劇場公開日 2023年1月20日

  • 予告編を見る

「エロ雑誌を作る事を生業とする人達を描いて、「仕事・会社・働くという事」と「人間には何故エロが必要か」とを両方描き出した限りなく傑作に近い映画だ。」グッドバイ、バッドマガジンズ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5エロ雑誌を作る事を生業とする人達を描いて、「仕事・会社・働くという事」と「人間には何故エロが必要か」とを両方描き出した限りなく傑作に近い映画だ。

2023年1月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

①今日は映画を四編観たが、これが一番面白い“映画”だった。
現時点では今年観た中で(まだ早いか?)NO.1かも?
②「エロ本を作る業界を舞台にした映画を作る」という、有りそうでなかった(私の知る限り)盲点を付いた着想と企画とに先ずは感心。
③私の学生時代には未だコンビニは殆どなく“ビニ本”にお世話になった世代。街角には自動販売機と同じくらい自然に“ビニ本”販売機が置いてありました。そう言えばいつの間にか“ビニ本”て無くなっていたなぁ。
④冒頭、(余り流行って無さそうな)コンビニでのジューン・ラブジョイさんの日本語と英語混じりのリポートによって、この映画の背景をザックリと紹介するところが楽しい。掴みはバッチリという感じ。
この場面がラスト近く映画の中の風景として出てくる構成もなかなか宜しい。
⑤題材が題材なだけにコメディ路線で来るかと思いきや、シリアスというほど深刻ではないが真面目な話の進行に初めはやや戸惑う。
然し、最初はシュレッダー係だったヒロインが、数ヵ月後には新参の男の同僚に先輩顔で教えを垂れるところは「あるある」感満載だし、何せ下ネタ大好き人間なので続く怒涛のエロ標語、四字熟語(『和同開チン』笑)の奔流には心を鷲掴みにされてしまった。
昔は職場も下ネタオーライで先輩や後輩と下ネタの応酬をしながらでも仕事出来てたのにな。
今ではセクハラとかで職場で下ネタを話せないようになってしまったのが寂しい(と云いつつ女性社員やそういうのに目くじらを立てる人がいない時にはしてますが)(二年前に定年になったが雇用延長で今でも現役で仕事してますんで)。
色んなことに忖度するのは悪いこととは言わないが、最近の社会にはだんだん寛容さが無くなって来ているように思う(老害ですかね)。
⑥老害ついでに言うと、私が働き盛りの頃は「24時間闘えますか」「残業している=仕事をしている(と思われる)」時代でしたから、会社に泊まり込む或いは会社の裏のカプセルホテルに泊まる(当然エロビデオも観る)のが日常茶飯事だったので、映画の中の残業シーンもブラック企業という印象よりも“俺も昔はああだったよなぁ”感が強かった。
(今はわが社も超ホワイト企業になってしまって残業してると怒られますが)
⑦食品メーカーに勤めているし、営業経験は殆ど無いけれども、営業と編集の関係は、営業と統括との関係に似ているように思えて、何故か共感。
⑧需要があるから供給するわけで、需要自体(食欲・性欲とか)は変わらないけれど、社会の変化や技術の進歩で供給側のソフトが変わっていくのは仕方のないこと。
でも、映像や写真よりもマンガや文章の方がそそられることもあるんですけどね。
⑨あと、モザイクを掛けるのをミスったお詫びとして編集局内でAVを撮影されて、そのお疲れ会みたいな時にヒロインがキレるシーンも、“私たちは「そそる楽しみを与えるもの」「ナニをするのをそそるもの」「ナニをしたい時に近くにあって欲しいもの」を提供するのが仕事であって、ナニをするのが仕事ではない(男たちも好きでしてた訳ではないだろうが)”、と怒るのも「なんとのう分かるな」という感じ。
⑩冒頭に撮される「雲」に心惹かれた。ラスト、もう一度同じ「雲」が出てきたのも嬉しかったね。

もーさん