「今選択の時」ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
今選択の時
昨年の『トップガン マーヴェリック』の興奮未だ冷めぬ中、この稀代のスーパースターは早くも新作をお届け。
本作で7作目。すっかり自分の代表作シリーズとなった名スパイの新ミッション。
にしても、昨年は『トップガン』で今年は『ミッション:インポッシブル』。盆と正月が続けて来たようだ。
今夏の超期待の一本だが、一抹の不安もあった。と言うのも、前作を超えられるか…?
前作『~フォールアウト』がシリーズ最高と言っていい面白さだった。シリーズの集大成、もうこれで見納めでもいいくらいなほど。
しかしトム・クルーズは自身を超えようとする。いつもながら。
しかも今回はシリーズ初の二部作構成。気合いと意気込みが違う。
本当にこれでシリーズ見納めになるかもしれない。その重要な“PART ONE”は…!?
前編という事は、当然ながら後編が控えている。
いいのか、これで…!? 前編だけでこのハイ・ボルテージ…!
シリーズ最長の160分超え。長さはあるが、それに見合った見応え。
劇場大スクリーンで観てこそ。ハァ、大満足…。
おっと、これで満足しちゃいけない。後編があるのだから!
個人的シリーズ最高傑作の前作に匹敵もしくは甲乙付け難い。本作はこれが初見で前作は何度か見てるのでまだ前作の方に愛着があるが、本作も何度も見、前後編合わせれば“超え”も充分あり得る。
それにしても、一体何処まで高みを目指すのだろう…? 今すぐにでも見たい後編は何を魅せてくれるのだろう…?
本当にトム・クルーズと彼のチームメンバーには頭が下がる。
さてさて、今回のミッションは…
極寒の深海で起きた潜水艦の沈没。これが事の発端。その潜水艦には…
世界中やあらゆるデジタルに浸透するAIシステム。自我を持ち、自ら進化を遂げ、脅威にもなり得る。通称は“それ”。
二つの鍵を合わせ一つにすれば、“それ”を支配出来る。文字通り世界を掌握する事が出来る。
それを狙うのは闇の組織(因縁の武器商人ホワイト・ウィドウ)だけじゃない。各国や各機関も。
イーサンに課せられたのは、その鍵の入手。が、鍵や“それ”について詳細は知らされない。イーサンは“それ”の危険性を察知し、鍵の入手と“それ”を殺す事を誓う。
そんなイーサンの前に立ち塞がる新たな敵…いや、旧敵。IMFに所属する前のイーサンの過去を知る男…。
小難しいのは設定や用語、交錯する相関図だけであって、話自体はシンプル。ズバリ、
鍵を巡る攻防。
IMFとの対立、CIAからも追われ、いつもながら味方は少ないが、ルーサー、ベンジー、イルサと合流した時の心強さ。彼ら無くしてイーサンの任務は成功しない。
敵か、味方か。初登場のグレース。へイリー・アトウェルが美貌とタフさで、大きな見せ場や役割を受け持つ。
対する敵。イーサンの過去を知る男ガブリエル役のイーサイ・モラレスは渋さと存在感放ち、彼の部下の女暗殺者パリス役のポム・クレメンティエフが奇抜なメイクと衣装でインパクト。
お馴染みの仲間、新たな敵、さらには第1作目以来のキャラなどなど、バックアップと思惑入り乱れる。
今回の目玉のアクションは、すでに予告編などでお披露目されているバイクで断崖絶壁からのダイブ。
このアクションの為にスカイダイビング500回、モトクロス・ジャンプ1万3000回も練習し、本番でも6回ジャンプ! 勿論言うまでもなくトム自身が生身で。もう、何て言ったらいいか言葉が見つかりません…。
本作の見せ場はこれだけじゃない。スリリングなシーンや度肝を抜くアクションは他にも随所随所に。
アブダビの新空港。グレースとの初接触の傍ら、ベンジーは荷物の中に隠された核爆弾の解除を。『4』と前作の任務が核爆発を未然に防ぐ事だったので、それを序盤でやってのけ、早々にシリーズ超えの意気込みの表し。
ローマにてシリーズお馴染みの市街地チェイス。が、今回はグレースと手錠で繋がれた上に小型車。敵は装甲車。お馴染みのチェイスも趣向を変えて二番煎じはしない。
ヴェニスの宮殿。ホワイト・ウィドウが主催する場で、主要面子が顔を揃え、緊迫した駆け引き。ここで敵味方はっきり区別し、ある悲劇が…。
本作最大のアクションの見せ場は断崖絶壁からのバイクダイブではなく、クライマックスの列車アクションであった。
まずオリエント急行内で繰り広げられる各々の駆け引きはあのライバルスパイの名作を彷彿させ、列車上でのバトルは手に汗握る。ブレーキと行く手の橋を壊され、暴走するオリエント急行に乗ったイーサンたちの命運は…!?
実際のオリエント急行と同じ列車を作り、実際にそれを走らせ、その上で実際にアクションをし、壊された橋から実際に落とし…。
あれもこれもガチでやる。これまでのシリーズも『トップガン マーヴェリック』での操縦もそうだった。一切妥協はしない。
一歩間違えれば映画史に残る惨事に…。そんな危険と隣り合わせで驚愕と圧巻のアクションを魅せてくれるからこそ、断崖絶壁からのバイクダイブや列車の転落も予告編やメイキングで見てるのにも関わらず、まるで初めて見るかのようにハラハラドキドキエキサイティング!
イーサンの不可能ミッションを、トムが本当に決行。もうフィクションなのかノンフィクションなのか分からなくなってくるほど。
毎度毎度のトムのプロフェッショナルぶり、監督やスタッフやキャストたちへの信頼ぶりは、劇中とリンク。
だからこそ我々は、トム・クルーズと『ミッション:インポッシブル』にいつだって魅せられるのだ。
今回のキーに、“選択”。
イーサンの過去。IMFに入るか入らないかの選択。
グレースも同様の選択を迫られる。
イーサンの闘いは選択の連続。世界の命運か、仲間の命か。
そのどちらもやってのけてきた。
が、今回ばかりは最大究極の選択。
まるでそれは現実問題と通ずる。
現在ハリウッドで起きている俳優組合のストライキ。
争点はAI技術の導入を巡って。
AIシステムの脅威に晒される本作と奇しくも酷似。
AI技術を一方的に非難する考えは頂けない。だって今の我々の生活や社会や世界も含めて、AIの多大な恩恵を受けている。
が、しかし…
AI技術がさらに導入された時、人は本当に必要とされなくなるのか…?
AIの生体システムで“作られた”俳優が演技をする。スタジオにしてみれば生身の俳優を使うより効率がいいのかもしれない。揉め事はナシ、ギャラも払わなくて済むし、理想通りに永久に使える。
だけどそれ、本当に理想的なのか…? 寧ろ、恐ろしい事ではないのか…?
自分だけど自分とは違う“それ”が、自分の知らぬ所で、自分が死んだ後もスタジオの思うままに利用される。ただのスタジオの慢心。
そこに生身の俳優への敬意はないのか…? 若きも老いも含めて生身の俳優の在りし日の姿、死を悼むからこそ、俳優たちが魅せる演技に我々は感動する。
トムの身体を張ったアクションに興奮し、楽しませてくれる。
それが、俳優だ。
それをAIが奪う…。進化する技術への警鐘。映画の中で度々描かれてきたAI問題が、今まさに起きようとしている…。
このストライキはただの異国の我々日本人にとっては何ら関係のない事…ではない!
これからの我々や全てに於いての問題。
我々は今、選択の時を迎えている。
このストライキで本作の後編やその他多くの作品の撮影が中断。
何はともあれストライキが良き方向で終息して欲しい。
だって、早く後編が見たい!
ラストシーンから想像するに、今度は実際に極寒の深海にダイビングしたりして…? 何せ実際に宇宙で撮影を敢行するプロジェクトがあるくらいだから。
早くその勇姿を魅せてくれ! 生身のスーパースター、トム・クルーズ!
近大さん
共感をありがとうございました(^^)/
トム様のイーサン
カッコよかったですね。
なるほど、7作目になるのですね。
今回も 凄いアクションの連続にハラハラでした。
女性陣も活躍の場が多かったと思います。
それにしても
トム様の映画魂に感動です。
ベンジーの爆弾解除シーンの
クイズにもびっくりでした(´▽`)
常にギリギリ~☆彡
160分超え 作品 あっという間でした。
イルサ役のレベッカがエスカレートする一方のトムのアクションに付き合いきれず、「体力的にキツい、シリーズ降板したいので殺してくれますか」と言ったのでしょうか(笑)