千夜、一夜のレビュー・感想・評価
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大切な人の不在とどう向き合えばいいのかを問うシリアスな作品
まるであみんの「待つわ」を地で行くかのような雰囲気の作品でした。
ただそんな生易しい話なんかではなく、生きてるかどうか分からない人を待ち続けることは静かに人の心を壊してしまうということを思い知らされる作品でした。
表面上は平穏な暮らしをしてるように見えて、実は内面は取り返しがつかないくらい壊れてしまっている登美子を演じた田中裕子さんの静かな狂気の演技が凄まじかったです。
特に田中裕子の家に泊まることになった尾野真千子の元夫が、架空の夫と会話する田中裕子を目撃してしまうシーンがスゴすぎました。
その姿を見て尾野真千子の元夫が自分がしたことの重大さと取り返しのつかなさに気付く感じがとても染みました。
大切な人が失踪するという同じ境遇でありながら、ずっと待ち続けることに疲れて区切りをつけようとする奈美という対照的なキャラクターを演じた尾野真千子も素晴らしかったです。
尾野真千子の元夫が、尾野真千子が新しいパートナーと一緒に暮らすアパートを訪ねるシーンなんかは修羅場すぎて見てられないくらいの緊迫感でした。
あと登美子にずっと想いを寄せ続ける漁師を演じたダンカンさんも名演でした。
全く関係ないんですけど、ダンカンさんが画面に出る度に心の中で「ダンカン、バカ野郎!」って言っちゃうクセを直したいって思いました。
失踪夫を待つ女の重厚な映画
飯田橋・神楽座での試写会にて鑑賞。
田中裕子主演映画に尾野真千子が共演というだけで必見の映画。
実際に観てみると、じっくりと長回しで登場人物をとらえたカメラが切り取る風景は見事だが、物語は実に重厚な蒸発した夫を待つ妻のドラマ。
ある離島で突然失踪した夫を30年間にわたって待ち続ける妻(田中裕子)は、「なぜ夫がいなくなったのか?」・「近隣某国に拉致されたのではないか?」・「生きているのか?死んでしまったか?」……などなど様々な思いを抱きながら過ごしている。
また、結婚した夫が2年前にやはり突然の失踪をしてしまって、看護師の仕事をしながら待っている女(尾野真千子)が「30年前に夫が居なくなった女性がいる…」と田中裕子に紹介されて、二人の交流が始まるのだが、後半では二人を対照的に描いていく物語とその自然な演出は素晴らしい!
自分が学生時代に田中裕子の公開作を初めて観たのは多分『天城越え』を松竹試写室で観た時だったと思うが、まだ学生だったが素晴らしい女優を追っかけて、作品を次々と名画座で過去作を追いかけ、公開される新作欠かさず観ていたのは青春真っ盛りのこと。
新宿松竹での舞台挨拶の際は、出待ちして直筆サインを有難く頂戴して、いまだに額に入れて飾ってある宝物。
あの頃から40年ぐらい経った現在、この映画でも、やはり素晴らしい演技を見せてくれる田中裕子だが、狂気すら感じる凄さに背筋が凍るような姿も映し出す久保田直監督による見事な佳作。
<映倫No.123125>
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