない、河合優実の底知れぬ演技に驚く
今回の東京国際映画祭で1番注目していた作品。河合優実さん初主演を中川駿監督が撮るなら期待が上がらない訳がない。ホントに涙が止まらなくて、高校時代を「あの頃」と思える人で良かった。Q&Aの内容を交えながら記していく。
原作は朝井リョウさんの短編集。ちなみに私は未読。 その中で中川監督が4人の少女をピックアップし再構築。群像劇のようで異なる脚本としてリビルドされた。しかしながら、まなみを主人公としたのも納得。漠然と私も生活しながら感じていた事を作品に落とし込んでいて、主人公にするのも納得だ。その点は、監督へのQ&Aで聞くことができたので、下のコメント欄にネタバレありの元、書いておく。監督に「いい質問ですね」と言われ、終了後に改めて「質問ありがとうございました」と会釈されたことはしばらく思い出になりそうだ。照
学校は不思議なもので、別に誰かと仲良くしても良く、居心地が誰にとってもいい場所ではない。さらに言えば、世界の全ての中にいくつもの物語が流れている。それを交わらず、彼女たちの生活と区切りとして卒業を描くから惹かれてしまう。たった2日、されど2日。終わっていく日々の中で動いていく個々の生活は、どこか懐かしくもくすぐったい。あの面倒臭さに少し焦がれる程。しかしながら、そこは朝井リョウさん。ある秘密を携えて進んでいく。単なる青春モノではなく、「卒業する」彼女たちに捧ぐ花束たちに涙が止まらなかった。
主演は待望の初主演となった河合優実さん。監督によると、意図した演出を振っても見透かされている感覚になるとか。彼女に構図を教えて演技してもらう方がしっくり来ると言うから驚きだ。彼女自身も相変わらず心を掴んで離さない演技が今作でも出ている。何より主演としての器と輝きを自ら放っている点が素晴らしい。
小野莉奈さんに小宮山莉渚さん、中井友望さんといった今をときめく少女が集結。佐藤緋美さんや田畑志真さん、窪塚愛流さんといった学生キャストにも注目して観てほしい。個々の関係性と普遍的な学生生活を垣間見るようで微笑ましかった。
仲良くしていたあの人は今、どこで誰として生きているだろうか。キャラは変わったのだろうか。素敵なパートナーは出来ただろうか。抗うことなく終わった高校生活を改めて想いを馳せる。どこかざらついた記憶の蓋を再び開けたくなって、いつかの友に連絡をしたくなった。輝かしいあの頃と共に。
Mさん、コメントありがとうございます。卒業はさせられるものであって、彼女たちはそれぞれの境遇から卒業しない、寧ろ人生を続けていくことを暗示しているのかなと私は考えています。
レビューとコメント、お褒め頂きありがとうございます。
この作品には、2つの卒業がある。学生生活の終わりと死別。その中で中川監督が刺さったエピソードがまなみだったとのこと。一足早く、卒業を強いられた少女だからだ。
私も連絡を取らない、取れないかつての友は概念的に亡くなった様な気がしてしまう。私の人生に交わらないから。それを監督が「卒業」と形容されたことで腑に落ちた。そう考えると、私は薄情なのか卒業が早すぎるとも思える。笑
台詞の中に学校の出来事として彼の死を何度も隠喩する辺りで勘ぐっていたが、河合優実さんが取り乱す姿に言葉を失うほど引き込まれ、涙が止まらなかった。ホントに凄い女優さんだ。