劇場公開日 2023年2月10日

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「ただただ「普通」の映画だった。」エゴイスト わたろうさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ただただ「普通」の映画だった。

2023年2月23日
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普通の人同士が、普通の恋愛をする、ただただ「普通」の映画だった。

パーソナルトレーナーとその利用者が仕事を通じて出会い、互いに魅力的だなと思ったからそれが恋愛になり、相手の仕事のことで問題があったり別れの危機もあったが乗り越えて愛になる。なんてこともない、普通の恋愛の話だと思う。
そうやって親密になったあとで、もし結婚していれば、稼いでいるほうが多く出して生活費を支援(折半)することも普通だし、お金を出し合って車を買うことも、きっと普通だ。
強いて言えばその相手を早くに突然亡くしたことは普通ではないかもしれないが、それも誰にでも起こり得る可能性があることだろう。
もしも結婚した相手が亡くなれば、体の調子が良くない義理の親の面倒を見たいと思うのは普通のことだし、一緒に住みたいと考えるのも普通のことだ。

この愛し合った2人もその親との関係も、異性同士だったらもっと普通のことだと思えたのだと思う。
そう思えない理由は、今の日本ではこの2人が婚姻関係を結ぶことができず、相手の親の病院でも「家族」「親戚」とは名乗れない「他人」になってしまうからではないだろうか。彼らがゲイであるからという理由だけで。

この映画を見ている間ずっと、「この2人が異性同士だったらどうなっていたのだろうか」と考えてしまっていた。それが失礼なことであるとわかっていながらも、もし異性出会ったら何も不自然でも不自由でもなかったし、「普通」に生きていけたのだと思ってしまった。
この2人のような物語が、ただの「普通」の物語にいつかなったらいいと、今は思っている。

わたろう