「これは怖さではなく、はじめての感情。 「Carolina」の歌詞が、込み上げる気持ちに纏わる布のように絡んできて、震えた。どうしようもなく。」ザリガニの鳴くところ humさんの映画レビュー(感想・評価)
これは怖さではなく、はじめての感情。 「Carolina」の歌詞が、込み上げる気持ちに纏わる布のように絡んできて、震えた。どうしようもなく。
湿気を帯び躍るようなエネルギーを放つ植物たち。
樹木は壮大な時間をかけ空へ向かい、揺れる葉の隙間からやさしい光を届ける。
水面を揺らす風と鳥たちのざわめき、原生種の花々の香りが漂うなかで虫たちは賑わいを増す。
神々が鎮座する領域で安らかに繋がりゆく命。あるいはひっそりとそして時に残酷に朽ちる刹那。
深く重い摂理は、人間社会の後づけの概念やルールなど太刀打ちしようもない。
1950年代〜ノースカロライナ
巨人が両腕を広げたようなその湿地帯で、カイアは幼少期から家族と別れひとりで生きる。
たくましく純粋でのびのびとした娘に成長しやがて町に住む青年と恋をする。
1人目はカイアの兄の同級生で幼ななじみテイト。2人目は町の有力者の息子チェイス。
そんなある日、湿地で発見された遺体。事故か事件か。
町ではあれよあれよと噂が立ち犯人にされる〝湿地の娘〟カイア。
ついに拘束され陪審員裁判にかけられている法廷での様子と過去の流れを混ぜ込み展開していく。
なぜカイアはひとりになったか。
なぜ殺人容疑者としてそこにいるのか。
事件の謎、真実は…
サスペンス、ミステリーにとどまることはなく多様性をもって最後まで誘い続ける。
そう、語り手は犯人探しだけをさせたいのではなかった。
時代背景からも読み取れる、戦地から戻った軍人のストレス、貧富の差、人種的差別、権力がもたらす歪みなどに、人間の偏見、エゴ、集団意識がつくる無神経な排除の構造など、現代に至っても普遍的にある陰に密かにスポットをあてる。また、あたたかい記憶に与えられる力、数少なくも手を差し伸べようとする存在の尊さにも。
絶望と孤独の先に何があろうとたちむかったカイアの一生を通じて訴えかけてくるのだ。
そして何より、目を見張り息をのむような繊細で豊潤な自然界の描写が不可欠だったことを納得させるのは、生き物として知り尽くした自然界がカイアに授けたものを知ったあとだ。
叙情的な味わいーではいいつくせなく胸に刺さるのはなぜだろう。
確かめたくて翌日にもう一度観た。
そして、これこそは、いつもみたいに書きすぎないレビューを!と思ってだいぶ我慢中😅
〝湿地は光の世界…
〝…点在する本当の沼〟
そうだね、カイア。忘れないよ。
カイアのそばで見守ってくれた人々に私は敬意を込めたい。
その世界観に浸かり本能に触れるなにかを感じにぜひ観にいかれることをおすすめしたい。
稀有な映画だ。
(訂正済み)
コメントいただきましてありがとうございます😊
humさんのコメント、もちろんレビューもですが、何を書かれるか
ワクワクドキドキ💓楽しみです。
自分の意見としては、普段書き過ぎでもなくスルスルと文字を追っていきます。もっと書いていただいても良かったかな?と。本作。
いわゆる、感性が違う、ということでしょうか。また読みも深くて
いらっしゃいます。💕
偉そうに失礼いたしました。
おはよう御座います。humさんのレビュー読みました。そして何より…の部分が非常に好きです。レビュー書き過ぎてしまう嫌いの文面にも共感します。映画が面白過ぎて語り尽くせない思いが伝わる文面楽しく読ませていただきました。これからも詩的で楽しいレビューを期待してます。
共感とコメントありがとうございました。
私もカイアを見守ってくれた人々の支えに胸打たれました。
どんなに疎外されようとも、決してあなたは一人じゃないと感じさせてくれました。
今晩は。
今作は、原作がとてつもなく面白いのですが、私は原作の映画化作品に対しては、原作と比較する事はしないので、大変面白く鑑賞しました。
【でね。鑑賞後に思ったのは、自分の奥さんが秘密を抱えたまま逝ってしまう事の是非でした。女性って強くて怖いなあ、と思った映画でもありました。オイラだったら、奥さんに秘密を隠せないし、隠しても見破られるし・・。不惑のオジサンの密やかなる妻に対する疑念が心の中で生まれた作品でした。】
モルダー捜査官さん
コメントありがとうございました。
レビューされてないようでしたのでこちらに返信いたします。
〝生きる証を環境下の中で身に付けて行った自己確立〟…の捉え方、おもしろいですね。そして、象徴はカマキリのタペストリー。なるほど。
自然の神秘や壮大な美しさに運命を感じるような音楽がマッチして、主人公の本能的な逞しさや感覚の描写がよみがえります。心の奥底にずしりと染み込む作品でした。
初見にて失礼します。
ミステリー作品との理解でアマプラで視聴です
主人公が生きる証を自分の環境下の中で身に付けて行った自己確立の作品と思います
家の中のカマキリのタペストリーが象徴とされていると思われ、作者の意図の表れです
久々の良作に出会いました
素晴らしい映画でした。私はその題名に影響されて、興味がありながらも映画館では見ない選択をしました。・・・後悔しました。
カイヤさんは自然の摂理に生きたんですよね。
「カイヤのそばで見守ってくれた人々に私は敬意を込めたい」私もそう思いました。彼女は一人ではなかった。
コメントありがとうございます。
“妖精”…たしかにそんな風に捉えていたかもしれません。湿地の住人、人とのしがらみを断つ事で得られたもの維持できたものが滲み出ていたような気がしてます。
書きすぎるレビューも読み応えがあり好きです!
お返事ありがとうございます。本当は私も映画のレビューを書くなら最低二回以上は見たいのですが、経済的時間的制約があり、一回の鑑賞で拙いレビューを書かざるを得ません(笑)。