「ツッコミどころは満載だけど、私は好き」サンダーボルツ* みやびんさんの映画レビュー(感想・評価)
ツッコミどころは満載だけど、私は好き
『サンダーボルツ』レビュー:異端者たちが挑む“救済”の物語、その光と影
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中でも、ひときわ異色なヒーローチームを描く本作『サンダーボルツ』。アベンジャーズのような正統派ではなく、過去に汚れ仕事をしてきた者たちが主人公という設定からして期待感は高かったが、内容には賛否が分かれそうな仕上がりとなった。
まず冒頭から観客を驚かせるのは、タスクマスターの早々の退場だ。ポスターでも顔が隠されていた伏線から、重要な役割があるのかと期待しただけに、あまりにあっけない扱いには肩透かしを食らう。オルガ・キュリレンコの演技力も光るだけに、もっと見せ場が欲しかった。
一方で、本作で最も心に残るシーンのひとつがエレーナとセンツリー=ボブの関係性だ。エレーナがボブに語った「虚しさは残るけど、人に話したら気分はスッキリする」という台詞は、派手さこそないが、人間の本質に迫るような深みがある。MCUシリーズの中でも屈指の名言として記憶に残るだろう。
アクション面では、バッキーのバイクアクションが圧巻。無駄のない動き、躍動感あるカメラワーク、そしてシンプルに「かっこいい」と思わせるスタイリッシュさは、まさに本作のハイライトのひとつだ。
ただし、物語の核心であるボブ=ヴォイドとの決着には不満も残る。薬物依存や精神不安定という複雑なバックグラウンドを持つボブを“救う”という構図は悪くないが、その過程があまりに平坦だ。精神世界という自由度の高い舞台を活かしきれず、説得と抱擁だけで終わる展開は拍子抜け。特に、ボブと深い関係性を築いていない他のメンバーが唐突に感情的な行動を取る場面には違和感すら覚えた。チーム全員が役割を果たし、“彼らだからこそできた”と思わせるような展開があれば、もっと納得感が得られただろう。
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総評:
『サンダーボルツ』は、MCUの“裏側”を描いた意欲作であり、キャラクターの魅力や部分的な演出には光るものがある。ただし、ドラマチックな盛り上がりやチームの結束力を描くうえでは、もう一歩踏み込んでほしかったというのが正直な感想だ。とはいえ、今後のシリーズへの橋渡しとしては十分に機能しており、今後の展開に期待をつなぐ一作ではある。
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