「グロやゴア表現の地位を高める意思を感じる」真・事故物件パート2 全滅 屠殺100%さんの映画レビュー(感想・評価)
グロやゴア表現の地位を高める意思を感じる
ホラーは低予算である。舞台は屋敷、館、山小屋、悪霊のついた一軒家、事故物件等々、ホラーの舞台設定は狭い箱となる。
そこに、様々な工夫を加えた結果、スプラッタ要素で勝負したのが、大先輩である『死霊のはらわた』。『死霊のはらわた』は、2作目から、コメディ要素を強力にした。(それに加えて、ロマンスも、SFも、アクション要素も加わった奇跡の傑作ホラーである。)
つまり、笑えるグロホラーが『死霊のはらわた2』でこの世に誕生した。本作は『死霊のはらわた2』の系譜にあるといえる。
明らかに笑い要素が強いシーンとしては、ラストの仮面ライダーの奇怪な悪役バトルを想起させるシーンや、女性俳優陣のヤンキーが入った演技が自然体で素晴らしく、ニコニコできる。とくに主演の窪野彩乃はよかった。前作の主演の海老野心もヤンキーが入っていて素晴らしい。
霊媒師の河野知美の優しいマネージャーが、「お世話になっております(よろしくお願いします、だったかも?)」と事故物件の玄関で言ったら、ドーンと顔面がスキャナーズになるシーンは完全にギャグですが、しかし、こういう心優しい人をあそこまでやるというところに、ホラーというジャンルの倫理や道徳を超えたスリルや表現の自由を感じるのだが、これを肯定できるかがホラーを好きになれるかどうかの境目の一つ。
ホラーは、人間の善悪の倫理観や道徳観に最も挑戦的な表現なので、グロやゴアはショック度が高い。だが、慣れてしまうとあまり。笑えてくるのだ。ホラーが笑えるところまできたら、あなたはホラーをたくさんみられるようになった証である。
人肉ミンチ、つくね作りは、やってることは凶悪なのに、なんだか楽しそうにみえてしまうという、人間の倫理や道徳を越えた象徴的なシーン。
まさにこれは、北九州連続監禁事件で、犯人たちがやってたことでは?それを邦画がコメディ要素を加えてこのように表現できたことはエピック。
一軒家での出来ごととして、北九州連続監禁事件はもってこいの素材であり、監督には映画化をする資格は十分あるが、何しろ実際に起きた事件で、被害者がいることである。そこをどう突破するか?倫理や道徳を突破して、猟奇ホラーという表現を成り立たせるか?非常に難問である。
映画は作り物でありフィクションという大前提がある。だから本来は何をやってもいいはず。なのにそこに倫理や道徳をもちこむというのは、料簡の狭い発想。でもそれが多数派。だからこそホラーは永遠にマイナージャンルとしての宿命を負っている。でも、そこをうまく乗り越えたと思わせるホラー映画が世に出てくることで、マイナーなものやエクストリームなものがオーバーグラウンドになっていく一筋の光や明るい希望を見出すことがある。ホラーは常に禁忌とされる表現への挑戦であり、そのスピリットは決して暗いものではなく、誠実で真面目なものだ。
ホラーが流行るかどうかは、エクストリーム表現の自由度を図るバロメーターであり、この映画は、グロやゴア表現が皆無のこの国で、グロゴア表現の自由に挑戦しているし、グロやゴアやオカルト好きは純粋に面白いと思う。