「失敗のチャンピオン」ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
失敗のチャンピオン
トレーラー(予告編)がいかにも失敗したB級映画みたいな感じだったので全然期待しないで観たのだけど、ハードルが下がってたせいかめちゃ面白く感じた。
世界観は完成されているし、キャラのそれぞれが個性的で魅力的。たくさんのキャラ、たくさんの場面、たくさんの出来事がみっしりあるけど散漫にならずテンポよく分かりやすい。伏線がたくさんあって、ちゃんと納得できる形で回収されている。
脚本の完成度がすごい。映像も素晴らしい。ロード・オブ・ザ・リングに迫ってるんじゃないかとすら思う。
原作ゲームの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」はかなり昔に数回やったことがある程度。テーブルトークRPGはコンピューターRPGと全然違うゲームで、ゲームというよりは複数人で即興で物語を作り上げる行為みたいな感じ。自分の作ったキャラになりきって演技しながら進める。細部まで世界観やキャラの背景(過去)を理解してないと演技できない。
主人公が目的をあきらめかけるパーティーに対して、「俺は失敗のチャンピオンだ」と、何度失敗してもあきらめないで挑戦し続けることの重要性を熱弁するシーンは感動した。彼はパーティーの中で最も無力な存在だけど、「リーダーの役割り」とはどういうものなのかを教えてくれる。彼が物語の最後に蘇りの石板を使って女戦士の命を救ったことも、個人的な感傷だけでなく、パーティーに対する責任のような思いもあったのではないかと思う。
ファンタジー世界における「魔法」とは何なのか、ということにも何か気づかされるものがあった。「魔法」が使い手を拒絶することがある、みたいなくだりのところ。魔法は単なるスキルではなく、使い手との対話的な相互作用を必要とするものというか、精神的成熟を要するものというか…。
「魔法」って、現実世界での「科学」の暗喩なのかな、と思うことがある。自然の法則を理解(自然と対話)することで、空を飛んだり、巨大なエネルギーを作りだしたり、病気や怪我を治したり、常人にはできないことを可能にする。また、使い手の意思によって、良いことにも悪いことにも使える危ういものでもある。
続編がありそうな感じの終わり方だったけど、作られるのかな? 個人的にはあんまり続編観たいって感じにはならなかったな…。ラスボス的なものが無い(登場して無い)からかな? 「ドラゴン」もタイトルにあるわりには、すごく強い動物くらいの位置づけで、特別な存在とは感じなかったなあ。