「これは傑作ではないか」夜明けまでバス停で 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
これは傑作ではないか
2022年。高橋伴明監督。バス停で仮眠するホームレスの女性が殺されるという衝撃的な事件(実話)をもとに、コロナ禍で追いつめられる人々と抵抗の形を描く。高齢女性だった被害者をアラフォー女性に設定したことも、働き先の居酒屋の内部事情を詳しく描いたのも、殺されずにすむための対抗策を描いたことも(それも二つも!)とてもよくできている。なにより面白い。
三里塚とかでてきて思想的背景が入っていることは入っているが、それが「くすぐり」になっており、大局的には「ある個人が危機に陥り、そこからいかに救われるか」というハラハラドキドキの娯楽的王道映画になっている。なんたる大人の態度。
抵抗には二つの道があって、暴力革命的な道(前述したようにこれは「くすぐり」)と人間関係構築の道(こっちが本命)がある。主人公の日ごろの言動が組織のなかで身動きのできない個人を動かし、結局、自分も救われる。個人と個人のつながりで生きていこうという、なんとすがすがしい物語か。
俳優のみなさんの演技もすばらしい。実力派のみなさんばかりが出演している。
久しぶりに楽しい映画を見た。幸せな時間でした。
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