ザリガニの鳴くところのレビュー・感想・評価
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綺麗と美しいは違う
原作未読、あくまで映画内の情報のみの感想です。
原作がベストセラーということで、映像化に重きを置いて所々描写を端折った感がありますがそれはさて置き、映るもの全てがとにかく小綺麗過ぎて終始気になってしまいました。
主人公は文字通り沼地でその日暮らし、毎日貝を拾い集めて主食はとうもろこし粉。そんな劣悪な環境でも髪のキューティクルは保持され日焼け肌荒れとも無縁……というのは彼女の生得的な体質だと言えなくもなく、何より美男美女の恋愛ドラマがあるのでギリギリOKですが、それでもシーンが変わる度にばっちりスタイリングされた衣装を纏う必要は?というか、資本は?
翻って学校に行くシーンだけわざわざボロ衣装で顔も当てつけのように泥だらけにしたりと、なんともインダストリアルな美醜のコントロールに見えてしまう。
※いくらなんでも裸足というのはやり過ぎじゃないですかね。人生難易度インフェルノモードの『少女ムシェット』ですら木靴は履けていたのに。
恋仲になる男も貧乏設定ですが、同じく小綺麗過ぎる。整髪料を撫でつけ、パリッとしたインナー白Tシャツに無骨なワークジャケットを着こなす絵に描いたようなハンサム。私が夏場愛用している、今年3年目に突入したヘインズ赤パックTシャツの首元なんて見るも無惨にヨレヨレですよ。現実、貧しさというのはまず視覚から表れるものなんです(だからみんな金持ちになりたがる)。
また、この映画は最近たまに見かけるようになった無煙映画でもあります。50〜60年代のアメリカの片田舎で、登場人物はおろか道ゆく人すら誰も煙草を吸っていないなんてあり得ないですが、喫煙は絵面が汚いので綺麗な映画には不要なんでしょう(煙草を買うシーンだけは辛うじてありますが、パッケージも写さない徹底振り)。
おそらく、主人公を通して描きたかったのは宣伝文句の「美しい自然」ではなく「野生」でしょう。
裸足は野生の象徴で、10代半ばを境に激しく入れ替わる衣装はオスを引き寄せるための擬態にも見えるし、動植物への異常な興味は生存本能からくる知恵とも言えなくもない。
そのテーマがあるのならば、人工的で作為的な画面はどうしてもノイズになってしまう。
キャラクターも良い人は知的な人格者、悪い奴はふしだらで暴力的、老弁護士は清貧で大衆は排他的。とてもモダンな道徳観で、自然や野生とは縁遠いものです(だからこそ、あの終わり方だとも言えますが)。
成功が約束された期待値の高い作品なので、美しいとされるものしか見せたくない気持ちは分かります。が、貧しく愚かで汚いものにも美しさは宿るし、その部分を表現しないと本作のウリである「衝撃のラスト」に正しく繋がらないのではないかと思いました。
ザリガニの鳴くところは何処?
基本的に恋愛映画であり、1人の女性の成長物語
死体から始まるので、ツインピークスのような、サスペンス、ミステリーを想像していたのだけど、結局は殺人か事故か、だけが争点で容疑者も1人しか居ないから、ミステリーの要素は薄め
その代わり、恋愛ものとしては、しっかり描かれているし、湿地帯の自然美がこれでもかと、盛り込まれている。
個人的にはそんなところで寝ていたら、蚊に刺されて大変では?とか、風呂はあるのか?とか、いらん事ばかり気になって、ロマンチックな気分にはなれなかった。
田舎が最高な彼女を都会に連れ出す難しさに、ボーイフレンド達に同情したりもした。
この映画では、彼女を助ける雑貨屋の夫婦や弁護士といった暖かな人々と、暴力や偏見、陰口で支配しようとする人々との対比が見事で、法廷シーンも、不利だった状況を、少しづつ勝訴へ持っていく流れも見事。映画としてつまらないかというと、そんな事はないのだが、単純に好みでは無かった。
この映画の最大のミステリーは、ザリガニが鳴くところとは何処なのだろうか?と言う謎には残念ながら解答は用意されてはいない。
考察ブログなどを探してみたが、原作者の説明より、Crowdedとの聞き間違い説が一番腑に落ちた
もちろん、映画にはない事ですが、本当に父親は、あの家を出て行ったのだろか?
自然の美しさと恐ろしさを圧倒的な映像美で描く
2022年に見た映画の中でTOP5に入る。
「ザリガニの鳴くところ」は、ノースカロライナ州の湿地を舞台にした物語である。主人公の少女カイアは、幼い頃に家族に見捨てられ、一人で湿地で生きていくことを余儀なくされる。彼女は自然と共生する方法を学び、その過程で自然の本質を深く理解していく。この作品は、カイアの人生を通じて、我々が忘れかけている自然本来の姿や、人間と自然の関係、そして孤独や生存、偏見といったテーマについて考える機会を提供してくれる。
この物語を支えているのが、湿地帯の美しさを余すところなく描き出す卓越した映像美だ。デイジー・エドガー=ジョーンズ演じるカイアの繊細な演技と相まって、観客は冒頭から現代社会から切り離された自然の世界に引き込まれていく。
しかし、この美しい自然は同時に危険も内包している。湿地帯は美しくも危険な場所であり、カイアは常に自然の脅威と向き合いながら生きている。これは、我々が忘れてしまった自然の両義性、つまり慈愛と無慈悲さを併せ持つ存在としての自然を思い起こさせる。
この環境の中で、カイアは生存のための知恵と技術を磨いていく。彼女の習得した技能は、自然の一部となることで得られた、本能的かつ洗練された知恵の結晶といえる。
「ザリガニの鳴くところ」は、現代社会で失われつつある自然との共生の在り方も問いかけている。カイアの生き方は、自然に耽溺することで得られる自由と、同時にそれがもたらす孤独や危険にも言及している。
カイアが享受する自由は、湿地帯の豊かな自然の中で、彼女は学校教育という社会の枠組みから解放され、自然を教師として生きる術を学んでいく姿として描かれる。鳥の羽根を集め、貝殻を拾い、自然の中で自由に探究心を育んでいく様子は、現代社会では失われつつある子供時代の原風景を思い起こさせる。
しかし、この自由は同時に深い孤独をもたらす。カイアは、社会から隔絶された環境で、人との触れ合いや愛情を得られない孤独な日々を送る。この孤独は、彼女の内面に深い傷を残し、人間関係を築く上での障壁となっていく。
さらに、自然の中での生活は常に危険と隣り合わせである。例えば、突然の嵐や野生動物との遭遇など、文明社会では経験しない危険が日常的に存在する。また、社会から孤立していることで、人間社会の危険にも無防備になる可能性がある。
オリビア・ニューマン監督の繊細な演出は、これらのテーマを巧みに織り交ぜ、観る者に考察を促す。特に最後のワンシーンの見せ方は、鑑賞者にとって「自然」そのものを考える役割として、この上なく機能しているといえるだろう。
この映画は、我々に自然の本来の姿を再認識させ、人間と自然の関係性を見つめ直す機会を与えてくれる。また、自然の中で生きることの美しさと厳しさ、そして人間社会との関わりの重要性を、観る者に深く考えさせる作品となっている。
まとめると、この作品は単なる自然讃歌ではないということだ。それは、自然的であることの美しさと困難さ、自然の持つ慈愛と残酷さ、そして現代の人間が社会から切り離されることの困難さを描き出す、複雑で壮大な物語なのである。「ザリガニの鳴くところ」は、我々に忘れかけていた自然の本質を思い出させ、自然との新たな関係性を模索するよう促している。
サスペンスかと思ったけど…
善悪の捉え方
ノースカロライナ州の湿地の大自然を舞台に家族から見捨てられて孤独に生きてきた少女の半生を恋愛、ミステリー、法廷ドラマを混じえながら描いたストーリー
ストーリーの主題は、他人からのレッテルや差別
ストーリー展開や内容がとてもよく、自分的には、今年観た映画の中でもトップクラス
主人公カイアは、内向的で純粋そうに見えるが、厳しい家庭、生活環境の中で自然と共に逞しく生きてきただけあり、芯の部分はとても強く、時々殻から出るとすごい行動力を発揮する
一方、殺されたチェイスは、カイアを弄ぶ性悪のDV男と捉えられるが、本当にそうだろうか?
街の有力者の息子と恵まれた家庭環境、街では常に友人に取り囲まれ、孤独とは程遠い、カイアとは正反対の環境
しかし、彼がカイアに話している内容から察するに、やたらと干渉し自分の意見を一切聞いてくれない過干渉な親、周りにいるのは自分が街の権力者の子供と言う肩書きに擦り寄ってくるホントの友人とは呼べない連中、更に勝手に親同士に決められた婚約者
彼は、きっとすごい孤独を感じていたのだと想像できる
そこに現れた孤独中でたくましく生きるカイアに、本当に惹かれたんだと思う
彼の本性は、本当に婚約者がいるにもかかわらず、カイアを弄びDVをするような劣悪な人間なんだろうか?
自分は、それ以前のカイアと過ごしていた時の彼が本の彼なのだと思う
その証拠に彼女から貰った貝殻のネックレスは肌身離さず、最後まで身につけていたことからも、本当にカイアのことを愛していたのだと想像できます
彼女の名前を耳にしたい
よく聴くラジオ番組で、池澤夏樹&春菜父娘が絶賛していて「ブックマーク」していた原作。遅読で積読が減らない私は、結局今回も「映像化」されたものから先に鑑賞となりました。
で感想ですが、意外なまでに「潔くシンプル」で「美しさが光る」作品です。
シーンは湿地帯の風景を鳥を追いかけながら進みつつ、主人公カイアのナレーションで始まります。まずはこの自然の美しさに目を惹かれます。
そして、発見される変死体から一気に進む捕物がプロローグとなり、そこから回想と法廷シーンで展開していきます。これが過剰な演出を一切加えず、そして淡々と語りながら進んでいく物語はまるで既視感すら感じるほど「古典」で、そしてこれぞ「映画」な仕上がりに惹き込まれます。
おそらく高評価は、単なる「面白さ」への賛美ではなく、「深く感じ入って、強く印象に残る作品性」を讃えるものであると理解することが出来、そして一映画ファンとして喜びを感じます。
さらに、なにより素晴らしいのがカイアを演じたデイジー・エドガー=ジョーンズ。生き抜くために身に着けてきた能力と強い意志を、言葉数少なくも繊細な表情で演じ、とても自然で印象的で且つ美しい。出来ることならこれからの賞レースで「彼女の名前を耳にしたい」と期待しています。
そして勿論、デイジーの演技を惹き立てるのは幼少期のカイアを演じるジョジョ・レジーナの魅力ある演技も忘れてはいけません。素晴らしい。
それにしてもドラマ『ザ・モーニングショー(19)』でも「アンフェアな社会で生き抜く女性」を演じるリース・ウィザースプーンのプロデュース、納得の一本です。今後も彼女の作品に期待が膨らみます。
蛍の共喰い
評価高いけど、そこまで期待していなかった。予告詐欺感あるし、あんまし面白そうじゃない。そんな感じで劇場に行ったんだけど、これがもうヤバい。想像の何百倍も面白かった!!!最高のサスペンスを目にしてしまったよ。満足感エグイな...。
序盤からもうとんでもない引き込み。
言葉にして説明するのは難しいけれど、とにかく作品についつい没頭してしまう。まさに、小説を読んでいるかのように。ものの5分で、あ、これ面白い映画だと確信。おどろおどろしい音楽と空気感が一気に世界に引き込む。没入度合いで言えば、「すずめの戸締まり」を越して今年1位。
アガサ・クリスティ作品のような味わい。
ストーリー、品格、演出、緊張感などなど、見応えたっぷりの超絶質の高いサスペンスドラマ。ちょっとしたホラー要素もあり、見ていて本当に飽きない。話の構成もパーフェクトと言っていいでしょう。ありがちな見せ方だけど、一瞬たりとも掴んだ観客の心を離さないし、なんならこっちとしては見とれてしまう。
人間関係と自然界の描きが本作の見どころ。
シンプルながらにすごく深く追求されているし、物語との交わらせ方も綺麗なため、作品自体に厚みが出ている。というか、そもそも人物描写もよく出来てる。全世界で大ヒットした小説原作なだけあって、本当に何から何まで抜かりがなくて、セリフの一つ一つに重み、キャラクター一人一人に抱える想いがあって、ここまで面白く見れた。
とある男性の死体が湿地帯で発見され、その湿地帯に住んでいる主人公が容疑者となってしまう物語。本作では、その事件の裁判が現在の物語として展開していくのだけど、これがまたとても面白い。ラストの伏線開始と驚きで、よりその裁判の秀逸さが感じられる。とても味わい深い作品。主人公の成長過程みたいなのがもう少し丁寧に描かれていたら、より良かったんだけど、これでも最高に面白かった。
予想していない面白さに面食らいました。
タイトルとポスターは微妙ですけど、中身は最高級のサスペンス。わざとこんな風にしているのかなと思えるほどに。考察すればするほど面白く、噛みごたえ、見応えのある素晴らしい作品です。秀作だらけの今月ですが、RRRに次ぐ面白さでした!ぜひ、劇場で。(ちなみに劇場は私一人でした。)
宣伝で期待させたわりには、観賞後の感動や満足感はやや低かった
時代設定が少し古いとはいえ、日本人的には、広大な湿地で女の子が一人で生活する設定に首をかしげたくなる。
しかも、一番小さい女の子だけが残され、母親や兄姉たち・父親が一人ずつ家を出ていくことに違和感を感じる。どうして、母親は、一番小さな女の子を連れて行かなかったのか?
しかもこの夫婦は、最初何人もの子どもをもうけ、ある程度の年数、夫婦や家族関係を維持してきたのではないか?それなのにあまりに突然すぎる家族の次々続く家出・離散。
なお、裁判過程は細かく描写され、映画の終わりには驚きの真実がさりげなく差し込まれ、その部分には驚かされる。
しかし、広大な湿原の女の子の、現代版ターザン物語(?)というか、ミニロビンソンクルーソー物語(?)に、二人の青年や親切な雑貨商の夫婦を入れた、奇妙な物語(恋愛物語?、家族や貧困問題の提起物語?、サバイバル物語?、裁判物語?、環境保護物語?、村八分物語?、偏見啓発物語?)に違和感を感じ、映画の世界に没入するのがやや難しかった。
原作を読みたくなる秀作
2021年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位🎉
2019年・2020年アメリカでいちばん売れた本📖´-
鑑賞後、原作を読みたくなった秀作。
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これはまさにネタバレ厳禁⚠️⚠️
なので感想を書きづらい🤣
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湿地帯・・・
ジメジメと薄暗く不気味な
雰囲気が漂うイメージ、
ホラー映画の
舞台になりがちそんな印象…。
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映し出される湿地帯や海、
植物、生物、浜辺の景色
湿地帯の暗いジメッとした
そのイメージを一新してくれた。
暗さより美しさのほうが大きい。
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カイアに手を差し伸べる数少ない人たちの
優しさと、彼女が描く湿地帯に救われる。
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カイア(デイジー・ジョーンズ)
テイト(ティラー・ジョン・スミス)
チェイス(ハリス・ディキソン)が
目の保養にもなる😍
湿地の娘がそこで生きて身に染みた死生観
ハクガンの来るところ
1969年10月30日にノースカロライナの湿地帯にある火の見やぐらの下で見つかった町の人気者チェイスの死を巡り、殺人犯として裁判にかけられた湿地の娘の話。
幼い頃から湿地で1人暮らしをしてきた町の疎まれ者のカイアが犯人との噂が立ち、逮捕され法廷に立つことになっていくけれど、ここまで証拠も証人も示されることは無く、殺人事件である確証すら特になし?赤いニット帽らしきものが証拠みたいなこと言ってたけれど???
そして1953年からの1人になった経緯や町の人との関係性を絡めつつの長い長い恋愛物語って…チェイスは登場した時から上から目線とオラつきがあってこれが人気者ですか?だし。
一応、話しが進んでいくと証拠や証言がもとからあった様な体で示されてサスペンス味は出て来るけれど、裁判の内容が茶番過ぎ。
いくら60年代とはいえ、こんなアホな証拠や供述で起訴出来ちゃうって…動機だけで言ったら容疑者はいっぱいいそうですけどね。
そこからの落とし方も含めて、ストーリーの構成だけでなんとかそれなりには愉しめたけれど、サスペンスって言うにはあまりにも雑で肩透かし、まあ所謂ラブストーリーだった。
王道の法廷劇と、田舎のザリガニ
基本ネタに触れないと評価できないタイプの映画なのでご了承ください↓
なんか見覚えがある気がする語りの構造なんだけど…何の映画か思い出せない。
ひとつの語りが二重の側面を持っているとこよが。なんだっけなー。「ビューティフル・マインド」あたりかな?
とにかく1回で二度美味しいって手法なので基本的にめちゃくちゃ効率がいい…はずなんだけど。
まず、アメリカ映画なのに日常のアシが車じゃなくボートだってのが新鮮。
湿地帯の中に家があるからどこへ行くにも基本はボート。こういう土地って実際あるんでしょうかねえ。
湿地の娘というのは、そんな土地にしか住めない貧しい人って蔑称なんでしょうが、実はそこに豊かな資産があって、主人公だけがそこからら自分の武器を得ていく、つまりは湿地の化身となる。
そのあたり、彼女だけが湿地にとどまり、つらい目に遭いながらもサバイブしていく過程を見ることで自然に理解することができます。
ただ、映画的な作劇としてはもっとできたんではと思う部分もあったりはしました。タイトルの「ザリガニの鳴くところ」が限定的な場所であるかのように示しながら最終的にもっと広い意味だったりするのがどうもスッキリしない感じ。ここはおそらく原作小説では気にならないのかな?
それから最大の問題は、一見「アラバマ物語」的な無実の罪を着せられた弱者がそれを晴らそうとする王道の法廷劇かのように見せながら実は違うところに着地するという構成。
こういう構成だと、ラストに至るまでややパンチの弱い王道になってしまわざるを得ないという問題が出てしまう。
事件の真相そのものが伏せられたままクライマックスを迎えるため、なんかふわっと食い足りない感じがしてしまう。
構造的に避けられないので仕方ないですが、ラストにひとひねりある作品の陥りやすい罠だなーという気持ち。
あと街の人々と比べて圧倒的に世間知らずで純真な主人公の心の軌跡をたどっていくので、オチがわかるまではややストレートすぎると感じる場面もありました。
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