劇場公開日 2023年3月24日

「大人どもよ、大志を抱け!」雑魚どもよ、大志を抱け! ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大人どもよ、大志を抱け!

2023年3月29日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

単純

大人になってからはほとんどなくなったが、子供のころは人づきあいをするうえで、お互いの家を訪問するということが友人として人間関係を育むために重要であった。相手の家族構成を知り、教育環境や経済事情を窺う、そうすると自ずと相手に対する想像力が喚起され、相手に対する気遣いや思いやりの心が生まれる。そのような交際を積み重ねていくことによって、厚い友情が芽生え、親友と呼べるような人間関係が構築されていく。
この映画で描かれている1988年は自分自身の青春時代とほぼ重なる。携帯もスマホもない昭和の終わり、子どもたちはお互いの家を訪問しあい仲間を連れ立って遊びに繰り出す時代であった。その様子を雰囲気が途切れない長回しで撮影しているところはいい感じの仕上がりになっていて没入できた。それぞれの子供たちの家庭には、教育熱心な母親、新興宗教にはまる母親、グレている姉、ヤクザの父親がいて、様々な問題を抱えているが、子供たちはお互いを特別視することはなく、劣等感を持つ弱い者同士として固い絆で連帯している。困難にぶつかった時はみなで力を合わせて解決し、着実に成長を重ねていく。このような青春群像劇は同時代を生きた自分自身の経験の中にもあったでのではないか。
この映画は逃げるという行為がテーマになっているようだ。最初はいろいろな悪戯をして逃げるというシーンが頻出するが、後半になるにつれ、逃げるべきか、逃げざるべきかの決断を迫られるというシーンへと行き着く。もう充分な大人となり、物事から逃げることが難しくなっている今、この子供たちからもらった勇気を発揮する時が来ているのかもしれない。

ミカエル