ちひろさん : 映画評論・批評
2023年2月21日更新
2023年2月23日より新宿武蔵野館にてロードショー
彼女に会うだけで人は少し生きやすくなれる 人生のクオリティが変わる作品
ちひろさんにおれいを言いたい。映画になってくれてありがとう。その前にそもそも、この映画の原作であるマンガになって現れてくれて、ありがとう。原作の安田さん、そして有村さんと今泉監督、本当にありがとう。おおげさに言うと、ちひろさんに会ったことがあるとないでは人生のクオリティが変わってくると僕は思うのです。彼女に会うだけで人は少し生きやすくなれる。だからちひろさんにおれいが言いたかった。
映画やマンガの中じゃなくても、ちひろさんはいる。あなたが知ってる人の中にもちひろさんはいるかもしれない。この映画を観ておくと、ちひろさんぽいふるまいをする人に出会ったときに「あ、この人が今してくれたことはちひろさん的だな」って気づけます。
生きているだけで人間はかならず傷つく。生きることは、なにかの拍子に誰かから否定されることの連続だからだ。 家庭で、学校で、恋愛で、多くの職場で、遊びの場ですら人は否定されることがある。自分で自分を否定してしまうこともある。だが、ちひろさんは目の前の人を絶対に否定しない。これはすごいことだ。
否定をしないということは、甘やかすことや怒らないことではないし、拒否しない(なんでもかんでも受け入れる)ということでもない。ちひろさんは聖母ではないし菩薩でもない、ふつうの人間だ。ちひろさんだって傷つきまくって生きている。
だから、あなたもちひろさんのように生きることができる。それはおそらくそんなに難しいことじゃない。この映画を観て、あなたにできることだけ、ちひろさんの真似をして生きればいいのだ。全部は真似なくていい。
風俗で働いたりお弁当屋で働いたりしたことはあってもなくてもいいし、男性として生きていても大丈夫。誰でも、ちひろさんのように目の前の人を否定しないで軽く生きることは、できると僕は思うのです。
(二村ヒトシ)