劇場公開日 2022年7月8日

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「新しく考えてみた」神々の山嶺(いただき) つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0新しく考えてみた

2025年2月20日
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鑑賞方法:VOD

この物語の焦点は、羽生やその他の登山家が何故山に登るのかというところだろう。
観ていたときは羽生たちの姿を見て漠然とはいえ自分の中で答えのようなものが浮かんだ。しかし、観たのが少々前で、それを忘れてしまった。レビューを書くのだからどこかに書きとめておけば良かったと後悔しているが今更だ。

書くことを失ってしまったので代わりに考えてみた。
「好きだから」というのはある意味当然なのだろうが、何故好きなのかという部分が大事だろう。
例えば主人公深町はおそらく登山が好きというわけではない。仕事として山登りのスキルを身に着けている。
一方で、先の登山家であるマロリー、羽生のライバルであった登山家、羽生に憧れる若者、彼らの登場が意味するところは、先人のあとを追い、それを追い抜くことにあるのではないかと思う。
何事も先人の残したものの上に成り立つ。登山に限った話ではない。過去の論文を下敷きに新しい論文を書くみたいなことだ。
例えばエベレストに登頂するにしても、まずはチームで、次に無酸素で、単独で、単独無酸素でと、難易度を上げていくのは、先人を追い抜きたいからだ。
ただ山登りが好きなだけなら、そんな無茶をする必要はないはず。登山だけにてっぺんをとりたいのかもしれない。
少なくとも、この物語に登場する登山家は皆そうであるように見えた。それが「好き」の正体。

観ている最中に感じたのは、こんな俗っぽいものではなくて、もっとエモーショナルな感覚だった気がしている。
忘れてしまったので仕方ないが。
それでも、まあ悪くない見立てなんじゃないかと思う。
多くのレビュアーさんが、自分は登山家ではないから完全に理解するのは難しいみたいなことを書いているが、羽生の中にある情熱や執念のようなものは、別に登山家に限らず誰にでも該当するのではと思う。
登山家の場合、命がけでないと達成出来ないことだったに過ぎないだろう。
言葉は悪いが「無駄に頑張る」という経験は多くの人にあることだ。

日本の夢枕獏の原作を元にしたフランスのアニメーションで、日本の看板に描かれた文字などもしっかりした作品だった。
主要人物が日本人であることや日本の場面があることは、作品の内容と全く関わりがないので、フランスを舞台に改変すればいいのにと薄っすら思った。
しかしそのままアニメーションにしたフランスは、映画の芸術性に対して妥協がないと感じた。観客に分かりやすくなど考慮しない。
日本人の多くは日本はアニメ大国と思っているだろうが、映画の芸術性という点においては全くフランスあたりに敵わない。毎年行われるいくつかのアニメーションの国際賞で日本の作品が受賞することは稀だ。

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つとみ