ヴィレッジのレビュー・感想・評価
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エンドロール後にも映像あり
主人公の悲惨な人生が、ヒロインの帰郷をきっかけに少しずつ好転してゆく。しかし、序盤からそれが長くは続かないことを示す伏線が張られ、後半には状況は一気に悪化する。
作品終盤の村長の死や、凛々しい顔つきで村を出るヒロインの弟の描写は、一見すると今後の展開が良くなることを予感させる。
しかし、村ぐるみで主人公をいじめていた村人の中から次の村長を選び出す以上、村の性質が変わるとは考えづらい。また、内向的なヒロインの弟は、彼の姉と同じように村の外で挫折する可能性が高い。
状況は今後も変わらず、小さなコミュニティ独特の階級社会や閉鎖感は受け継がれていくことが容易に想像できる。
このような村社会の性質を、演者を変えつつ同じ演目が受け継がれていく能で暗喩しているのかもしれない。「日本人ならこの後どのような展開になるか想像できますよね」と言わんばかりの非常にシニカルな終わり方だったと思う。
栄枯盛衰
監督×長編映画主演では初タッグの藤井監督&横浜流星さん。「ヤクザと家族」はかなりクリーンヒット。「余命10年も」面白かったんですが、DIVOC-12の一つ、「名もなきアンナ」は完全なMVで映画になってなかったので、そこがこの作品で活きてしまったらまずいなと思いましたが、その予感は的中してしまいました。
まず良いところを挙げていくと、役者陣の熱演は素晴らしかったです。横浜流星さんのドロッドロとした闇の演技と明るく爽やかな光の演技、その緩急の差が激しく、観ていてとてもスリリングな気分を味わえました。
黒木華さんは、とにかく純で優しい、声色がとても落ち着いているので、この作品の良心的存在でした。黒木さんにしか出せない朗らかな様子を目一杯堪能することができました。
古田新太さんのなんだか信用ならない感じ、一ノ瀬ワタルさんのクソっぷり、杉本哲太さんの逆らっちゃダメな感じ、ワルな方々は総じて恐怖心を煽ってくれました。一ノ瀬さん演じる透、ここ最近の映画の中でも底抜けのクズなので、反撃されたときスカッとしました笑
奥平くんの精一杯の振る舞い、西田尚美さんのパチンカスっぷり、木野花さんの堂々としたお座り姿、中村獅童さんの能の動き、どこをとっても一級品の方々が映画を彩ってくれていました。この演技合戦を観れただけでも映画を観た価値は確かにあったと思います。それ故に劇場を出る足は重かったです。
ただ、ストーリーや設定に関してはかなり難のある作品だと思います。細かい矛盾が気にならなければそこまで問題じゃないかなと思いましたが、後半の乱れっぷりはちょっと目を当てられないものになっていました。
凄く疑問に思ったのが、村が一気に発展した理由が無さすぎて違和感だらけでした。透を殺した直後に一気に栄えるという流れ、何かきっかけで事が動き出したというのにしたかったのは分かるんですが、1人消えただけでこんなに動くかね?と思ってしまったら最後、ゴミ収集場しか無い村にあんなに観光客が来る理由が分かりませんし、老若男女楽しめるスポットでは少なくともないですし、その発展した様子も発展してそうで、見せかけな感じが見え見えだったのも残念でした。
透の死体の遺棄場所も不法投棄されている現場のど真ん中とかいう、見つけてくださいと言ってる様な間抜けっぷりにちょっと呆れてしまいました。物語を進めるためには死体が見つからないといけないとは思いますが、隠し場所が多そうな村の中で、人の出入りが多い場所を選ぶというのはいかがなものかと思ってしまいました。しかも携帯まで一緒に埋めたら証拠まみれでしょうがと。あと透が死んだ過程をあんな後に流す必要性とは…?とも思ってしまいました。
優が衝動的に村長を殺してしまい、さらに火をつけて…という父親と同じ行動をとってしまい、同じ過ちを繰り返してしまった…という感じなんでしょうが、最後観客側を笑顔で見つめるという、全て観客に委ねるラストはなんともいえなかったです。ここで終わんの!?と思ってしまいましたし、スッキリもせず、後味も中途半端、映画の締め方としてこれは無いなと思ってしまいました。
この手の作品だったら、物語をしっかり締めてエンドロールへと突入してほしいものですが、エンドロール後に映像が流れるパターンは出鼻を挫かれた気分になりました。若者が村から出ていく様子をささーっと流すんですが、これは完全に蛇足だったと思います。
役者のパワーは絶大、でも様々な要素を詰め込みすぎたせいで物語が成り立っていないなというのが全体の感想です。悲哀に満ちた感じはひしひしと伝わってきましたが、映画としての完成度はあまり高くないと思います。あまり積極的にはお勧めできない作品でした。
鑑賞日 4/21
鑑賞時間 12:20〜14:30
座席 I-8
一ノ瀬ワタル劇場
横浜流星と黒木華お目当てで公開初日に鑑賞しました。
藤井道人監督&脚本作品。
豪華キャストです。
しかし、脚本が青いというか、頭でっかちで、ず~っと暗いトンネルを進むような話で疲れました。
薪能が伝統芸能の村の夏祭りは大勢の村人が列をなして日が暮れてから同じ能面を着け、たいまつを手に参道を登って行く村。とても気持ち悪い。
ゴミ処理場をアピールして村おこし。
いやいや、常磐ハワイアンセンターじゃあるまいし、そんなんで観光客くるんでしょうかね?
元々、ゴミを引き受ける代わりの助成金目当ての村長以下、クリカラモンモンの立派な反社が仕切るヤバい村。
片山優(横浜流星)はパチンコ依存症
で酒浸りの母親(西田尚美)のためにゴミ屋敷に住んで、昼夜ゴミ処理場で働かされている。自家用車を持っている以外は奴隷同然。父親はゴミ処理場建設の反対派で賛成派の男を殺して、自分の家にガソリンを撒いて焼身自殺したらしい。
優は犯罪者の息子ということで、村で知らないものはいない設定。
村長(古田新太)の長男でゴミ処理場で訳ありの前科者たちを支配するワルは一ノ瀬ワタルで、県警の刑事の次男役が中村獅童。
東京で社会人をしていた美咲(黒木華)が帰って来て、いきなりゴミ処理場の運営陣にコーディネーターとして収まる。なにやら、東京の会社でハラスメント責めにあって精神を病んでUターンしてきたらしいが、それほどやつれた感じもない。パワハラ全開の柄の悪い連中のなかに入って、すぐに適応していた。
片山優とは幼なじみでともに獅童の元で伝統芸能の能を学んでいた美咲(写真のみ)。
獅童は歌舞伎役者だから踊りはすんなりお手のもの。能の歌はおそらくアフレコ。
一ノ瀬ワタルも優、美咲と幼なじみの設定。
小学校の社会科見学の案内役を優にさせるプランを作成する美咲。口下手で余裕のない優ができる気がしませんでした。しかし、イケメンはすぐに評判となり、マスコミが取材に来て、テレビ番組で紹介される。トントン拍子。
美咲は茅葺き屋根裏部屋に優を招き入れ、ほどなく二人は結ばれる。
気にくわないのは一ノ瀬ワタル。
決まってます。
そのための配役。
2022年6月に他界した河村光庸プロデューサーの最後のプロデュース作品。
「宮本から君へ」のプロデューサーでもありました。
一ノ瀬ワタルが黒木華をテゴメにする図式がバレバレ。
しかも、それを自分のスマホで動画撮影するアホ。
駆けつける優。
間一髪で間に合った。
しかし、
極真カラテの使い手の横浜流星はいっさい手出しをせず、ぼこぼこにやられるのみで、ぜんぜん見せ場がありません😭
いったいなにを見せられているのやら。
医療廃棄物を引きとって夜中に一般ごみと一緒に埋める違法投棄が犯罪の設定ですが、県警が一斉現行犯逮捕のために駆けつける案件なんでしょうかね?
水質汚染はどうするの?
エンドロール後の美咲の弟が村を出て行くワンカットも中途半端な感じ。
こんな村に若い人が留まる理由が元々ないです。
黒木華はじめ、豪華なキャストでしたが、一ノ瀬ワタルと中村獅童以外はとくに出演するメリットはあったのでしょうか?と首をひねる作品でした。
肝腎の華ちゃんと流星の心が通い合う流れがとてもインスタントで、優が救われたというよりも、奴隷から広報担当に大抜擢されたから明るい表情になっただけ?みたいな。
結局、血は争えないみたいなエンディングで、能面の効果なし。
優は再生できたのでしょうか???
甚だ疑問。
美咲はひとりで服役したんですかねぇ。
藤井道人監督は単独で脚本書かないほうがいいような気がします。
ラストはどうなんだろう?
美しい集落・霞門村に暮らす片山優は、村にゴミの最終処分場が建設されることになり、その建設をめぐり反対派の父親が事件を起こし家に火をつけ焼身自殺した事により、優の人生は大きく狂っていった。母親はパチンコと酒に溺れ借金を作り、その返済のためゴミの処分場で働くことになった優は、いじめの標的となり、将来の見えない日々を過ごしていた。そんな時、幼なじみの美咲が東京から戻ったことから色々な事が変化していく、という話。
最初のトオルの事件は正当防衛で仕方なかったような気もするが、ラストの村長のは共感できなかった。
横浜流星や黒木華など出演者は素晴らしかったし、ロケ地の京都の山村部、美山などの景色は美しかった。
閉鎖的なムラ社会の権力構造と社会正義
本作は、気軽に鑑賞できる作品ではない。閉鎖的なムラ社会の中で苦悩する青年の再生物語を主軸とした、ヒューマンサスペンスである。ゴミの最終処分場などの今日的な問題を織り込んだ見応え十分の作品に仕上がっている。
本作の主人公は、故郷・霞門村で暮らす片山優(横浜流星)。彼は、幼い頃から村の伝統芸能である薪能に興味を持ち、能教室に通っていたが、ゴミの最終処分場建設を巡って事件が起き、村人との関係が悪化してしまう。母親の借金返済のため、優は、ゴミの最終処分場で働いていたが、日常的にイジメを受け、孤独で生きる希望を失った日々を過ごしていた。そんな状況の中で、幼馴染の美咲(黒木華)が東京から戻ってきたことにより、優の人生は大きく変化していく・・・・。
優は、優と同じ会社に就職した美咲によって覚醒していく。美咲の推薦で、優は、広報担当となり、持ち前の雄弁ぶりが開花して、TV放映を任されるまでになる。美咲とも次第に惹かれ合っていく。ムラ社会の権力構造の頂点に君臨する村長にも寵愛される。ムラ社会の権力構造の底辺から頂点に一気に上り詰めていく。
優を演じる横浜流星の表情の変化が劇的であり、劇的変化に対応した演技を巧みに熟す横浜流星に演者としての成長を感じた。もはや、彼は、アイドルではなく、演者になったと実感した。
黒木華は、どんな役柄でも熟す演技巧者振りを発揮している。故郷にバスで帰って来た時の表情に、只ならぬ気配を滲ませている。表情の演技が素晴らしい。
ムラ社会の象徴であったゴミの最終処分事業は、美咲の弟の告発で破綻していく。村長の片腕にまでなっていた優は破綻の阻止に躍起になるが、ムラ社会の権力構造の実態に気付き、自らの手でケリをつける。
エンドロール後のラストシーン。美咲の弟は故郷を去る。ムラ社会と決別する。社会正義を貫いた彼にムラ社会での居場所はなかった。
ムラ社会と社会正義。本作は、日本社会が抱える根本的課題を鋭く問題提起している。
ずっと囚われ続ける
映画館で予告を見た時に引き込まれた。
そのときはどんな映画なのか想像ができなかった。
優を演じられた横浜流星さんが凄まじいくらいいい。
物語のどのあたりだろうか、暗くて汚れた部屋の中に枕で顔を多い、泣き出すときに【孤独】という言葉がこんなにもしっくりとくる人がいるとは。
ただただ頭の中に【孤独】という字がうかんできた。
そんな彼が幼なじみの美咲との再開から恋人となるんだけど、映画の中では時間が短いはずなのに、物語にたしかに村の流れがあるので、確実に優が人として水を得た魚のように変わっていく。
顔色、表情、声、無口な印象がなくなり、上手に次期責任者としてまとめている。
時折映画の中にある鏡を使う写し方がすごくよかった。自分が自分を見ている印象と鏡の中は写鏡のようでミステリアスに感じた。
映画の中にお能が入ってくるのも印象的でその面についてもセリフがあるのも、すごく心の中に残った。
後半に関しては特に重め。
最終的に現実におこったことなのに、あの幸せの日々は一瞬でつかの間の夢だったのかと思わせるような最後だった。
エンドロール後も少しだけ映像が流れる。
日本のどこかにひっそりとありそうな村の話、あったら怖いけれど…。
伝えたかったのは。
藤井監督の作品は主人公だけでなく登場人物みんなの背景が見えてくるから好きなのだが。
今作は登場人物が多すぎて。
美咲は東京で何があったのか。
龍太はどうしてここで働かなければいけなくなったのか。
光吉はどうして村を出て行ったのか。
村長・修作と弟・光吉の確執は。
丸岡と母との関係は。
父はどんなイジメ(村八分)にあって誰を殺したのか。
等々、もっと掘り下げて描いて欲しかった。逆を言えば物足りなかった。(全部描いていたら2時間には収まらないか。)
何が伝えたかったのか。ちょっと欲張りすぎたのかな。
連続ドラマにしてじっくりと描いた方が良かったのかも。いきなり観光地、いきなり人気者になってたのがちょっと。
しっかりと作られた良い作品には違いないが、何度も観たくなるような映画ではない。横浜流星はどんな役でも素晴らしい。よくこんな映画に出たな(褒めてます)。
「最後まで行く」が楽しみ。
【”邯鄲の夢・・。”巨大なゴミ最終処分場誘致により存続している村で、村人たちが長年隠蔽してきた事。社会に居場所の無い若者達の盛衰や、村社会の旧弊的な体質や闇を描いた哀しくも恐ろしき作品。】
ー CGであろうが、山に抱かれた村の上に聳え立つ巨大なゴミ最終処分場が村人たちを見下ろしているようで、不気味である。
そして、そのゴミ最終処分場で行われてきた事は、もっと禍々しい事であった・・。-
■ゴミ最終処分場で働くユウ(横浜流星)は、ギャンブル依存症の母(西田尚美)と二人暮らし。いつも猫背で無精ひげを生やし、覇気のない空虚な生活を送っている。
冒頭、男が涙を流しながら室内にガソリンを撒き散らし、ライターを投げて炎に包まれるシーン。このシーンはラストに同様のシチュエーションで”再現”されるのである。
”負のサイクル”を描いた、作品構成の妙であろう。
◆感想
・冒頭で映し出される村で行われていた能のシーン。
演目は”羽衣”と”邯鄲”である。
ー それをじっと見ている幼き二人の男の子と、女の子。
感の良い人は、このシーンでこの後の展開が予測出来ると思う。-
・徐々に明らかになるユウの父が、ゴミ最終処分場建設の数少ない反対派で、村八分になっていた事。故に賛成派の人間を殺して、自宅に火を放った事。
ー ユウが暗い顔でゴミ最終処分場建設で働いている理由が分かる。母がギャンブル依存症になった理由も・・。-
■恐ろしいのは、村社会の中で、”殺人者の息子”と言う理由でユウが白眼視されている事である。これは、村に限った事ではなく重罪を犯した者がいる家族は、殆ど転居を余儀なくされているのが島国日本の実情なのである。
隣に誰が住んでいるのか分からない様な町に住むのも、嫌なモノだが・・。
・東京から幼馴染のミサキ(黒木華)が戻ってきた事で、ユウの表情に徐々に明るさが戻って来る。役場に勤めるミサキは、ユウをゴミ最終処分場の小学生向けのガイドに推薦する。だが、それを快く思わない村長(古田新太)の息子トオル(一ノ瀬ワタル)。トオルはヤクザともつながっており、且つミサキに恋していたのである。
ー 故に、必然の如く悲劇が起こる。
作品構成で巧いのはミサキをトオルが襲うシーンでトオルがユウを只管殴り続けている所で、シーンが変わる事である。
又、さりげなくミサキが東京に馴染めずに精神を病んでいた事も、劇中で語られるのである。-
・ユウはTVにも出演し、村には多数の観光客が訪れるようになる。ユウの姿を吃音のケイイチは”ヒーロー”として慕っているのである。
ー だが、実際には前半描かれているように、処分場には夜間、廃棄してはいけない”バイオハザード”がヤクザ(杉本哲太&トオル)により持ち込まれ、ユウたちはそれを埋めていたのである。シニカルである。そしてケイイチがある日処分場で見つけたモノとは・・。-
<ユウは、村長が自分の父にした事を知り彼の首を”お前がゴミだ!”と言って、”父と同じように”部屋に火を放つ。
そして、病の為に喋れない筈の村長の母(木野花:今作では一言も話さないが、物凄い存在感を放っている。)は炎が近づく中、”邯鄲”を謡うのである・・。
今作は、村という限られた空間の中で引き起こされる旧弊なる人間関係をベースに、村が抱えた闇や、格差を描いた作品なのである。あな、恐ろしや・・。>
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