劇場公開日 2023年2月17日

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「American Ghoul」ボーンズ アンド オール ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0American Ghoul

2023年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

怖い

今回の「同族」は一風変わった特徴を持つ。
ただ大括りでは「カンニバリズム」に分類して良いか。

ここでの「人喰」は〔東京喰種トーキョーグール〕の「喰種」のように
人を食べねば自身が生きて行けぬわけではない。

普段の食事は常人と変わらず、ただ時として
人を喰べる欲求に突き動かされ
夢遊のように行為に至る。
それは性衝動にも似ているのだろうか。

なので、そのサイクルにも決まったパターンは無い様子。
数年喰べずにいても平気なのに、突然に短いスパンでの多喰を繰り返したり、と。

また遺伝の要素を色濃く描いているのも象徴的。
父から息子へ、母から娘へと伝わるとも。

しかし、その親子間でも喰欲の対象とはなり
一般的な愛情が必ずしも欲求への阻害になるとは限らぬよう。
中には「同族」は喰べぬとの、誓い?を立てる例も有るようだが。

とは言え、妻或いは夫を手に掛けることはないらしく、
これは親子の情よりも夫婦のそれが勝るとの示唆だろうか。

次第に明らかになる
そうした複雑な設定を背景に、展開されるのは
あまりにも悲しい濃密な愛のかたち。
世間には受け入れられぬ少数者が身を寄せ合う。

一つ所に長々と居ることはできず、
仲間のコトは匂いで探知はできるものの、
積極的にはかかわろうとはしない。

家族の中でも自分だけが異端のケースもアリで
距離感を保つことすら困難。

望んでこのように生まれた訳ではないのに、
切な過ぎる身上が涙を誘う。

そんななか、一組の若い男女が米国内を旅する{ロード・ムービー}。

唯一変わっているのは、金品と移動の為の足の入手、
そして一番大事な喰う欲望を満たすための手段が
人間の捕食である点だけ。

その大枠さえ外してしまえば、
よくある{メロドラマ}とさほどの違いはなし。

とは言え最後の最後まで、その設定が存分に発揮されているのだが。

旅の目的が達成された結果はあまりに衝撃的。
しかしここまでは実は序章にしか過ぎず。

終章に向け、更に心をかき乱す流れが待ち受けている。

『高橋留美子』の〔人魚〕シリーズや
〔ぼくのエリ 200歳の少女(2008年)〕でも描かれた
先が見えない、虚無感に縁どられた未来。

とりわけ後者とは、最終的な愛のカタチも近似しており。

ジュン一