「気になる事にはとことんこだわり、人が人を想う気持ちにはとても敏感。これは自由奔放に生きる元風俗嬢ちひろさんのお話です。」ちひろさん もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
気になる事にはとことんこだわり、人が人を想う気持ちにはとても敏感。これは自由奔放に生きる元風俗嬢ちひろさんのお話です。
漫画が原作です。世界観が好きな作品。
今泉監督による映画化と知りまして、
これは観ないわけにはという訳で鑑賞です。
始まり始まり。
ちひろさんは、「元」風俗嬢。
”ちひろ” は、当時の源氏名。
今は弁当屋「のこのこ」で働いています。
弁当屋でも、彼女は ”ちひろ”を名乗り、
元風俗嬢であることを隠しません。
そんな”ちひろ”と彼女の周りの人たちとの
交流を描いた作品です。
原作がそうなのですが、ちひろだけでなく、
登場する人物がとても魅力的です。
・ひちろを盗撮する女子高生(オカジ)
・ホームレスのおじさん(照れ屋で無口)
・母子家庭の小学生男子(マコト)
・”のこのこ” の賄い婆さん(漬け物得意)
・風俗店の元・店長(今は金魚屋さん)
・ニューハーフの女性(バジルさん)
などなど。他にもたくさん。
ちひろさんと、こういった個性的な人たちとの
人間関係の描き方がとても秀逸なのですが
映画の中でもその辺りが、良く描かれていたように感じます。
今泉監督らしさが出ていたかと。 はい。
劇場公開されると思っていたらNETFLIX公開で
上映館は数えるくらいしか無かったので(しかも大都市圏のみ…)
これはしばらく観られないかな?と、思っていたのですが
近くの劇場で上映してくれました。
ようやく観られて満足です。
◇あれこれ
「イメージ通りの配役」
原作のイメージにぴったりのキャスティングと思ったのが
オカジ役の豊嶋花さん と (似てる)
賄いおばさんの根岸季衣さん。 (ぴったり)
最初の登場シーンでは、吹いてしまいました。
良い人選だなぁ と感心。
「地球へ」
竹宮恵子作のSFマンガ。1970年代後半の作品(…確か)。
今でも人気あるのならば、何か嬉しい。
キース・アニアン中尉 とか
ジョミー・マーキス・シン とか
ソルジャー・ブルー とか 名前がスラスラ出てきます^_^;
人類 対 ミュータントの闘い。
うーむ。
連載当時を思い出します。…何もかもみな懐かしい。
「今の貴女が」
"もし貴女の娘に生まれていたら"
”もっと違う自分だったかもしれない”
退院した「のこのこの奥さん」にそう話しかけるちひろに
優しい眼差しで応える、のこのこマスターの奥さん。
” そうね。でも私は、今の貴女が好きよ”
100%の肯定。 ですよ。
一生に一度でいいから言われてみたい
そう思った素敵な言葉です。
◇最後に
ちひろの性格描写が、原作よりもかなり
マイルドになっている気がしました。
そのためエンドロール直前までは、
「ワサビ抜きの寿司」を食べているような
何となく物足りないな、という感覚も正直ありました。
エンドロール後のラーメン屋での一コマ。
「餃子が大きいね」 と口にするちひろ。
「ありがとうございます」と店主。
「なんでお礼? 餃子が大きいのよ」
「はい。ありがとうございます」
「…」 ※繰り返す
注文時に「普通」と聞いていたことに対して
ちひろが ” これを普通とは言わないわ ” と
伝えようとする場面なのですが
皮肉混じりの感想のために意図が伝わりません。
話がかみ合わないまま会話を繰り返す という
なんとも可笑しい場面なわけですが、
この「餃子の大きさ」のような、どうでもいいことで
「攻めのスイッチ」が入ってしまうと さあ大変。
ちひろの別の一面が描かれる場面なのですが
もしかしたら今泉監督自身が、
「ちひろのこんな面を入れて無かった」 と感じて
最後に追加したのかな などと
思ってたりしています。
◇最後にその2
マコトが母親に贈った花束を
ちひろの入れ知恵と思い込み、地面に投げ捨てる母親。
それを無言で拾い上げ
「これを捨てたらダメ。絶対に後悔するから」
と胸元に押しつけるように渡す、ちひろ。
この場面のちひろが好きです。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
コメントありがとうございました。ちひろさんのとんがったエピソードは作品にちりばめられていて、それらはひとつひとつが攻めのスイッチ的だと気づきました。芯がしっかりしているのに飄々と生きる様が魅力であり、寂しげでもあり、はぐれ雲のようだと評される理由ですね。カッコいい。
おはようございます。原作読んでないです。攻めのスイッチについてもう少し鈍いアタシにわかるように、たとえをあげてご教示願います。コメントお待ち申し上げます。