「静岡県(と思われる)の海辺の小さな町にあるお弁当屋さんで働く女性・...」ちひろさん りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
静岡県(と思われる)の海辺の小さな町にあるお弁当屋さんで働く女性・...
静岡県(と思われる)の海辺の小さな町にあるお弁当屋さんで働く女性・ちひろさん(有村架純)。
元風俗嬢であることを隠さず、それがゆえに店のお客も増えた模様。
生き方も軽やかというか、誰とでも分け隔てなく接している。
最近知り合ったのはホームレスの老人。
彼は一言もしゃべらない。
ぶっきらぼうだが、やさしく接してくれるちひろさんには感謝をしている。
ちひろさんのそんな軽やかさ・明るさに惹かれる女子高生。
彼女は、隠れてちひろさんの写真を撮っていた。
思い切って、ちひろさんが店番しているところへ弁当を買いに行ったところ、「今日は写真撮らないの?」と、ちひろさんから声かけられて逃げてしまった。
それがきっかけで交流するようになった。
でも、誰にでもやさしいちひろさんは、相手のことを詮索しない。
気に掛けるが詮索しない。
彼女にも暗い過去があったわけで・・・
といった物語で、主役に有村架純を迎えたこともあってか、前半はいつもの今泉力哉監督作品と異なってテンポよく進んでいきます。
そうね、だってこれは有村架純のスター映画だもんね。
という雰囲気が変わるのが、元風俗店店長(リリー・フランキー)と入院している弁当屋の女将さん(風吹ジュン)が登場してから。
ふたりの演技はいつも演技なのだけれど、このちょっとした間というか空気感というのが、今泉力哉監督映画っていう感じなんだよねぇ、と思ったり。
さてさて、ちひろさんなんだけど、観ていて思い出したのは『時代屋の女房』に登場する「問わず語らず都会の流儀」という言葉。
濃密な人間関係の田舎だと過去の経緯なんかを根掘り葉掘り訊いちゃうわけだけれど、人間だものいろいろあります的なひとびとが暮らす都会では、そんな過去のことなどほじくり返さない。
ほじくって、いいものなんて出ないわけで。
それは、ちひろさんと風俗店店長との面接の場面に端的に表れている。
あ、リリー・フランキーって、いつもやっぱり重要な役を演じているねぇ。
ということで、後半になってぐっと良くなった。
今回はロケーションも魅力的。
今泉監督、子どもの撮り方・扱いも上手いのね。