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ロマンポルノナウの三部作の中では比較的オーセンティックで企画に沿った内容であろう
しかしその中に現在のLGBTQの問題、セクハラやパワハラの問題等の社会テーマを入れているところに進化を図ろうという意図も感じ取れる 撮影に際して"インティマシーコーディネイター"を組み入れ制作側と俳優やそのマネージメント側と何回も話し合いをし、殺陣のように濡れ場のシーンでは念入りな動きのチェックを、ジャージを着ての打ち合わせであったと何かの記事には掲載されていた
そのせいか、男目線でのセクシーさではない、あくまで情愛としての美しさを際立たせているカットではあったと思う
その裏返しに、男の下衆な部分やずるがしこい部分、同じく女同士の足の引っ張り合いみたいなものを強調させるしかなかったのは作劇上やむを得ないであろう
只、本作、もし自分がアイデアを提案できるならば、サイレントムービーにすれば良かったのではないだろうか?そこまでストーリーに難解さはなく、男女の不倫があるなら、同性同士だって不倫ということであり、ポルノの一ジャンルである"百合モノ"は一定の層には女性同士の美しさ(シスターフッドとは別)が約束されているのであろうから、敢えて台詞を全部言わずに、モノローグもカットで、表情と動作、目の力のみで、昔の如く、想像力をフル出動させる変則的作品に仕上げてくれれば興味深く、又実験的要素の強いメロドラマとして興味深く鑑賞したかもしれない
というのも劇伴が、余りにも今作とのイメージの乖離を産んでしまっていたのがそんなアイデアを考えてしまった理由だからである。この齟齬は強烈なインパクトとしてイメージの低下を招いてしまっているのだ
勿論、楽曲にケチをつけるつもりはなく、多分単体で聴けば美しい音色だったと嘘偽りなく思う
しかし濡れ場でのあのフルートの音色は全く以て場面とマッチせず、寧ろ笑いを誘う程の"ハズシ"にしか聞こえなかった 監督のセンスだとすれば、これこそ時代に逆行した選択だったのだろうと残念である
男女の行為も「身も蓋もない」程の現実感漂う雰囲気であるのに対し、女性同士の行為の美しさは尊いものという主人公の健気さは、今作を応援歌として高らかに歌い上げたいテーマではあるのであろう それは理解するが、如何せん作品そのものの質を顧みるに・・・な内容であった