「同じ星に生まれたと信じる気持ち」ちひろさん えびちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
同じ星に生まれたと信じる気持ち
※断定的な表現がありますが感想です。
この物語は表面と中身の二面性で作られている。
ちひろさんは元風俗嬢という肩書き(表面)を恥じらいなく周りに伝えていく。
肩書きだけで判断されることには慣れているが、たまにいる肩書に惑わされず中身を好いてくれる人がいると嬉しくなる。そして「この人は私と同じ星に生まれたのかもしれない」と期待する。
そのたまにいる人たちは「あなたを見ればわかるから、名前とか職業なんてどうでも良い」という価値観に共感している人たちだ。
ここでキーになってくるのが風吹ジュン演じるお弁当屋店長の奥さん。彼女は目が見えなくなってしまい、入院先でちひろさんと交流を深める。
彼女は目が見えなくなってからもちひろさんを感じる。ここで「あなたを見る」という意味は目だけではないことがわかるのではないだろうか。
この映画を観ても、最後までほっこりすることはなかった。
常に緊張感を持ちながら見ていた気がする。
理由はいつまで経ってもちひろさんにとっての幸せの形が見えなかったから。
信じてくれる人にはちひろさんは愛を込めて接する。そしてその人が幸せになることを願っている。
一方でちひろさん自身は表面を上手く取り繕って見せるのが得意でも、中身や裏にある過去を表に出そうとしない。
結局物語の最後まで、ちひろさんの過去に何があったのか曖昧な描写はあるものの事細かに知ることはできなかった。それは一緒に過ごした仲間たちも視聴者もである。
そしてちひろさんは弁当屋を去り、新しい地に旅立った。彼女は影を隠し、同じ星に生まれた人を孤独に探し続けるのだ。
この映画は肩書きなどに惑わされず中身を見ろという心強いメッセージと、本当に分かり合える人はいないという冷たい現実を突きつけてくる。
それでも生きてゆく。
私はこの映画が好きだ。