劇場公開日 2024年1月12日

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「実写の味を出し切った逸品」カラオケ行こ! サブレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0実写の味を出し切った逸品

2024年1月15日
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原作漫画既読で鑑賞。原作独特の空気感こそ再現できていないものの、漫画を読んだだけでは気付けない「紅」に潜んだストーリー性を押し出し、実写映画ならではの味を楽しむことができた。

再現できていない大きな点を挙げると、
まず、綾野剛の顔が基本怖くて、原作の飄々としたアホっぽさが出ていない。そこが一番のネック。綾野剛を「ヤクザだけどちょっとアホっぽい」と思えるのは後半も後半であり、もったいないと思った。
次に、後輩や同級生の女子がイキった中学生になった点。そういうのがなくて、声と共に自分が変わることへの不安が主人公のアイデンティティだろうに、安易で下世話なトラブルで置き換えられたことが不満。

以上の二点は、漫画ならではの表情の豊かさやモノローグの多さが実写化の壁になったのだろう。まあ、難しいと思う。
しかし、実写のメリットとして「紅」の読解を通して作品に厚みを持たせた点は非常に良かった。確かに既存の歌を数ページにわたって歌わせるのは漫画向きではない。映像作品でしかできないことだ。
和訳までして「紅」とストーリーのシンクロを見せるのは少々くどかったかもしれないが、そこは映像の妙。また、主人公が低くなった声で「紅」を必死に歌い上げる姿は実写でしか味わえない。大変素晴らしかった。

サブレ