「「おはよう、ハント君。今回の君たちのミッションだが・・・・」」ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
「おはよう、ハント君。今回の君たちのミッションだが・・・・」
〔スパイ大作戦〕はリアルタイムで見ていた世代。
とは言え「第一シーズン」はほぼ記憶に無く、
覚えているのは「第二シーズン」以降のオハナシ。
なので冒頭の指令は必ず、
「おはよう、フェルプス君」。
当時から、フェイスマスクや特殊メイクを使っての変装、
特殊機材の使用は自家薬籠中のもの。
奇想天外の作戦立案も含め、
毎週の放送を楽しみにしていたものだが、
『トム・クルーズ』が主役(と、制作も)を務める映画シリーズは
そうした特色は踏襲しつつ、
俳優の性向もあろう、アクションシーンにより多くが割かれる傾向。
それは最新作とて例外ではなく、三時間近い尺にもかかわらず、
その長さをまるっきり感じさせない興奮の連続。
その分、人間ドラマは薄めに感じてしまうものの、
血圧が上がりっぱなしでスクリーンに魅入るのは
ある意味カラダには悪いかもしれない(笑)。
冒頭の、ロシアの新造原潜の艦内の場面から緊張度合いは最高潮。
高慢し、高まり、安堵し、再び昂じる。
実はこのサイクルが、以降のエピソードにも
万遍なく適用されるわけだ。
本作でのターゲットは、件の事故で失われてしまった二つの鍵。
合わせることでデジタル空間上に存在する「超AI」をコントロールできる可能性があるのだが、
その「超AI」を「entity」と呼称しているのがなんとも示唆的。
「実体」との意が正しかろうが、自分などは1982年の映画〔エンティティー 霊体〕を思い出す。
その方が、今回の意図には合っているような。
おっと話がそれてしまった。
その争奪戦で、誰が敵やら味方やらが判らぬ混交状態。
裏切りは平然と行われ、金と信頼が天秤に掛けられる。
そんな中、唯一『イーサン・ハント』のチームだけは
団結力が綻びない。
現れた仇敵と、デジタル空間を自在に立ち回る「それ(entity)」に対し、
アナログな手技で裏の裏をかきに行く。
それがなんとも痛快。
アクションのシーンも単純な造作ではなく。
空港の中での、ローマの市中での、ベニスの屋敷での、オリエント急行での
何れもが三つ巴・四つ巴の様相。
たっぷりと時間を掛け(だから長尺となった)、時として笑いも交え、
手に汗握らせるシーンを次々と繰り出す。
とりわけオリエント急行のエピソードでは、
並行して行われているタスクをワンカットに収めるなど
構図の巧さもきまっている。
延々と続いて迫る危機も、しつこささえ感じさせる念の入れよう。
またローマ市内でのカーチェイスを印象的。
手錠に繋がれた状態での運転は新機軸だし、
なによりも金をふんだんに使い、気持ち良いほどの数の自動車や二輪車を破壊しまくるのは、
世界市場を相手にしているハリウッド映画だからこそできる痛快さ。
御年六十一歳の『トム・クルーズ』は
スタントシーンの多くを自身で演じることは勿論、
兎に角、走りに走る。
ひょっとすると、
あと十年くらいはこうして平然と走り回っているんじゃないか。