劇場公開日 2023年2月3日

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「抽象的」スクロール イナヅマゴローさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0抽象的

2023年2月24日
iPhoneアプリから投稿

旬な実力俳優を擁し、何だか良さげな見た目でありながら大変評価の低い本作。
何がそんなにウケていないのか、観た上で考えてみた。

私が思うに、全てが抽象的で、会話も具体性が伴わず、ゆえに薄い。その脚本の難が原因であろう。

上から言われている
会社が◯◯
パワハラがどうの

みたいなことを言っているが(ニュースもそう報じるが)
上って誰?
会社って何の会社?
自殺の原因がパワハラってどんなパワハラ?

みたいなことが一切わからない。

そんな細かいディテールはストーリーには正直あまり影響ないだろう。しかし、世界観を観客が共有するための一助となる情報が悉く省かれ、おまけに導入部が極めて抽象的なシーンから始まるからストーリーの骨格も、制作者が言いたいことも掴めないまま時間が過ぎ、結局掴めずに終わる。

登場人物の設定も、おそらく苗字がないのも故意のものだと思われるが、もし、万人が共感しやすいよう具体的な情報、個人像を分かりにくくしたのは逆効果だった。
彼、彼女らの抱える悩みの背景が見えないからだ。

総じて、残念な作品である。

同級生の死から始まる、若者の個々の苦悩というテーマの作品なのであろうが、友人が死んだという事実以外、頭に残るものはなかった。ゆえにタイトルのスクロールの意味もイマイチボケたままだ。

ひょっとしたら原作小説はもっと分かりやすいのかもしれないが。

ちなみに私は、始まって1分で眠くなったことも付け加えておきたい。

イナヅマゴロー