「強烈な劇薬」ヴィレッジ bionさんの映画レビュー(感想・評価)
強烈な劇薬
謡曲が聴こえる中、能の舞と火の惨劇がカットバックする強烈なプロローグで幕が上がる。禍々しい絵力で脳が麻痺してしまい、極端な設定をすんなり受け入れることができる。
村長の息子がタトゥーをチラつかせながら尊大に振る舞うなんてことは、ありえない。家族が何かを仕出かしたのなら、村から出ていくのが普通。田舎出身者であれば、このフィクションのおかしさに気がつくと思うが、藤井監督が劇薬のような物語を作るために、あえてそうしたのだと思う。
人口が減少していく中で、よほどの観光資源か、付加価値の高い物産でもない限り、小さな村を維持するのは困難だと思う。地域共創という名目でコンサルのカモにされるよりも、産廃施設や基地を引き受けて延命する手段が一番現実的なのだろう。
この物語に答えはない。胸をえぐられる物語に何を感じるか、何を思うか。
悪魔に魂を売り渡して村を維持することを否定できない自分がいる。そういう意味では、異なるラストも見てみたい。
コメントする