「アクション・エンターテイメントの伝統と極意!」ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE ヒックス伍長さんの映画レビュー(感想・評価)
アクション・エンターテイメントの伝統と極意!
7月17日のIMAX先行上映にて鑑賞。
当初の予定ではトム・クルーズ来日ジャパンプレミアと題してレッドカーペット及びトムとクリストファー・マッカリー監督の舞台挨拶が中継されるはずだったが、米国映画俳優組合のストライキ実施のため中止となった。
本作のPART TWO上映にも影響を及ぼすことが考えられるので、一刻も早く問題が解決することを願うばかりである。
さて、本作ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONEは紛れもなくアクション超大作である。
と同時に、シリアス一辺倒に終始せず、しっかりとギャグ要素のツボも押さえながらスリリングな展開を見せる、まさに見事なバランスの上に成り立つストーリーである。
そして、個人的な考察だが、こと本作に置いては、新しいスタントへの挑戦、と言うよりは、かつてのアクション映画で実践されてきた名場面を自らの作品に取り込み、伝統という形で後世に引き継いでいく、いわゆる伝統芸能の継承者的役割を、トム先生が完全に自覚しているとしか思えない作品構造に仕上がっている。
以前、トップガン マーヴェリックの時にも触れたが、現状トム先生は、いわゆる一般的なアクションスターとは一線を画す、喜劇王の系譜に数えられる映画人であり、これは数多いアクションスターの中でもほんの一握りの存在である。
本作は、まさにそのあたりを完全に意識したスタントになっている気がしてならない。
すぐ思い付くだけでも、ジャン=ポール・ベルモンドや千葉真一のスタントはもとより、スティーブン・スピルバーグの名作シリーズからの引用と思われるスペクタクルなアクションもあるが、中でもジャッキー・チェン作品へのリスペクトは絶大なのではないだろうか。
80年代の中期ジャッキー作品(香港時代)に置いて、数々のスタントシーンはもちろんだが、特に「全力疾走」する描写を、ジャッキーは重要視している。
そのあたりを踏まえて考えると、M:Iシリーズに置いても、トム先生の全力疾走シーンはかなりの頻度で描かれているし、もちろん本作も例外ではない。
兎にも角にも、喜劇王の系譜に挙げられる映画人は、養成所から指導を受けて生まれて来るものではない。
あくまでも、その時代に置いて奇跡的に生まれて来るものであり、「次世代はこの人がいる」という保証や確証は何一つない。
そこをしっかりと踏まえたうえで、トム先生の作品を鑑賞出来る喜びを噛み締めたいものである、と個人的には思っている。
「君がハリウッドの危機を救った」
世界的に最も優れた映画監督の一人スティーブン・スピルバーグが送った言葉に、映画人トム・クルーズの何たるかが集約されているのではないだろうか。
デッドレコニングPART TWOが楽しみで仕方がない。