「偉大な名蹟を、自分色に染めていけ」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
偉大な名蹟を、自分色に染めていけ
マーベル・シネマティック・ユニバース第34作。
キャプテン・アメリカ・シリーズ第4作。
通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
原作コミックは未読。
こんなに地に足がついているMCU作品を観るのは本当に久しぶりで興奮した。本当に面白かった。これだよこれ、これが観たかったんだよと、手放しで称賛したい作品だった。
マルチバースが一切絡まず、過剰なサプライズも無い。ヒーローの葛藤を描くドラマが心揺さぶり、涙腺を緩ませる。
2作目を彷彿とさせるポリティカル・スリラーと壮大なアクションの見事な融合が、MCUの懐の深さを感じさせた。
キャプテン・アメリカ。あまりにも重すぎる名蹟のプレッシャーに葛藤し続けるサムの姿に、心を揺さぶられた。
サムはスティーブと違い、超人血清を投与されていない生身の人だ。だが超人じゃないからこそ出来ることがある。
どんな存在であろうと、まずは対話を試みるサムのスタイルは、彼の優しさに起因した行為であり好感しか抱かない。
スティーブは希望であった。そこまで自分は強くないが、誰かの目標となれる存在でありたい。とても素敵な答えだ。この瞬間、継承者がサムで良かったと心の底から思えた。
そして何より彼には、初代には無い彼だけの個性―強靭な翼がある。その個性でどこまでも高く、自分なりのスタイルで飛び回って欲しい。新たな世界の新たなリーダーとして。
[余談]
サディアス・サンダーボルト・ロスの集大成でもある本作にこれまで演じて来られたウィリアム・ハート氏が、鬼籍に入られた故に出演が叶わなかったことがとても残念でならない。
代役のハリソン・フォード氏も申し分無い演技で、ハート氏の遺志を継ぐ名演であったが、ハート氏のロスがレッドハルクに変身するところが観たかったと云うのが正直な気持ちだ。
しかしながら、ハリソン・フォード氏である。こんな超大物俳優がまさかヒーロー映画にヴィラン(とはっきりとは言えないかもだが)として出演するなんて、まるで夢のようだ。
悪役としては「WS」にてロバート・レッドフォードの先例があるものの、自らモーションキャプチャーを装着してハルクの演技もこなしているのだから、余計にすごいと感じた。
今後もMCUに、しいてはアベンジャーズと共に敵と戦う姿を夢想してしまうが、フォード氏は本作をもって俳優業引退を宣言されており、今後の動向がとても気になっている。