レジェンド&バタフライのレビュー・感想・評価
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こういう信長も良いと思う
東映70周年。その伝統を知る人にとっては、破天荒な信長と濃姫の描き方に違和感を持つ人もいるかもしれないけど、時代劇を知らない、歴史も詳しく知らない人でも十二分に楽しめる作品。私は良かったと思う。
フィクションとして楽しみましょう
固いこと言わずにフィクションとして見れば、まあまあ良い話、まずまずの出来栄えです。信長を投げ飛ばしたり、敦盛で槍をふるう綾瀬さんがカッコイイです。槍をこれほどカッコよく振るえる女優さんがいようか。それに比べると信長のカッコよさは控えめに抑えています。それもまたよい。
この映画の中では信長は変人-魔人-人間と変貌していきます。濃姫との心情・純愛を描く上でのフィクションとしては悪くはないです。二人で船に乗るシーンは夢に過ぎないんですが、こういう事が起きても良いかな、むしろ起きてほしいなと感じました。私は楽しめましたが、人によっては低評価になってしまう作品かもしれないです。
うつけとマムシの娘、愛と夢の果てに、天下(大ヒット)を勝ち取れ
木村拓哉が織田信長を演じる。
妻・濃姫に綾瀬はるか。
監督は『るろうに剣心』の大友啓史。脚本は現NHK大河ドラマ『どうする家康』の古沢良太。
製作費は20億円以上。
東映創立70周年記念作品。
ぎふ信長まつりも大いに賑わした、話題に事欠かない話題超大作。
ぎふ信長まつりからの盛り上げ方はかなり気合いの入ったもの。
話題や莫大な製作費を掛けた事もあるが、昨年『ONE PIECE FILM RED』『THE FIRST SLAM DUNK』などの大ヒットで年間売り上げが過去最高を記録し、絶好調続く東映。こんなに勢い付く事はそうそうない。
そのタイミングで、節目の年。威信を懸けた超大作。
ビッグネームのキャスト/スタッフ、この題材、そしてやはり話題や20億円という製作費…。
ぜ・っ・た・い・!に、コケられない。
さて、その感想は…。
往年の創立記念作品。オールスター・ムービー。大作時代劇。
確かにそれらと比べたら、THE時代劇!…な風格さは薄い。
キャストも主演二人は推し出されているが、周りは個性的であるもののあっち見てもこっち見てものオールスター・ムービーってほどではなく、アンサンブルには乏しい。
おそらく歴史好きの方には物足りない。すでに色々言われてるキムタクの演技。…
話題だけ提供した凡作か…? 大コケ必至の失敗作か…? それ見ろの駄作か…?
そう決め付けるのは、ちょっ待てよ!
なかなかヒットさせ難いジャンルの時代劇。
重厚な作りで実力あるベテラン名優やスタッフで固めたら、それはクオリティーの高い時代劇になったろう。
しかし、ヒットしたか…? 時代劇好きや映画ファンは満足するかもしれないが、一般客や若者は…。
巨額の予算が掛けられた本作。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』じゃないけど、ヒットさせなければならない。
その為には多角的なアプローチも必要。男女問わず、多くの世代に受け入れられる…つまりは、ヒットに結び付ける。
若者層や時代劇に馴染み無い人たちの為に現代的なアプローチを取り入れつつ、時代劇の魅力を損なわず。
エンターテイメント色の強い作り。製作側が目指したのもここだろう。
その点については充分及第点。
私もそれほど歴史に詳しい訳ではないが、そんな私でも見易く、分かり易く。
見応えあり、面白かったと思う。
日本の歴史上最も有名な戦国武将、織田信長。
“泣かぬなら 殺してしまえ ほととぎす”の言い表し通り、恐ろしい。“魔王”とまで。
その一方カリスマ性があり、海外の文化をいち早く取り入れた先見の明。
人は英雄的な面に憧れ、ダークな面にも何故か惹かれる。
その両極端を合わせ持ち、あまりにも有名な最期まで、信長は日本の歴史上稀有な人物だと言えよう。
濃姫は詳しい素性や生涯など、今も尚謎に包まれているという。
一体、どんな人物だったのか…? 夫・信長との関係は…?
ある程度史実(主に信長の生涯)にそりつつ、謎の部分を大胆想像膨らませたからこそ、縛られず自由に物語=信長と濃姫のドラマを構築出来た。
政略結婚。
当初はお互い、口を開けば喧嘩ばかり。意地の張り合い。
初夜言い争いになり、信長は濃姫にねじ伏せられる。狩りも信長は失敗続きで、濃姫は次々仕留める。
おなごのくせに、生意気な奴!
そんな時…
狩りの最中、崖から落ちそうになった信長。女に助けられるくらいなら、死んだ方がマシじゃ!…なんて言いつつ、助けられる。この時濃姫は滅多に見れない海を見、異国へ思い馳せる。信長の海外視野はこれがきっかけ?…なフィクション・エピソード。
美濃の内戦により、濃姫の父・道三が死す。自害しようとする濃姫を、信長は押し留める。お主はわしの妻じゃ!…とは言ったが、内心は命を粗末にするなとの意味もあったろう。いつか必ず、わしがお父上の仇を取り、美濃を取り返す。
少しずつ少しずつ、距離が縮まっていく。決定的となったのは…
お忍びで民の村をデート。金平糖を盗まれ追い掛け、ゴロツキ連中に狙われる。やむなく反撃し、難を逃れる二人。濃姫は初めて人を殺めた。動揺する濃姫を気遣う信長。それまでの相入れない関係が消え失せたかのように、二人は初めて…。
信長の生涯や戦国の有名な戦を描くというより、信長と濃姫の関係にフューチャー。
アレそのものではないか。邦画でもよくあるド定番。
最初はいがみ合っていたが、徐々に打ち解け、惹かれ合い…。
ドSイケメン王子=ドS殿と元気ハツラツ美少女=ツンデレ姫。ユーモアも交え、昨今のラブコメ設定を取り入れた戦国ラブストーリー。
この“ラブストーリーは突然に”から円熟の夫婦愛へと変わっていく様もじっくりと。
歴戦の勇将となっていく信長。が、一人では不可能だった。
桶狭間の戦い。圧倒的劣勢で戦略もままならぬ時、策を出したのは濃姫。信長は戦に勝利。濃姫は策を出したのは夫であって…と、他言無用。夫を立てる。どんな偉人やレジェンドにも、陰の支えや内助の功あり。“信長を。プロデュース”。
認め合い、信頼し合い、切磋琢磨していきながら。
名を馳せる猛将となった信長。女子供まで皆殺しにし、“魔王”と恐れられる。人の心を捨てた夫といつしか気持ちにズレが…。流産も重なり、もう傍にはおれぬと、濃姫は離縁を乞う。
何年か過ぎて。病に伏した濃姫を、信長は再び受け入れる。相変わらず強情張る二人だが、その言い合いはかつてが戻ったよう。いや、様々な障害を乗り越えやっと安住を手に入れた感慨深さすらあった。
病を治し、お主が行きたがっていた異国へ行こう。それまでに異国の楽器を奏でられるようになっとれ。では、行ってくる。
そう言い残し、信長が赴いたのは…。
見る側はこれが今生の別れだと分かっているからこそ…。
そんな二人を、ビッグスター二人が熱演。
すでに色々言われているキムタク信長。TVドラマと同じ。結局キムタク。キムタクのまんま。キムタクはキムタク。…
彼一人が変わらぬイメージや演技のままなのだろうか。いや、トム・クルーズはどの作品だってトム・クルーズだ。ジャッキーはジャッキー、ドウェインはドウェイン、ステイサムはステイサム。高倉健は高倉健だし、勝新は勝新だし、三船敏郎も三船敏郎。渥美清は寅さんのイメージまんま。
これって、その役者にとってマイナスなのだろうか…? いや、それがその役者の魅力だ。
役者は二つのタイプに分かれると思う。演技巧者と、スター。
スターが自分のイメージやスタイルを固持しつつ、スターであり続ける事は容易ではない。
それが出来るから、スターなのだ。
では、演技力は?…と問われるが、本作のキムタクの演技は決して凡庸ではない。確かに序盤はいつものキムタク丸出しだが、うつけ者から魔王へ。魔王から人間信長へ。充分体現していたと思う。あの誰もが知る最期、炎に包まれた本能寺の中で、凄みとオーラと存在感をたっぷりに。
それでもあれこれ言う人たちは今後もたくさん出てくるだろう。一緒に観る予定だった私の弟なんぞ、予告編のキムタクの現代っぽい演技が好かんと言い、結局劇場鑑賞スルー。
ならば、誰が演じれば良かったのだろう? 時代劇が得意なベテラン俳優か? 歌舞伎とか日本伝統芸能からの演者か?
もう一度言う。それでヒットに至ったか?
本作は何が何でもヒットさせなければならない。全世代へアピール出来る集客力のあるスターが必須。キャリアがほとんど落ち込みもせずスターとしてあり続けるキムタクとカリスマ性ある信長は、似てる似てない/イメージに合う合わないよりスケールの大きさでは他に人選はなかなか居ない。
それにキムタクは信長初心者じゃない。その昔TVドラマで演じた事あり、二度目。以前とは違う信長像を体現。
キムタクも信長が二度目なら、綾瀬はるかも濃姫は二度目。(『戦国自衛隊1549』)
先述の通り素性や生涯は謎に包まれているが、あの信長の妻に収まるのだから、こちらも相当な人物だったのであろう。“マムシの娘”の異名。
信長に臆せず堂々と物言い、時には腕力でもねじ伏せる。そして妻として夫を支え、夫婦として支え合う。
綾瀬はるかの凛とした美しさ、芯の強さ、キレのあるアクションや演技力が光る。
キムタクが堂々と構え、綾瀬はるかが巧みに表す。何だか信長と濃姫の関係性そのものを見ているようだった。
助演陣はそれほど目立った見せ場は乏しかったが、サポート立ち位置。
控える伊藤英明。
濃姫の侍女に中谷美紀。以前キムタクがTVドラマで信長を演じた時、濃姫役だったようで。
音尾琢真の秀吉はなかなかハマっていた。
異彩を放ったのは、光秀役の水沢氷魚。魔王信長に心酔し、人間信長に不審を抱く。
にしても、斎藤工が家康とは気付かなかった!
ほぼほぼ信長と濃姫のラブストーリーやドラマがメインで、見せ場になるようなアクション・シーンはクライマックスの本能寺の変くらい。時代劇と言ったらの合戦を期待すると物足りないだろう。
桶狭間の戦いも台詞で勝利を告げ、序盤や中盤にも見せ場になるアクション・シーンを入れても良かったのでは…? せっかくの大作時代劇なのに、ちと勿体ない。
ラストの展開は思わず意表を付く。全く新しい信長像を描くからと言って、まさかの○○…? が、この展開は自ずと察し付く。
結構唐突にも終わる。この後が見たかった…なんて声も上がるかもしれないが、だらだら描いたら別の作品になってしまう。信長の人生はあそこで終わったのだ。
見果て、叶わなかった夢の悲劇を謳う。
エンターテイメントに徹し、往年の東映時代劇へ捧げた醍醐味も兼ねて。『るろうに剣心』で時代劇に新風を吹き込んだ大友監督の演出。
新しい信長像。濃姫との関係。史実にそりつつ、大胆解釈やフィクションも交えて。巧みな脚本で知られる古沢良太の手腕。
オープン・セットやロケ、美術や衣装や映像などスタッフの名仕事。
佐藤直紀の音楽もスケール豊か。
160分強を魅せ切る。
百点満点の名作…までとは行かず。
が、スターの魅力、現代的な感覚や要素、しっかり時代劇の醍醐味や見応えを堪能出来る一大エンターテイメント。
キムタクの映画と言うと、見もせず難癖付ける輩がいる。見てから言え!
見たら見たであーだこーだも言われる。そのくせ多くの人が観、ヒットする。
気に入らないなら無視すりゃいいし、見なければいいし、何か矛盾を感じるが、やっぱりは気になる。
百聞は一見に如かず。一見の価値はあり。
劇場へ出陣じゃあ!
織田信長とキムタクが融合
だいたいキムタクが出る映画やドラマって
キムタクが強く出過ぎて
結局
キムタクだったになるんですが
今回は見事に
キムタクの織田信長役がハマってました
織田信長の亡くなる歳とキムタクの歳がちょうど50歳だったことや
キムタク本人が生まれ変わりなくらい気合いが入っていたとのことでしたが
戦国時代にキムタクがいたのでは?くらいピッタリでした
話的には
歴史好きや織田信長好きには納豆がいかない内容だったと思いますが
この角度での話はありだと感じました
まさかのラ・ラ・ランドオチにびっくりしましたが
余談ですが
私もちょうどキムタクと同じ50歳です
織田信長やキムタクのようなレジェンドには到底なれませんが
まだまだバリバリ頑張ろうと心に誓いました
信長の演技が......
木村さんの演技は要所要所ではよかったが、それでも「信長」というよりも「木村さん」って感じがした。顕著に現れるのは皮肉にも綾瀬さんと演技している時。綾瀬さんの演技がうまいため、木村さんの演技力不足が目立ってしまっていた。
本能寺の変の明智光秀の名セリフもチープなものに感じた。なんだよ、そんな理由で謀反起こすか?・・・信長が大将で、天下統一が目の前だったのに。これには、本当にしらけた。
とはいえ、超大作であることに変りなく、これまでの戦国映画とは全く違うテイストで物語は描かれていて、新しい戦国映画史を切り開く斬新なストーリー展開であったことは非常に満足している。
冒頭、木村さんは演技力不足だと書いているが、それでもスター性は天下一品であり、しらけた部分も少々あったが総じて言えば記憶に残った良い映画だと思った。
※本編が終わりエンドロールが流れたからと言って、スマホ見るのやめてください。光が邪魔です。マナー違反です。エンドロールも本編の一部です。館内が明るくなるまで、スマホ見ないでください。
よろしくお願いします。
割と王道な作り方
レジェンドは信長のことで、バタフライは胡蝶とも呼ばれていたと言われる濃姫のお話。濃姫って、いつ亡くなったのか、子供がいたのか(少なくとも男の子はいない)いなかったか、よくわかっていないので、どうとでも描けるので物語にしやすいですね。
話は信長中心でした。印象として、濃姫のキャラというのは薄く、信長を二面で捉えると信長と濃姫に分かれる、という描き方かな、と思いました。濃姫は、若い頃の信長にとっては、冷静に状況判断するクールな一面、青年期には若い頃にあったお茶目な面、壮年期には人間らしい面、どれも実際には信長の一面ですね。物語のキャラ作りでは王道の手法か、と。
ラプソディー 魔王と帰蝶
川べりの草たちを揺らす不規則な風
耳元をかすめたリズミカルな馬の蹄の低音が後ろへ後ろへと流れ余韻をうむ
黄色や紅に染まる葉は舞い、天地を包み別世界をつくり丸く一体化し訴えかける
その美しさは儚さを併せ持ち魅せ方を知り尽くす
澄み渡る夜更けにみえる過去と今を貫く永い時間の圧倒的な尊さ
敬意を呼び覚まされこの魂を確かめる
登場人物が自然とともにある景色が躍動する美しさを繊細に映し出す
それらは自分のなかの記憶を目覚めさせ寄り集まりなにかを生む
間もなくひとつひとつの色味や質感を表すための拘りと裏付けされた計算、見立て、それを全うできる知識やセンスや技術の存在に深く深く感動する
そしてそこに欠かせないエネルギーとなるのがその時代に生きた命をみせる役者の方々の存在だ
若さが弾けるような明るい自信とやんちゃでわがままな気質にみえる16歳の信長
彼が迎えた正室は瑞々しく麗しくも気丈な内面をその目に宿らす濃姫15歳
劇中に「新しい夫」とあったが、濃姫このとき3度目の結婚だったと知った
武士の娘が親の出世や政治に利用されるなんて…時代というか、親子関係が気の毒、選べない人生かわいそうすぎると、憐れんでいればそれだけでなく…
経験がものを言うのか?持ち前の性格か?
確かに信長よりも大人びて、冷静沈着、歯に衣着せぬ物言いと夫からの指図を嫌えばそれをうやむやにしないところに濃姫の芯をみる
弱い酒に咽せた信長を〝わっぱ〟と貶し、力も強く技も負けていないところをのっけから見せつける様は相当に筋金入りの勝ち気さだ
しかも伊達に強気なわけじゃない
弓矢も狩猟も乗馬も武道にも長けた濃姫に押され気味の信長が後々にまわりから怖れられることになるイメージとは違うコミカルな一面を見せる冒頭である
時代劇の嫁入りにありがちなヨヨヨとした雰囲気もない切り口か!では、2人の行く末、そこに至るまではおどろおどろしい雰囲気だけではないかも?と新解釈の妙を期待した私は、歴史に疎いため、流れを逃さぬようにと堅く構えていたが、しばしリラックスして信長の所作をくすっと笑う
…が、束の間
知らぬ間にピッチが変わったかのように、不意打ちの戦法をかけられた観客は激動の戦国へともに流されていくのだ
やはり止めることはできなかった、かの信長節
だが、戦の様々な困難にあたり信長は悩まないわけではなかった
劣勢になれば焦りで怒り家臣を罵声し統率しようとする無茶が災いし空回りする
そんな時、濃姫と信長が敵対する気持ちを乗り越えて、ようやく協力し信頼を結ぶと、信長に精神的な力がこんこんと湧き凄みをつけ出す
信長の武将としての成長には、濃姫のことば遣いの知恵と人の心を読む洞察力とバランス力が陰なる支えとして必要だったのだと理解した
これが器用多才な濃姫のとっておきの才能だったといえよう
後に「我、人にあらず」と言いのけるほどになっていく信長に漲る自信や威勢は圧を増し、飛び出すばかりのマグマのごとく溜まっていく
しかしながら、かかげた理想の自分像に邁進するあまり、周りを見ることを疎かにし家臣の忠告など寄せつけもせず度を超えた魔王と化していく信長
もはや彼は、邪魔なものは排除するその危険な思考の先に、望む豊かな未来などないこともわからない狂人になってしまった
「人のすることにござりましょうか」
家臣どころか、ついには妻のこころさえ離し離縁される顛末へ
濃姫との出会いが一度は「聞く耳持たず」だった信長をいい方向へ向かわせたのは事実だが成功をおさめ慢心を重ね、さらなる地位を手にしようと駆けあがる執念と引き下がれない強固なプライドで、まさに聞く耳を〝捨ててしまった〟のだ
誰も寄り付けぬほどに〝壊れた信長〟は、自ら高く厚くこしらえた壁のむこうで孤独の極みを背負う晩年への運命を辿りはじめる
こうして、戦の無事をと願ってくれた濃姫からの大切なお守りは光秀の裏切りに燃え落ちる本能寺の地に転がり、自身は炎に包まれる奥の間へ進み自決の血しぶきをあげ幕をおろす
ふたりがみた儚い夢の先を朦朧とする意識のうちにみた信長
そこには濃姫への変わらぬ深い愛があった
もしかするとそれは壮絶な人生の、ある種のハッピーエンドだったとよべるのかもしれない
同じ頃、重い病の床に居りつつもなにかを察したように力を振り絞り琵琶を手にして静かに意識遠のく濃姫(のこされた記録では没年はこれよりかなり後)
彼女もまた一度は愛した信長との約束を彼の命が今終わろうするそのときにそうして果たそうとした
あの離縁も濃姫ならではの信長に対する最後の愛の鞭か
孤独なレジェンド・信長とそれを支え続けたバタフライ・帰蝶とも呼ばれた濃姫だけにわかる痛いほどの思いが沁みてくる終盤である
そして、愛した濃姫が、なぜ異国に惹かれるかわかったと語ったときのあの表情が、天下を狙い魔王という鎧のなかに封印した信長の〝ひとの心〟のかけらを震わせからこそのラストシーンだったのだと私は信じている
政略結婚で始まる信長と濃姫の出会いから別れ、そして世を去る間際までの心のありようを豊かな想像力で表現し魅せる本作は、さながら戦国の世に翻弄された儚くせつない愛の狂詩曲(ラプソディー)であった
忘れられない孤高の男の肩にとまっていた1匹の美しい蝶は運命の絆が離れてもまた寄り添うことを暗示した
ならば…
二人はちがう姿で生まれ変わりこの世の何処かでまた出会っている気がしてならない
修正済み
なぜか東映が撮ったNHK大河「ドラマ」
織田信長
室町時代以後の幕府が
権力を失っていた戦国~安土桃山時代を
代表する戦国大名
武家文化を創り出すきっかけを生みながら
柔軟な政策もあり思想から現代にも通ずる
イノベーターとしての評価も高い反面
目的達成のためなら非道もいとわず
「第六天魔王(だいろくてんまおう)」
の異名も知られている
その半生は江戸時代に実際に織田家に
仕えていた人物による編纂
「信長公記」によって広く知られる
事となった
本作はそんな信長の側面にも触れながら
濃姫との馴れ初めから不思議な縁で
繋がった愛をフィクショナルに
映した作品である
感想としては
「柳生一族の陰謀」よろしく
東映の時代劇映画ですから
考証的なものよりエンタメ性
重視なのはわかっていますが
長い尺に対し信長の一生の
切り取り方が微妙で
ラブストーリー的な
ありふれた仕立てで
あたかもドラマ的で
天井を感じるスケール感
予算はそれなりにかかって
いるので体裁的には
東映が作ったNHK大河
といった感じでした
これは前から思ってましたが
木村拓哉と綾瀬はるかの
役者としてのポテンシャルが
やっぱりドラマ演技止まりなのかな
という印象も受けてしまいます
粗野な信長に対し
武運に長けた帰蝶(濃姫)が
いがみ合いながらも次第に
惹かれあい・・といった
展開なのですが
時代の流れと関係性の変化の
展開があまり噛み合っておらず
移入は出来ませんでした
キムタクも綾瀬はるかも
くどいくらい顔芸を見せますが
結局のところ織田信長ならではの
父の葬儀で焼香をぶちまけるとか
是非に及ばずといったセリフなど
ありきたりなものに頼らざるを
得なくなっている部分は
苦しい限り
キムタクらという条件を抜きに
作り手に信長を扱おうという感じが
あまり感じられませんでした
そのへんにドラマの企画以上の
情熱を感じなかったところ
予算がかかっているだけあって
画面のインフォメーションは多い
のですが緩慢な編集や
あまり効果的でないタメのせいで
メッセージ性が乏しかったです
お話的には未熟だった信長が
優れた濃姫に素質を引き出されていく
といった形にしたかったのでしょうが
斎藤家と織田家の同盟による
といった理由以外で
いまいちなんで一緒にいるのか
よくわからない感じ
それでいてあたかも初対面時は
信長が一目ぼれしたかのような描写
ちぐはぐなのです
脇役が頑張ってて何とか
観れた感じです
宮沢氷魚の茶髪の明智光秀は
なかなか良かったと思いますし
音尾琢真の秀吉も
なかなかハマってました
まあ色々ありますが
何より思ったのは自分は
岐阜県民なのもあり先日の
信長まつりでキムタクが
やってきての盛り上がり
沿道にはあふれんばかりの人
これなら初日も入るだろうと
思ったらまぁガラガラで驚き
まぁ2年延期した事で
大河とかぶってしまった事も
影響してるのかわかりませんが
正月に上映すれば多少違ったんじゃ
ないのと思ってしまいました
このキャスティングで
興収振るわないとなるとちょっと
色々今後が心配になってしまう
映画でしたね
いろいろあっという間!
約3時近くあっという間に終わりました!
映画ということで展開はかなり早め、、
歴史の流れを知ってないと少し大変かも💦
少し笑えるシーンがありよかったです😊
あと重要な戦は戦闘シーンなくすぎます笑
この映画は戦と戦の合間の話という感じです
キムタクと綾瀬さんの演技は凄かったです!
綾瀬さんの濃姫はピッタリでした
そしてアクションもやっぱり凄い、、
クライマックスは途中から夢になってるとは思わなかった😳
信長が死ぬタイミングで濃姫も亡くなる、、
なんとも言えない気持ちになった😔
個人的にはドラマでじっくりと作って欲しかったと思いました、、
そしたらいいドラマになりそうな気がしてます笑
最高の映画をありがとうございました☺️
激しい初夜のシーンが最高
東映70周年ということで製作陣もキャストもかなり気合いの入った豪華な布陣で楽しめました。
信長と濃姫のふたりのラブストーリーに焦点を絞ったエンタメに徹した作りはかなり好き嫌いは別れると思いますが、僕はこれはこれでありと思いました。激しい初夜のシーンは最高に面白かった。
重厚な歴史映画として観にいくと期待を裏切られると思うのでご注意を。
綾瀬はるかさんの映画はたくさん観ているけれどハマり役で今作が一番くらいに良かった(海街diaryも良かったけど)。
【以下、少しネタバレ注意】
・ラストシーンは幻想ではなくあのままハッピーエンドに終わってほしかった。それくらい大胆にエンタメに振り切ったほうが潔いかも。
なんかもったいない
信長も遺体が発見されてないし、濃姫もはっきりしてないのだから、娯楽映画なのだからいかようにも解釈してもいいと思う。
最後の方。信長が濃姫と異国へ向かい、大陸が見えたシーンで終わってくれたほうがロマンがあってよかったかなと。
わざわざ、現実に戻して信長の自害、濃姫の病死させたシーンは蛇足かなあ。
綾瀬はるかの圧倒的な存在感
戦国武将・織田信長と正室・濃姫の夫婦愛を描いた異色のラブストーリー。天下布武を掲げて獅子奮迅の活躍を見せる信長と彼を影で支える濃姫という物語だと予想したが、ラブストーリーとは意外中の意外だった。豪華俳優陣が出演しているので、正統派の作品を観たかった。しかし、本作は160分間超の上映時間を感じさせない、なかなかの作品である。
本作の主人公は織田信長(木村拓哉)と濃姫(綾瀬はるか)。二人は尾張と美濃の和睦のため政略結婚をする。当初、二人は反目していた。濃姫は信長の寝首を掻こうとしていた。しかし、二人で暮らし色々な出来事を共有することで、二人の心は打ち解け相手を想うようになっていく。桶狭間の戦いで濃姫の軍師の様な知略アドバイスで勝利すると、信長は破竹の勢いで勝ち続けていく。しかし、次第に信長は狂気の世界に惹き込まれていく・・・。
本作は、信長ではなく濃姫役の綾瀬はるかの存在感が圧倒的。眼光の鋭さ、凄味のある武芸、常に強気で攻めの気持ち。女性ではあるが、もののふという言葉が相応しい。更に、異国への想い、夢を語る眼差しが若々しい。眩しい。人間としてのスケールの大きさを感じる。
対する信長役の木村拓哉は、いつもながらのキムタクのまま。信念も曖昧。色々な信長像があっても構わない。キャラを変え難いのは人気俳優の宿命ではあるが、最低限の役作りは必要だろう。
対照的に、終盤に登場する徳川家康を演じる斎藤工は、体型も変えた入魂の役作りに挑んでいる。エンドクレジットで斎藤工の名前が出るまで、家康役が誰なのか全く分からなかった。他の芸達者な俳優陣も役柄に成りきって本作を支えている。
終盤、狂気の信長に付いていけなくなった濃姫は離縁し、難病に侵される。やがて、濃姫は、信長の苦悩を知り彼に寄り添い支え合う。そして、本能寺の変で、二人の波乱万丈のラブストーリーは終焉を迎える。
本作は、ラブストーリーという斬新な視点で、織田信長と濃姫の夫婦愛を描いた切なく見応えのある異色作である。
感想は人権コメディー時代劇
大作時代劇にワクワクと映画館へ。信長と濃姫の出会いは男女平等どつき漫才からコンペイトウを盗られ貧困の村へ人々を救うのかと思いきやの大虐殺。濃姫が去り側で支え続けるLGBT的な出過ぎの蘭丸なのに殺害さられた途端愛しい信長に投げ捨てられる。ここで吐いてしまった。病気の濃姫は急に顔色良くビワで明るくどこの国の曲?を弾き炎から脱出信長濃姫はタイタニック号へ。
この作品は外人さんが見た日本なのか?海外での何賞を狙っているのだろう?色々考えながらあっという間の時間でした。
東映らしいご都合主義の娯楽劇
正月1作目の映画のチョイスで失敗したためか、2作目は制作費20億という本作。東映70周年と言ってもアラフィフの私でさえ、東映時代劇の本編(映画)では近年は『花戦さ』『多十郎殉愛記』ぐらいしか記憶が無い。むしろテレビドラマでは、かつては東映制作の長時間時代劇が年始などに放映されていたので、そちらの方が印象が強く、時季もあってかご都合主義の娯楽時代劇のイメージ。本作も時代が違うとはいえイメージ通りの建て付けを踏襲しており、桶狭間前から本能寺まで時系列で展開、やっぱり冗長に感じる。綾瀬はるかの濃姫が東映時代劇の象徴である北大路欣也の道三から使命を帯びて、キムタク信長とバトルを繰り広げる前半の方が綾瀬はるかのアクションも活かせて、ジェンダーレスの方向を打ち出す古沢脚本がマッチして見がいがあった気がした。キムタク信長はキムタクがキムタクであることが変わりない、いつものキムタク。信長より若い説を採用した宮沢氷魚の明智光秀は俗説と新説を採り入れた格好だが、古くから高柳光壽先生らが提唱した野望説の枠内で新鮮味は無い。ラストは一時、本能寺から脱して坂本龍馬の一部伝説のように海洋に乗り出す妄想が描かれるが、個人的にはお約束の焼き直しなら希望が持てる妄想シーンのままで終わった方が良かったと感じた。
〝大作〟などと構えずに、安土城見学にでもいくつもりで…
1600年といえば、日本では何と言っても関ヶ原❗️
その前後、世界では、イギリスがスペインの無敵艦隊を破ったり、東インド会社を設立したり、シェークスピアがベニスの商人やマクベスを出版したり…。
もしかして、あのご夫婦もあのあと、世界史的な有名人になっちゃったりして、義経=チンギス・ハン説みたいなことになるのかと思って、はてさて一体どうなることやら、と心配してたら、さすがに落としどころを弁えていただけたのでホッと胸を撫でおろしました。あー、良かった。
まったくもう、心臓に悪いことはやめてください😆
(でも、ラ・ラ・ランドのように、もしあそこでこうなっていたら…バージョンをやりたかったのですよね、きっと)
シン・カイシャク(庵野秀明監督風)という意味では、アレに関する明智光秀の動機がなかなか興味深いものでした。
魔王、覇王と憧れていた人が、〝つまらない〟真人間に堕してしまったことへの失望が、強烈な〝梯子を外されたことへの逆恨み感〟に変わったわけなんですね。
たとえば、寅さんが風来坊をやめて、タコ社長のもとで文句も言わず、真面目に働くようになったら、満男だってきっとガッカリするんだろうなぁ。
あれ?そういうこととは違う???
それにしても、信長の人物造形が、表面的なうつけの部分しか描かれていないので(演出も演技も深味が感じられなかったのは、そのせいだと思います)、濃姫の刺激によって覚醒していく秘めたる器の大きさや暴走しかねない激しさ、固定観念に囚われない発想の自由さ柔軟さという最重要な資質がまったく伝わってこなかったのですが、この映画にとって、それは致命的だと思います。
妙に強調された名古屋弁や岐阜弁(時代考証的に正しいものなのだとしても)、中途半端な駄洒落(尾張の終わり)などに注力せず、新たな視点での人間・信長の複雑な内面をもっと多角的に浮かび上がらせて欲しかった。建設的な意見などは出なかった軍議でも、さすがお館さまと唸らせる場面は作ることができたはずなのですが、敢えてそうしなかったのだとしたら、legendのタイトルが安っぽくなります。
柴田勝家のヒゲへのコメントの後、丹羽長秀の個性についてもチョコっと褒めたりするシーンがあれば、さすがによく見ていらっしゃる、この方についていこうと自然な流れで思わせ、信長の人物的魅力も表せるはずでした。それがないから、信長の人間性は軽いだけ、ただのコメディで終わってしまうわけです(終わりの始まり、なんて洒落にもならない)。
余計なお世話だとは思いますが。
なまじ、大作だと思って期待してしまうと、安土城以外のほとんどがなんだか空回りしてるようにしか見えないので、気軽にご覧になることをお勧めします。
二人の恋愛を描く、という新しい視点
2020年代、織田信長を演じれそうな役者は誰だろう?
映画・テレビ問わず歴史の人物を描く作品を観る時、自分はよく思ってしまう。その役者が演技するときに発する圧力や貫禄、佇まい・・・。今に伝わる歴史上の人物とマッチするのかと。自分の中で好例を挙げるなら、TVドラマ「麒麟が来る(2020)」で斎藤道三を演じた本木雅弘、「関ケ原(2017)」で豊臣秀吉を演じた滝藤賢一、「リンカーン(2012)」でリンカーンを演じたダニエル=デイ・ルイス。皆見事なまでのインパクトを発し、いつまでも観ていたいと思えた。では、織田信長を演じてそう思えるような役者はいるだろうか?
木村拓哉。自分がこの映画を観たいと思った理由はこれだ。彼のイメージからして、織田信長を見事に演じれるのではないか。ナイスチョイスや。この興味から、本作を鑑賞した。
本作は織田信長とその正室:濃姫の政略結婚から信長の自刃に至るまでの30年間の“夫婦仲”に焦点を当てている。つまり、歴史映画ではあるものの“恋愛”の要素が強い作品だなと自分は感じた。また歴史上資料が乏しい濃姫の性格。これが非常に勝ち気で強い。序盤では信長を武の方で補佐するところもありと、いままでの作品とは違った濃姫を本作では魅せてきた。本作の信長がちと弱く見えてしまうところが気になるも、こうゆう展開も一味変わって悪くない。むしろ主演は濃姫のほうではないかと思えるくらい濃厚な描かれ方。これも恋愛要素を多く感じる理由のひとつでもある。ちょっとくどく感じることもあるが。
さて、本作の木村拓哉であるが、
まずはお見事の一言。
ちと重みの部分でもう少し欲しい、が本音だが、若かりし頃の信長の演技は若さほとばしる動きや眼光の鋭さに、「やっぱりええなぁ」と思えてしまう。だからといって壮年期の良さがないわけではない。他の役者が織田信長をやってここまで(もちろん自分の中でだが)納得できる演技が見れるだろうか。此度のチョイスは間違いないと思う。
だが、演技だけなら木村拓哉だけではない。濃姫を演じた綾瀬はるかや、脇を固めた伊藤英明、市川染五郎、中谷美紀。それだけではない、他のキャストも見ごたえのある役柄で、ここまで演技のアンサンブルが素晴らしいのもなかなかないなぁと思いながら見ていた。特に短いながらも徳川家康を演じた斎藤工のセリフ「見事じゃ」は貫禄たっぷり。ここで語るには足りぬくらい、素晴らしい演技が見れた。
ここまでなら、どちらかと言えば高評価な内容。しかし私がつけた評価は低め・・・。その理由が、
ストーリー展開。特にラストシーンがほんともったいない・・・。
この映画は今までの歴史映画やドラマで描かれてきて植え付けられた歴史的なイメージから一線を画すと思える内容。つまり新たな視点を持っている。そこに戸惑いはあれど、こうゆう解釈もありかと思えば受け入れられる。それだけに最初、“実は信長は本能寺の変で生き延び、濃姫と新たな人生を歩むため異国の地に渡る”シーンを魅せてきた。なるほど、たしかに信長の死体は出ていないし、可能性はかなり低いがその展開は面白い。ここまで新たな視点を魅せてきた映画ならむしろ納得。異論を臆せず描いたことに拍手。
・・・とおもいきや、まさかの夢落ち・・・。
歴史を描くなら歴史どおりに、が望ましい。その意見があれば完全に同意する。しかしゼロではない可能性を描くことを批判することはしない。だったらその方に進んで描いてほしかった。もし夢落ちでも夢とわかりやすいようにしてくれればまだ満足せずとも納得はした。しかし夢落ち、これは個人的に中途半端な描き方、蛇足に思う。またくどく感じるシーンは、ありきたりに思えてしまって他の視点で描けなかったのかと思ってしまう。これだけ新しい視点を持って描いているのに。なんか拍子抜けしてしまった。こんなオチは自分の中では求めていなかったなぁ。
それゆえ、本作は個人的に大きく点数を下げてしまっている。でも主役の二人を含め役者たちの演技は見ごたえ十分。それが救いである。
思っていたのとちがった!!
ただ、信長が死ななければこんな世界があったのかもしれないと思った。
ただ、最後のシーンはただただ、信長の盾になって死んでいく人が可哀想で涙が出た。
木村拓哉でなく他の人でこの映画を観たかった。
【”バタフライエフェクト”若き信長が武芸知略に秀でた濃姫を娶り戦国武将として名を挙げ、魔王と化した後も二人の海を渡り異国へ行く夢は尽きない様を描いた作品。古沢良太の新解釈シーンも魅力的な作品。】
ー 何しろ、信長(木村拓哉)と濃姫(綾瀬はるか)との33年間を三時間弱で描いているので、物凄いスピードと多数の登場人物を配し、物語は進む。
脳内フル回転で、学生時代に学んだ史実を思い出しながら鑑賞。
では、古沢良太氏の脚本が効いていないかというと、随所で効果的なシーンが用意されている作品である。ー
◆感想
・信長を演じた木村拓哉と濃姫を演じた綾瀬はるかさんの演技は、矢張りスターのオーラを身に纏っている、と感じた。
ー 一時期、木村さんの演技を貶すレビューが良く出たことが有ったが、今作を観ればこの方の役者としての成長が良く分かる。
又、慣らされた馬とは言え、あれだけ馬を乗りこなせる俳優は、現代では稀少である。
勿論、綾瀬はるかさんも然りである。-
・政略結婚であった二人の挙式&初夜のシーンは、完全に濃姫が信長を舐めて掛かっている。
ー 飲めない酒を無理して飲んで咽る信長の姿。そりゃ、軽蔑するよなあ・・。-
・だが、二人が徐々に惹かれ合っていく様の描き方が上手い。
ー 楽市楽座で、信長が初めて濃姫に買ってあげたカエルの置物。このカエルの置物の使い方がとても巧い。ラストまでキチンと引っ張っている。
濃姫が流浪の民に絡まれた時に、信長が身体を張って戦うシーン。
そして、信長が火を放たれた本能寺で、死を間際にして言った言葉・・。-
・濃姫の智謀により、桶狭間の戦いでマサカの今川義元率いる4万を超える大軍を打ち破るシーン。
ー 戦闘シーンは出て来ないが、意気揚々と引き上げて来た信長を見つめる、嬉しそうな濃姫の眼。-
■だが、信長は徐々に正気を失ったかのように、比叡山焼き討ちを決行するシーン。レイティングを避けるために、残虐なシーンは映されないが信長の異常さが顕著になって行く。
そんな信長を諫めてくれと家臣団に依頼される濃姫の箴言にも、もはや魔王と化した信長は耳を貸さない。そして、二人の別れ。
それ以降、信長はやせ細り、残虐性を身に纏う。
木村さんの演技が凄い。
・濃姫が病に倒れた事を知った信長が、濃姫を安土城に運び入れ手厚く看護する姿。
ー 一度惚れた女は、忘れ難いよね。信長に僅かに残って居た善性が伺えるシーンである。-
・信長が家康(ビックリの太った斎藤工)と和議を結ぶために、豪華な食事を提供するシーン。魔王の面影を無くした信長を観た明智光秀(宮沢氷魚)が、信長に進言した事。それは、食事を担当した光秀自身を罵倒する事で、往年の姿を家康に見せつける筈だったが・・。
ー ここからの本能寺の変を起こす、光秀の心の変遷は、古沢良太の新解釈であろう。
光秀の考えを信長の涙を見て悟った、愚鈍のふりを呈していた家康が信長に殴る蹴るされた光秀の元に近づきそっと”お見事・・”と言って席に戻るシーンはナカナカである。
それを、光秀の謀反の理由"信長は魔王でなければならぬ。"に繋げたとは、巧いなあ。
因みに、今作のMIPは明智光秀を冷徹に演じた宮沢氷魚さんだと、私は思った。(MVPは勿論、木村さんと綾瀬さんである。)-
<ラストの本能寺の変の、捻りを効かせた展開も、良い。
信長の”是非に及ばず”という有名な最後の言葉からの、信長と濃姫が夢に抱いていた異国への旅路を描いた夢、幻のシーンも印象的である。
そして、有名な「敦盛」を舞うシーン。
一方、濃姫も信長から渡された西洋楽器を胸に抱き、事切れている・・。
良く、信長と濃姫の33年間を三時間弱に収めたなあ・・、古沢良太脚本と思った作品でもある。>
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