キングメーカー 大統領を作った男のレビュー・感想・評価
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また、邦画は韓国映画に負けた。!
野心溢れる政治家と影の選挙参謀の固い友情の快進撃とそれを阻む政界のドス黒い闇、投票が殴り合いに見えるくらい張り詰めたテンションが圧巻の実話ベースのポリティカルサスペンス
薬剤師のソ・チャンデは通行人に罵声を浴びながらも街頭で自身の主張を訴え続ける新民党のキム・ウンボムの政治信条に感銘を受け、彼の選挙事務所に乗り込み選挙を手伝いたいと申し入れる。チャンデの発案した反則スレスレの戦略は効果絶大で、ウンボムは補欠選挙で当選し、政界でたちまち頭角を表し始める。チャンデは影の選挙参謀としてウンボムを支え続けるが、与党の共和党はウンボムの無双ぶりの裏にチャンデがいることを知り彼を引き抜こうとする。
チャンデが打ち出す劣勢であることを逆手に取った型破りでバラエティに富んだ選挙キャンペーンの数々がとにかく痛快。トンチ合戦のような序盤も楽しいですが、中盤の新進党総裁選における丁々発止のやりとりはアクション映画のようなハイテンションの見せ場になっていて、汗の一滴が台詞よりも雄弁に心情を語る演出に打ちのめされました。そして物語の陰影はグッと深くなり、ウンボムの右腕であるのに余りにも型破りなので表舞台に立つことが出来ないチャンデの焦燥が、新民党の中で瞬く間にのし上がっていくウンボムの眩しいばかりの快進撃の中で浮き彫りになっていく後半の展開にグッと引き込まれてしまいます。誰もが何をも国から強制されない社会を理想とする二人の友情が熾烈な政争の中で激しく揺さぶられるドラマは圧巻ですが、60年以上も前の理想が未だに実現していない世界に生きていることを思い知らされて愕然とします。
もはや現存しない60年前の風景をCGでさりげなく再現したり、実際の記録映像に登場人物を合成したり、モブシーンをそのまま再現するのではなく当時のフィルム映像のように加工したりと様々な表現を駆使して当時の空気感を再現する繊細さが絶大な効果を発揮、韓流ノワールの傑作『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』を監督したビョン・ソンヒョンの手数の多さに感服しました。緊張感漲るドラマをしっかりと支えるチャンデを演じるイ・ソンギュンとウンボムを演じるソル・ギョングの熱演が素晴らしいことは言うまでもありませんが、与党である共和党内外で暗躍するイ室長を演じるチョ・ウジン、新民党総裁選でウンボムと対決するヨンホを演じるユ・ジェミョン他脇を固める助演陣もこれでもかとサスペンスを盛り上げます。
個人的に溜息が出たのはとにかく美しい喫煙シーン。さまざまな心情が紫煙とともにスクリーンを漂う映像に見惚れました。このさりげない演出一つ取っても邦画サスペンスが韓流の足元にも及ばない理由が見て取れます。序盤数分で語られる他愛のない話がクライマックスでガツンと効いてくるので上映中の途中入場は厳禁です。
かなり脚色されているとは思うが、金大中氏とその参謀となった男の実話を元にした話。
金大中氏という名前は昭和の時代、ニュース番組で頻繁に耳にしていた名前だ。
「キムデジュンシ」ではなく、「キンダイチュウシ」と呼ばれていた。
東京で誘拐され、一時行方不明となり、無事解放された「金大中事件」を記憶する人も少なくなっているかもしれないが、この事件は後に韓国のKCIAの犯行であることが判明しているようだ。
韓国が日本に併合されていた時代を知る世代で、日本語でインタビューに応じることもできた。
大統領になった後、北朝鮮に対して「太陽政策」と呼ばれる融和的政策をとり、ノーベル平和賞を受賞、日本に対しても反日的政策はとらず、当時禁止されていた日本文化を韓国国内で解禁した。
そんな金大中氏だが、時の政権などから政治的な迫害や弾圧を受け続け、命も狙われた。
ラストで脚を引きずり、杖をつきながら歩くシーンがあるが、これも事故をよそおい暗殺されかけた時の後遺症だ。
その他、死刑判決を受けたり、軟禁されたりと波乱万丈な政治家人生を歩んでいただけに、大統領になろうとは誰も思っていなかった。
それを実現させたのが、劇中でソ・チャンデクの名で出てくる、厳昌録(オム・チャンノク)という男だったということなのかもしれない。
朝鮮半島には恨(ハン)という文化があり、大統領経験者は例外なく投獄されたり、自殺に追い込まれたりする。
金大中氏も例外ではなく、三人の息子が不正蓄財で追求され、斡旋収賄の罪で身柄を拘束された。自身は北朝鮮との関係を追求され捜査も行われたが、それにより犯罪として裁かれることはなかった。
韓国は政権が危うくなると、国民の目をそらすために、決まって反日を持ち出す傾向にあるが、金大中氏は日本とも縁が深く、反日政策をとらなかった珍しい大統領と言える。自身も日本に対して悪い感情は持っていなかったのだろう。
映画の方は、少し黄みがかった荒い粒子の映像が過去の時代を感じさせ、汗ばんだ表情が焦燥感と緊迫感を与えている。
キャストも素晴らしく、韓国の政界特有の雰囲気もひしひしと伝わってくる。
「KCIA 南山の部長たち」「モガディシュ」などにも通じる韓流お得意の政治を題材とした映画。
ぜひ、劇場でご覧ください!
骨太信念の映画
親の位牌も売るような男
あくまで大義を説く
韓国映画で描かれる政治ドラマはハズレが少ない。軍事独裁を長く続ける中で、政権側があくどいことや無茶なことをかなり行っていたことが明らかになっているからだ。政権側の闇や、実際に起こった事件の裏側、そしてそれに対抗する側の闘いを描くだけでドラマになる。本作は政権交代を目指す野党側の人間たちを描いた政治ドラマ。
実話をもとにしていると謳うだけあって、朴正煕大統領や金大中、金泳三(後に2人とも大統領になることもすごい)といった人物をモデルにした政治家たちが登場する。軍事独裁を続ける大統領とそれに対抗する政治家という構図はどうやってもテンションが上がってしまう。そして汚いことも厭わない選挙参謀との関係という設定は話としてとても深みのあるものになっていたと思う。
60年代から70年代の韓国政治はリアルタイムで経験していないが、概要としては知っている。キム・ウンボムは金大中のことだが、選挙参謀との関係性がメインだから中央情報部に拉致された金大中事件や死刑宣告されたことなんかは省略されてしまう。そして後に大統領になるということも。映画の構成としては仕方のないこと。そう考えると金大中の人生ってなんて波乱万丈なんだろう。それだけでも韓国の政治ドラマはハズレが少ない理由になりそうだ。
正義という言葉が頻繁に登場するが、その意味についても考えさせられるうまい作りだった。こんな深みの出し方がうまい。
キングメーカーではなく、汚れ参謀
金大中が再び脚光が浴びた時代ではなく、朴正煕独裁時代が舞台。汚れ役を担った選挙参謀のインサイドストーリーを中心に物語は進んでいくが、面白くなるのは、野党内での大統領予備選。党の総裁にしがみつくことしか頭がない長老、負けても党内での権力を維持したい候補者が、駆け引きを行う。
タイトルのキングメーカーと聞けば、田中角栄とか北条政子など、隠然たる権力を持っている大物を連想する。が、このイメージと主人公の立ち位置があまりにも違いすぎるので、違和感を持ち続けながら鑑賞することになってしまう。
不適切なタイトル以外にも、実録物にありがちな、盛った感がプンプンと匂ってくるため、リアリティを感じることができない。
金大中大統領の腹心だったという人物のエピソードを元に脚本が書かれた作品だということで、拉致から始まって死刑判決、大統領当選にいたるまでの裏側のドラマを期待していたので、ちょっと期待外れかな。
渋柿
金大中とその選挙参謀をモデルに描いたフィクションで1963年、薬剤師をするソ・チャンデが長年にわたり国政選挙で当選を果たせなかった野党新民党議員のキム・ウンボムの影となる話。
韓国の歴史にも政治史にも明るくないけれど、朴正熙大統領の軍事政権、第三共和国時代ですね。
他人の利益は自分の不利益と言わんばかりの妬み嫉み的思考で、収賄、捏造、ネガキャン何でもござれな国民性の中、大人しく堅物で世の為人の為なキム・ウンボムの思想に共感し、キム・ウンボムがスピーチ力でスタッフを転がし黒い動きで戦って行くけれど…まあ、フィクションですから金大中がそんなに聖人の様な人だったかは別の話しですね。
資金力やバックボーンの弱いキム・ウンボムを当選させる為に汚いやり口を繰り返して行くし、さも彼のやることがえげつないかの様にみせているけれど、相手陣営も普通に同じ様なことやっているというね…流石ですよw
どんな戦略でやり合うのかというエンタメ性と、「影」としての立場や抱えてしまったものや扱われ方から湧いてくるメンタルの部分をみせるドラマと、悲しさややり切れなさみたいなものもあって、なかなか面白かった。
政界に夢はあらず。
恐るべし…
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