イニシェリン島の精霊のレビュー・感想・評価
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期待していたけど……
1923年のアイルランド、イニシェリン島に住む2人の男の物語。
昨日まで親友だと思っていたコルムに絶縁を言い渡されたパードリックは納得がいかない。しつこく言い募るパードリックに、コルムは「今度話しかけたら自分の指を切り落とす」と宣言する……。
暗鬱な島の情景や、詮索好きな島民たち、海を隔てた本国からは内戦の音が聞こえてくる。そこで繰り広げられるいさかいは詳細が不明で何を感じればいいのかわからない。おそらく北アイルランド紛争に絡めているのだろうと想像できるが、日本人であるぼくには到底理解不能だ。
それでも理不尽な友情劇として観ることはできる。あまりお薦めはしないが。
分かり辛い
分っかり辛い…
一個一個の感情の流れや行動はまぁ分からなくもないけど、それが積もるとこんな訳分からない展開になるのが腹落ちしない… まぁそこにこそアイルランド内戦を象徴させてるんだろけども…
コリン・ファレルとブレンダン・グリーソンも良い演技。特にコリン・ファレルは、なんだかスッキリしないような顔が最高だな。バリー・コーガンも良かったが、なんといっても妹役のケリー・コンドンが最高!「あんたらみんなクソ退屈よ」ってもうね。
しかし映画全体としてはつかみ所がないな…ww
退屈な島
極論でいえば、何もない島での二人の親友のケンカの話しだが、なんというか終始ザラザラした感触の映画でした。退屈な閉鎖空間の島の息詰まるような人間関係。抗うコルムとしがみつく主人公という構図?バンシーを象徴するような、謎のおばあさんも不気味でよい。決してハッピーエンドでないけど、この映画ならありだなあと思った。下手に和解したらつまらんよね。
コリン・ファレルもアクション映画などと違う、冴えない独身男が上手い。
ある島の出来事から、世界の不条理を見つめる問題作
二人の訣別は次第にエスカレートしていき、怒りや悲しみは暴力や炎となる。観ていて痛々しかったが、ある意味滑稽でもあった。凄まじく、なんだか茫然としたまま終わった気がしました。
*
内戦と二人の訣別はリンクしているのだな、とは感じとれたが、面白さを理解するのには自分には難しいかったかも?と思う部分もあり。しかし、他の人の感想や解説を読んだり、考えれば考えるほど、あの人物や出来事はこういう比喩だったのかも?と気づく面白さがありました(もちろん推測ですが)。
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コルスは知的で他人から認められる世界を持ち、パードリックは優しいがつまらない人物です。私もパードリックのように相手から一方的に友情を終わらされた経験があります。初めは身の詰まる思いで見ていましたが、もしかしたらマーティン・マクドナー監督も過去に理不尽な体験をされたのかもしれませんね。
忘れたいが、ずっと記憶に残る
予想通り、気分が悪いままエンドロールを迎えた。主な登場人物のうち、行動が理解できるのは、パードリックの妹シボーンだけ。美しいアラン諸島の風景とは裏腹にずっと、胃がキリキリする人間関係を見せられる。
『イニシェリン島の精霊』をブラックコメディーとして消化できるほど、映画を愉しむ力がないと言えばそれまでだけど、映画をたまに見る人にはお勧めできない。
忘れたいが、ずっと記憶に残る。そんな作品でございます。
価値観の違う人
そもそもパードリックとコルムは合わない。人生の価値観が圧倒的に合わない。だけど、生まれた場所で固定化されている人間関係は、付き合う相手を選ぶ事ができないし、途中で付き合いをやめることも難しい。日本でも過去には八つ墓村的な事件が「ムラ」単位で沢山あったんだろうなあ。
そんな「ムラ」に漂う閉塞感から自分を救ってくれるのが、芸術だとしたら?虚しい人生から救ってくれるのが、芸術だとしたら?コルムは単に芸術に人生の救いを求めただけなのではないでしょうか。コルムのパードリックへの態度は極端ではありますが、「嫌いになった」なんて恋愛関係では当たり前の事ですよね。しかし、パードリックにはそれが理解できる視野も教養も感性も経験もありませんでした。もし、パードリックが違う世界や違う人を少しでも知っていたら、こっぴどく女性に振られたことがあったなら、もっと違う結果になっていたでしょう。
宮台真司氏が「定住化は人類にストレスを与えた。祭りは定住化が始まってから(抑圧を取り除くものとして)始まった」みたいなことを話していましたが、パードリックも村人もまさしく「ムラ」にとどまりつまらない話題に勤しんできました。定住(ムラ)がつまらない人間を量産したならば、つまらない日常は人類にとって普遍的なものです。つまらない日常を少しだけ楽しく過ごすには、芸術かはたまた争いか。
パードリックとコルムを巡って、ストーリーは徐々にエスカレートしていきますが、これが喧嘩を超えた暴力になった時に、私達はあることに気づかされます。この暴力は、今でも世界中で起こっている争いと同じだということを。1923年のアイルランド紛争も2023年のウクライナも全く同じではないかと。紛争や戦争はもっともらしい理由がつけられて正当化されますが、冷静に考えるととても馬鹿馬鹿しいことなのではないかと。
本作はパードリックを通じて、価値観の違う人や意見の違う人に対する不寛容さを表しているように感じました。その不寛容さは、無知や疎外感からくるものであり、時に大量に人を殺します。
しかし、パードリックの様な人間がいるのも事実です。パードリックは、他者に対して暴力を振るっていましたが、コルムは自らの指を切るだけで、他者へ暴力は振いませんでしたし、暴力に対しては常に否定的でした。このコルムの態度は、暴力に対するクリエイティブ側からのひとつの答えだと思います。
地球がイニシェリン島だとしたら?
マーティン・マクドナーの脚本は、キャラクターの作り込みとか暗喩とか、本当に素晴らしくて、これぞ映画だと思いました。彼は「スリー・ビルボード」でも憎しみの連鎖の描き方が秀逸でしたが、今作でもかなり奥深い考えさせられる憎しみの表現でした。
風景の美しさと暴力的な出来事の対比
荒涼とした厳しさも感じる美しい自然の風景、音楽も神々しく神秘的な安らかな雰囲気です。
しかしそんな雰囲気とは裏腹に、日常に降って湧いた諍いがどんどん不穏な空気を高めてゆきます。
登場人物たちの気持ちは理解できますが、何故そこでそうなる?、そこでやめとかない?、ともどかしい気持ちに。
不穏な血なまぐさい空気の中にもコミカルなところがあり、妙な悲喜劇という感じですが、やはりやるせなさが残ります。
突然別れを告げられる、告げられた方は理由が分からない、という部分は熟年離婚の夫婦を連想してしまいましたが。
物語の時期がアイルランド内戦中と明確に表されるので、本土の争いはこの島民にとっては対岸の火事のようでもありますが、昨日までの友人と血なまぐさい争いに発展するというのはやはり内戦の状況の理不尽さと重ねているのかと。
風景の美しさと暴力的な出来事の対比も印象的です。
俳優陣の演技も素晴らしいですし、象徴的な構図の映像もいろいろと考えさせられました。
時代背景について詳しくないのでパンフレットを買ってみようと思ったのですが、大雪の影響でパンフレットが届かずまだ置いていないとのことで、残念ながら買うことができませんでした。
コリン・ファレルのハの字になった眉毛はある日突然ワケのわからん理由で不条理に戦争の渦中に放り込まれては日常をブチ壊された人たちの困惑と悲痛な叫びだ!
ある日突然、日常をブチ壊す親友の豹変!本土の戦争も他人事じゃない。寓話的な歴史ドラマとして描くことで少しファンタジックな雰囲気も帯びながら、ロシアのウクライナへの支離滅裂な口実による戦争然り、内実は何よりもリアル。
"退屈"しかない島で、人の死を予告する精霊="死神"の声に耳を傾けてしまった人間たちの愚かな末路は、世界の惨状に他ならない。そこに暮らし、そこでの生活が全てな人にとって、そこでの"退屈"を否定することなどできない。いくらヤバくなった、居づらくなったからといって、やすやすと他の場所に移れるわけなどない。それを一方的な口実や約束を押しつけては危険に晒す者がいる。戦争の理由なんて元を辿ればそんなものだろう、それもまた暴力に違いない。
バリー・コーガン演じるドミニクは島中からバカにされ、喰い物にされる純粋さの象徴のように響いた被害者。作中その時々のネタや口実、何気ないセリフなのかもしれないが、明らかに蔑みを含んだ同性愛や鬱、"バカ"という価値観。…と同時に、もしかするとコリン・ファレル演じる主人公パードリックも、コルムもドミニクも行くとこまで行けば死ぬかもしれないのに、パードリック本人はその状況をどうにかしようと必死に動いた結果であって故意ではないにしろ、そうした方向へ追いやったとも取れなくないわけで、そう考えると彼の言動にも火に油を注ぐような"精霊"らしさを見出だせないわけではないやも。そして決別。
マーティン・マクドナー × コリン・ファレル × ブレンダン・グリーソン =『ヒットマンズ・レクイエム』チーム!!
そんな鉄板主演コンビに加えて、個人的に大好きなバリー・コーガン君。三者三様、素晴らしい演技と存在感だった。"いいやつ(nice/good guy)"と"考える人(thinker)"は「&」から「VS」へ?! …これはマーティン・マクドナー印のブラックコメディにおいて"ブラック"が(圧倒的に)勝る瞬間だった。もしこれを"コメディ"とするのであれば、それはこの精霊たちのように人の愚行と死を見て楽しむ神の視座に立つようなものかもしれないとすら思う。
例えば前作『スリー・ビルボード』では最後には比較的分かりやすく静かに沁み入るような映画的カタルシスがあった。それに対して本作は、あの後に2人が復讐に行ったようなもので、良くも悪くもあらすじや予告から分かる情報のまま最後までゆっくりと進んでは、ただただ辛く寂しく苦しい味わい、余韻だけを静かに残していく…。この「う〜ん」という感じは、前作やそれまでのフィルモグラフィー以上に見る人を選ぶ作品だと思うけど、同時に彼の作品を初期から見ていた者としては彼でしかないと痛感する。
"エンコ詰め"
一切の予備知識を入れないで鑑賞すると一瞬、時代設定や舞台となる国ですらわからないまま、観る前や物語序盤では現代劇かと、カレンダーや奏でられるアイルランド民謡など台詞で"IRA"と出て来たりでようやく、唐突に絶縁宣言、二人の仲が良かった日々が想像出来ない険悪さ。
監督のマーティン・マグドナーや主要登場人物たちがアイルランド国籍であることで納得の舞台設定、主演の二人を起用した『ヒットマンズ・レクイエム』に雰囲気が近いようで地味に進んで行く物語から微妙に可笑しかったり感情移入出来る哀しさ、幼稚園でも小学生や中学、高校や大学に社会人になっても老後でも国柄に関わらず同じような経験を何方の立場でも、そんな関係性がわからなくもない!?
パードリックとコルムを中心に少しの心理戦?劇的な展開も希薄で退屈になりそうな間にパードリックの妹の実情が物語に起伏を、バリー・コーガン演じるドミニクのキャラクターが逸品で彼を見ているだけでも飽きはしない、コリン・ファレルとは『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』や『THEBATMAN-ザ・バットマン-』ではペンギンと多分、ジョーカー役で本作は三度目の共演か?
商店のババァや神父に警官と意地の悪い連中に胸糞が悪くなる、そんな外野のキャラクターも魅力的。
内戦
親友にある日突然有人をやめると告げた考える男と、告げられた考えない退屈な男の話。
残りの人生を考えて、楽しい バカ話しを繰り返す毎日ではいけないと思い立ち断交宣言をするコルム。
突然まともに口も聞いて貰えなくなり戸惑うパードリック。
仲が良いうちは良いけれど、何かがあれば島中みんなの耳に入る様な少し閉鎖的な島で巻き起こる諍いがエスカレートしていく物語。
賢い妹に死神にクソ警官にゴシップ大好き商店主にNo.1のアホに生臭神父にと様々なキャラクターが登場し小さな戦いを見守ったり庇ったり…。
ホント小さな話しで何をみせられているのか?という感じになりつつも拗らせジジイ達のシリアスな戦いをほんのりコミカルな演出でみせていく感じや、虚無感がなかなか面白かった。
どっちかな
16本目。
コリン・ファレルの芝居が面白いなと始まった時から思ってたけど、作品の中同様、それが分かってくると、同じ心境になってしまう。
周りのキャラも大分濃いし、段々とブラックな方向に傾いていく流れに、のめり込んでいってしまってる。
鶏が先か?卵が先か?じゃないけど、原因はどっちもどっち、いや?とは思うけど、つまらない大人の意地の張り合いとも言える。
Best Friends Forever
空気が綺麗な澄み切った空と美しい海、島の自然と地形が壮大でスクリーンで鑑賞して良かったです😊✨
2人の友情がメインになっているのは良いですが、島の人々との関係性がもう少しあった方が個人的には好きでした…
順調だった友情から絶縁までの流れについて、もう少しきっかけと途中経過がほしかったです。
『スリービルボード』がとても好きな作品だったので、ちょっと期待しすぎてしまったかもしれません😢
主人公や親友の行動が理解できず取り残される
親友が絶交したがっている理由は、案外早く明らかになる。その理由も、決して感情的なものではなく、理にかなっていて納得できる。しかも、親友は、決して主人公を嫌ったり、憎んだりしている訳ではなく、ただ、放っておいてほしいだけなのである。そのことは、親友が、殴られた主人公を助け起こしたり、主人公の代わりに人を殴ったりすることからも明らかである。
ここまでは良い。
理解できないのは、親友が実行する自傷行為で、明らかに常軌を逸しているとしか思えない。とても、「ちょっとした感情のすれ違いがエスカレートした」といったレベルの行いには思えないのである。親友が、精神を病んでいるようでもなく、いたって理性的に見えるのも、かえって不自然で、訳が分からなくなる。
一方の主人公も、そんな親友の本気度を認識しながらも、なぜ、それほど親友に執着し、関わりを持とうとするのかが、よく分からない。確かに、妻も恋人もなく、親友と酒を飲むことしか楽しみがないことは理解できるが、あの状況では、親友の望むとおりに放っておいてやるのが普通の対応だろう。
警官も、神父も、雑貨屋の主人も、誰もが、揃いも揃って性格の悪い島民の中で、唯一まともに思える主人公の妹が決断したように、「島を出ること」こそが、最も正しい選択肢だと思えるのだが、主人公が、なぜ、それほど、島に残ることにこだわるのかも、理解に苦しむ。妹も、友達だった警官の息子も、最愛のロバも、もう島にはいないのにである。
結局、妹以外の誰にも、共感も、同情も、感情移入もできず、観終わった後には、取り残された気持ちだけが残った。
ところで、主人公が崖の上から妹を見送った時、隣に立っていたのは誰だったのだろう?
それから、死を予言されたのは2人の男のはずだったが、もう1人は誰なのだろう?
「いい人」が隠している凡庸な悪
1923年のアイルランドの小さな孤島を舞台にした話。島民が数十人くらい(?)で閉鎖的で、終始陰鬱な雰囲気がただよっている。
100年前のアイルランドの田舎の生活の様子が見れるだけで、この映画観て良かったなーって思う。自然や景色は美しいのだけど、それだけで、ほんとに何もない。映画館はもちろん、テレビもラジオも雑誌も新聞も何もかもない。警官は絞首刑が見られるのが楽しみだとか言ってる。唯一の娯楽と言えば島に一軒しかないパブだけで、読書してるだけでインテリといわれる。そんな島。
人々は暇を持て余していて、退屈で怠惰な日々を送っている。この映画で唯一まともそうな人物が主人公パードリックの妹。妹以外はみんなどこかおかしい。
この島の陰鬱な閉塞感て、たとえば「家庭」「学校」「会社」などの限定された人間関係から逃れられない閉塞感を普遍的にあらわしているような気がしてならない。
妹は最終的に島を出る決心をして、主人公(兄)にも早く島を出るようにすすめるのだけど、主人公は「島を出ることはできない」と考える。閉塞的な環境がいろいろな悪いことの元凶だとしても、自分のいる場所を出ることを想像すらできず、ここで生きていくしかない、と思い込んでしまう、というのはすごくありがちだと思う。
妹は本を読んでいたから、この島以外の選択肢を考えることができた。知識や教育といったものの本当の価値はこういうところにあるのだと思う。世界が自分の周囲だけで完結してしまっていて、その外の世界を想像することができず、選択肢があることに気づけなかったり、気づいてもそれを選ぶことが心理的にできない。
主人公は長年の友人コルムから突然「お前が嫌いになった」と絶交され、そこから泥沼の人間関係が展開されていく。おそらくこれはアイルランドの内戦の暗喩なのだろうけど、それだけでは解釈しきれないような謎がいろいろある。この映画は、テーマだとかメッセージが分かりやすく示されていない。ハッピーエンドなのか、アンハッピーエンドなのかすら分からない。この抽象画のようなストーリーをどう解釈するのかは観客にゆだねられている。
僕はこの映画は、「いい人」と評価されている人の「凡庸な悪」を暴く話ではないか、と思った。主人公は、「自分はいい人だ」ということを唯一のほこりにしている。でも僕は「いい人」って誉め言葉なのか?って常々思っている。「あの人いい人だけどね」というとき、それって「いい人」であることしか取り柄が無い、という意味じゃないだろうか。
コルムに「お前の話は退屈で無意味で時間を無駄にしている」「俺は残り少ない人生を作曲に専念したい」と言われても、主人公は自分のそれまでを顧みることをせず、相手の意思を尊重するわけでもなく、「自分は悪くない」という感情しかもてない。
主人公はコルムと自分は親友だ、と思っているが、コルムがほかの人と作曲やら演奏やら何か生産的な活動をしているとき、苦々しい感情しか持てない。主人公の人間関係の見方というのは非常に単純(幼児的)で、要は「相手からの自分への好意」にしか関心が無く、相手の成功だとか成長だとか目標だとか幸せには興味がない。
そして、主人公の「いい人」の正体が徐々に明らかになってくる。このへん、ホラー的な不気味さがある。コルムの仲間の音楽家に「お前の父親が死んだ」とウソを言って島から追い返してしまったり、そのことに全く罪悪感を感じていないことから、実は主人公は「いい人」なのではなく、「いい人」と思われたいだけの人なのだ、ということが徐々に示される。
自分の中に善悪の基準があって善いことをしているわけではなく、他人からの評価だけを基準にして自分の行動を決めているのだとしたら、同じ行動をしていたとしても中身は全く違う。主人公がやたら島民からの評価を気にしていることもそれを裏付ける。
主人公の異常さがはっきりするのが、コルムの家に火をつけたとき、家の中にコルムがいるのを確認し、確認したのにそのまま立ち去ったシーンだ。主人公は、おそらくはじめは、コルムを殺そうとは思っていなかった。でも、家の中にコルムを確認したとき、「死んでもいいや」と思ったのだ。
主人公にとっては、「自分を好きなコルム」だけに価値があるのであって、そこまで自分を嫌いだというコルムは死んでもかまわない、と思ったのだろう。ロバを溺愛していたり、コルムの犬を殺せなかった理由も、ロバや犬は自分を好いてくれる価値ある存在だからだろう(この映画とは関係ないけど、ペットを飼う目的や、恋人を作る目的は、自分を好いてくれる存在を側に置きたいから、という理由が大きい気がする)。
ドミニクの死体が上がるシーンは、この映画のストーリーの中で明らかに蛇足であって、謎展開の1つだけど、この映画が主人公のサイコパスを暴く話なのだとしたら、合点がいく。ドミニクは主人公が「いい人」でないことを悟ってしまった。それで、主人公は自分を「いい人」ではない、と考えるドミニクに価値がなくなり、崖から突き落としたのだろう。これは、警官に対する報復でもある。
そして最後、コルムが生きていたことを知った主人公とコルムとの会話。あくまで関係を断とうとするコルムに対して、主人公は、憎しみという形でも関係をもち続けようとする。
閉鎖的な環境が長く続くと、発展や成長に興味がない人間は、自分でそうと自覚のないまま、とことん堕落していく、その醜悪さをこの映画は描こうとしたんではないか…? 知らんけど。
もしかしてこれジョーダン・ピール系映画ですか?
何にも考えなければ吉幾三的世界。
閉鎖的な島。
《普通》から少しでもズレた人間は疎外。
見ようによってはイジメ。
本音は言えない。
やりたい放題の権力者。
染まりたくない。
だが、この土地に住む限り、否応なしに染まっていく。
特徴。
子どもがいない。
むしろ婚姻関係にある人がいない?
一見して真っ当に見える主人公。
でも他の人の目から見るとそうでもない。
主人公を突然嫌いだす友人。
主人公が話しかける度に、とんでもないことをする。
それを止めずに呆然と見るパブの人々と。
堂々と正面切って話しかける主人公の妹。
…そして、正常な人間ほどこの町から出ようとする。
なんだこれ?
観始めた時にはそんな印象でした。
で、最後まで観てやっぱり なんだこれ? だったんですが。
なんかこれ、主人公と友人の関係を国と国とかに置き換えると、なんかしっくりくるなあと。
なんでそこまでなる前に、話し合えなかったのか?とか。
まあ、賛否両論ある作品だと思います。
アイルランド小島の風景は美しい。ただ、話はベクトルが難解、どこに向かってるの?不思議ちゃん映画。
アイルランド🇮🇪内戦1923 本土と離れた小島ののどかだけど、厳しい情景
緑の島だけど、樹木は生えない 美しい景色
小島だから全員が顔見知り。故にみんな退屈。
だが、不思議ちゃん映画で、そこそこ【何で?なぜこういう行動心理のベクトル?】という不思議さで
そこそこ魅せる。
ロバがかわゆい。
精霊の舞い降りた老女が恐ろしい。
しかしコレでアカデミー行けるかなぁ❓最近変なのばっかだからかえっていけるカモね❗️あと次の行兄弟✖︎→兄妹ね。
チット
①何で兄弟揃って、容姿も悪くないのに独身やねん、太ったオッサンも
②職業なんやねん、1923、日本で言うと大正時代に無職で昼から酒ってありか?
というのは感じたが、それは言うのは野暮というモノ。
不思議ちゃん映画だから仕方ない。
チョットセリフの応酬がすごい、セリフ多すぎ、時間も若干長いカモ
でもアイルランドのしかも孤島的な文化、閉塞感は堪能でケルト文化的な・・・
人間讃歌、ブラックコメディーというよりは
【病的な心の闇】VS【気弱すぎるコリン・ファレルの迷走】不思議ちゃん作品。
でも告解だか懺悔だか知らんけど、キリスト教独特の神父だが牧師への告白場面で
神父だか牧師が、グルになって【テメェこの野郎 Go To Hell 】的なやり取りは面白かった。爆笑🤣
でもコリン・ファレルと喧嘩相手のオッサンよりも
【チト頭の弱い】ドミニク役のバリー・コーガンのはキャラが面白かった。
不思議ちゃん作品だね。景色は美しい。田舎の閉塞感で鈍重になりがちなテンポを会話の応酬で補っている。
ただ、好き嫌いは分かれるねぇ、どっちかというと映画🎬が趣味の人向け。
有料パンフはデザイン構成共に高レベル。【オッサン ブレンダン・グリーソンすまぬ🙇♂️】
ロバのかわゆさと不条理、不思議ちゃんに身を任せる作品。あるいはアイルランド🇮🇪の美しい景色に身を任せる作品。
すべては『イニシェリン島の精霊』を完成するために・・・これが映画だと…傑作だと思う・・・
①凝った脚本の、かなり人を喰った映画だと思う(だから「ゴールデン・グローブ賞」のコメディ部門にカテゴライズされたのだろう)。
同時に、これが正に“映画”という魅力に溢れている。
『スリー・ビルボード』も傑作であったし、この監督注目である。
②ケルト文明が色濃く残っているようなイニシェリン島の風景描写が先ず素晴らしい。それに被さるケルテックな音楽。魔女のようなクソババアの予言。それらからして寓話の様な、中世のお伽噺のような雰囲気を纏っているが、実はかなり風変わりな友情の話である。
③親友から突然“お前のことが嫌いになった”と言われた時の、コリン・ファレルの表情が絶妙。これで映画に引き込まれた。
④普通、親友に突然“お前が嫌いになったから今日から話しかけるな”って言うか?何かの意図があるに違いない。
言われたコリン・ファレル扮するパーチリッジは身に覚えがないのでアタフタし理解できず悩み苦しみ挙げ句泣いてしまうけれど…
⑤『イニシェリン島の精霊』を完成させたい。しかしそれまではパートリッジに付きまとわれたくない、彼のお喋りが邪魔である。
いくら親友とは言えやはり自分の進みたい人生が大事である。
親友だけあってブレンダン・グリースン扮するコルムはパートリッジを良く理解していたのだろう。
“話しかけられたら指を切断する”くらい言わないとパートリッジを遠ざけられない。
本気だと言うことを示すために余りチェロの演奏には影響が少ない(?)指を一本切ってパートリッジの家のドアにぶつけることまでする(友達だからこそ出来たような気がする。他人なら嫌がらせだと告発されるかも…)。
コルムははじめから指を失くすことぐらい覚悟していたのだろう。⑥コルムの“人生は死ぬまでの暇つぶし”“人の記憶など50年もすれば忘れられてしまうが、音楽は200年も残る”という台詞に彼の心情が伺える。
島で多分一番のインテリであるシボーンにも彼の心情を理解して貰えると思い説明するが、やはり理解しては貰えない。。
⑦コルムのパートリッジへの友情が実は消えていないことは随所に現れる描写から伺える。
警官に殴り倒されたパートリッジを助け起こし馬車に乗せる。
シボーンが乗った船が出港した時に、断崖の上でパートリッジと共に見送っていたのはコルムだったろう。
ロバが死んだことで文句を言いに来たパートリッジにロバのことで嫌みを言った警官を殴り飛ばす。
⑧自分の真意をやっと分かってくれたのかと思いきやパートリッジがまた押し掛けてきたので、もうチェロを引きながら作曲するのに必要はないし、(友達との)約束通り残りの指も切断してしまう。
この後何故こんなことをしたのか説明するつもりだったのか、うっちゃっておくつもりだったのかはわからないが、事はコルムの思いとおりには行かなくなる。
⑨元々イニシェリン島に住むことには飽き飽きしていたシボーンは一連の出来事にとうとう島を出るという決断を下す。
パートリッジが家族のように思っているロバのジェニーがコルムの投げた指を口にして死んでしまう。
すべてコルムの予想外の出来事が起こってしまう(歯車が狂い出す)。
⑩クソババア魔女が予言した二つの死。人間が二人死ぬと思っていたが、一人は人間(恐らくシボーンに失恋したドミニクの自殺-映画の前半で、若い健康な若者が湖で自殺したとドミニクの父親である警官が島のニュースとして雑貨屋で報告するのが皮肉な伏線になっている)。そしてもう一つの死はロバのジェニーだった。
⑪とうとうブチキレたパートリッジは、仕返しにコルムの家を焼いてやると宣言する。“(火をつけた後)家の中は見ない”とも。
そして宣言通り火をつけるが、火のついた家のなかを覗くとコルムが座っている。が、パートリッジは助けない。コルムが死んでもよいと思ったのか、いずれ逃げ出すと思ったのか。
⑫その後、浜に降りたパートリッジは生きているコルムを見つける。
この後二人の間に交わされる会話が巧い。
コルム:“これでおアイコだな。“
パートリッジ:“あんたが生き残ったのでおアイコじゃない。”➡️まだつきまとう気。
コルム:“砲撃しなくなった。内戦は終わったのかな。”➡️二人の冷戦は終わったか、友情は終わったか?
パートリッジ:“終わらないものもある。”➡️二人の冷戦は続くのか、友情は続くのか?
コルム:“犬の世話をありがとな。”
パートリッジ:“Anytime.,”➡️“いつでも”(この先も、って意味)
これらの会話を二人は視線を合わせず対岸の本土を見ながら交わすが、二人の間に再び友情が戻ってきたように感じた。或いは、結局この話は初めから捻れ合い絡み合いながら続いた二人の不思議な友情物語だったのか。
⑬コリン・ファレルは、素朴で人は良いが妹ほど聡明でもない農夫の、親友からの突然理由もわからない拒絶を受けての困惑、悩み、悲しみ、苦しみ、嫉妬、怒りを様々に表現する非常な好演。拒絶される理由が判らず妹に“俺って善い人間だよな?”“退屈な人間か?”と繰り返し確認したり(妹は“この島に退屈じゃない人間なんている?”と答えちゃって暗に退屈だと言っているようなもんだけど。)、妹に島を出ると言われて“残された俺はどうなる?”とアタフタする人間としての可愛さ、コルムの本気を見せられても、妹、パプの主人や常連に呆れられながらコルムの友情を取り戻そうと空回りする(結果、コルムの右手の指が全部無くなることになる)一途さと頑迷さを巧まずに表現。
⑭一方、物語を動かすコルム役のブレンダン・グリースンは、突然理由も言わず親友と絶交したり話しかけると指を切断すると脅して挙げ句本当に切断したり、と“おっさん、頭おかしいんちゃう?”ギリギリのところで、親友と袂を分かっても人生の残りの時間を自分の為だけに使いたいという老人の心を説得力を持って描き出す。(これは老境に入りつつある我が身としては理解できる。)
⑮バリー・コーガンは、『グリーン・ナイト』といい『聖なる鹿殺し』(ここでもコリン・ファレルと共演)といい、ケッタイな役が多いが、ここでも幾分頭の回転が鈍そうな然し結構回りを良く観察している青年をウザさギリギリの匙加減で好演。シボーンへの思慕をなかなか口に出せないところと挙げ句玉砕するところや、実は父親に性的虐待を受けていたりしているところにそこはかとない哀しさも漂わせている。
⑯これだけならかなり陰鬱な映画になるところを、島にへばりつく男たちを理解して尻を叩きながら、最後は本土に居場所を求めるシボーンのチャキチャキした存在が映画の裾野を広げている。
⑰随所に露悪的な笑いやユーモアを散りばめた映画だが、教会の懺悔の部屋が、神父とコルムとでは懺悔の部屋にならないところが面白い。男色を仄めかされ激昂した(カソリックでは最近未成年にたいする性的虐待が問題になってますよね)神父が“地獄に墜ちろ!”とコルムに怒鳴るところはやや定番なから可笑しい。
マーティン・マクドナーは何を伝えたかったのだろうか
これまた、陰鬱とした映画だ。
誰も幸せにならない映画だ。
一体、マクドナーは何が言いたかったのだろう
十字架や死に神のモチーフを使って、
彼が伝えたかったことは何なのだろう
最初、ゴリゴリの実存主義の話かと思って観ていた
実際、コルムの話した、「優しい人は忘れられる、音楽だけが永遠に残る」って話も刺さりまくってしまったし。
それから、パードリックが変わっていくのだけど、
ずっと困った顔してたコリンファレルが人んち
乗り込んで、悪態つくときの可愛さたるや。。
動物を大切にしてるのも可愛かった。
で、死に神が島民二人の死を予言する
本の中におそらく真言を見つけた妹は島を去る
妹に想いを伝え、破れたドミニクは湖で死ぬ
未だ友人を失ったことを引きずるパードリックは
鏡の中の自分を殺し、コルムの家に火をつける
しかし、コルムは死なない。
彼は音楽の為に、生き続ける。
ここから考えるに、「人に執着した者」は死んでいる
そうじゃなく、自分、または自分が信じるものに従って行動した者は死なない。そんな法則がある
こんな言葉を聞いたことがある。
「たいていの人は25歳で棺桶に入り、75歳で死ぬまでそこで過ごす」
島の中で、パードリックは死んでいる
コルムもかつては死んでいた
しかし、音楽を見つけ、生き始めた
同じ死人だったパードリックを拒絶したことで、奇しくも彼に生きる目的を持たせることになる。コルムへの復讐だ。
彼はこれからも島の中で、復讐することを目的として生きるのだろう。
島とか、地方とかの閉鎖的な環境によくある事だが、暇な人間は人に執着する。
あの肉屋のゴシップ大好き店主もしかり、他人への興味が尋常じゃない。
おそらく何も見つけていないからだろう。
だから生者に執着する。
そこから逃れる事が出来るのは、自分の名前と引き換えにしてもいいほどの、永遠に残る何かを見つけた時だ。
と、難しすぎて脳が痺れてきた…
真の主題の一部でも分かればいいか…
にしてもスリービルボードってやっぱり飛び抜けて傑作だったよなあ…
いやぁ、、評しにくい。。
確かに脚本は素晴らしく完成している。そして主要な役の俳優4人、いずれも素晴らしい。からの、トータルとしてどうか。。。うーん、評しにくい。
私は作品へ「感情移入」について、評価そのものに「影響」はしたとしてもけして「重要」なことではないと思っています。ただこの作品は、序盤こそオフビートなやり取りに笑える余裕もあるのですが、まだ前半とも言える時点から早々にコルム(ブレンダン・グリーソン)の言動のスリラー味に対して、惑わされるスーラウォーン兄妹(コリン・ファレル&ケリー・コンドン)へ否が応でも感情移入してしまい、次々と「起きることの衝撃」と「転がるような展開」にとても平常心ではいられなくなります。
本作の監督であり脚本を書くマーティン・マクドナー、『スリー・ビルボード』の不条理さもなかなかなものでしたが、はっきり言って本作は、比較にならないほど常軌を逸していてずっとザワザワが止まりませんでした。
果たして一体、どんな相手にならこの作品を薦められるのか判断できませんが、仮にこれが「アカデミー賞作品賞」を獲っても、それだけで「ちょっと観てみるか」のノリだったらむしろ観ない方がいいと思います。それだけ、映画ファンとして「絶対、否定はされたくないけど、これが最高だとも言いにく」バランスの云わば「問題作」だと思います。
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