「山岳カメラマンの深町誠(VC 堀内賢雄)、彼は日本のエベレスト登山...」神々の山嶺(いただき) りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
山岳カメラマンの深町誠(VC 堀内賢雄)、彼は日本のエベレスト登山...
山岳カメラマンの深町誠(VC 堀内賢雄)、彼は日本のエベレスト登山隊を取材するためネパールに来ていた。
途中で登攀断念をしたチームとともにネパールの食堂で酒を飲んでいた深町は、怪しい現地人から「英国登山家マロリーの遺品のカメラ」を買わないかと話を持ち掛けられる。
マロリーはエベレスト登山の途中で消息を絶ったかつての山岳家で、もし登攀していれば、マロリーが初登頂者となるのだが・・・
胡散臭い話に乗らなかった深町だが、先ほどの怪しい男の後を付けると、男に絡む中年日本人男性に出くわした。
日本人男性は、現地人男性の持っていたカメラを奪ったが、その日本人男性の顔に深町は覚えがあった。
何年も消息を絶っていた孤高の天才クライマー、羽生丈二(VC 大塚明夫)。
深町は、マロリーのカメラとともに、羽生の過去を深掘りすることにした・・・
といったところからはじまる物語で、謳い文句は「究極の冒険ミステリーが始まる」なので、マロリーのカメラの謎がミステリーのネタなのだろうと思いながらの鑑賞。
なのだが、映画の着地点は、そこにはなかった。
と先にネタバレで申し訳ない。
なぜ羽生が山に登り続けるのか。
それがミステリーのネタといえばネタ。
しかしながら、それさえもタネは明らかにされない。
そりゃそうだ。
ヤマ屋にとっての山は生きていることの証であり、なぜ生きているのかと問われているのと同じだからだ。
たしかに同伴登攀した若い登山家が命を落とすエピソードが描かれるが、その贖罪のようなものというような安易な感動には寄せていかない。
その厳しさが、この映画のいいところです。
日本描写も念入りで、現在において、70年代の日本を再現するはかなり困難が伴う作業だったろうと想像できます。
一部、カタカナ縦書きの看板の長音記号「ー」が縦棒でなく、横棒だったのは残念でしたが。
気になったので、主人公・羽生丈二のモデルとなった人がいるのかしらん、と調べてみたところ、森田勝という登山家がモデルだそう。
羽生に先んじて三大北壁冬季単独登攀をする若い登山家・長谷常雄も登場しますが、こちらは名前からして長谷川恒男。
そういえば、長谷川恒男のグランドジョラス登攀を記録した『北壁に舞う』(1979年)を初公開時に鑑賞しており、「グランドジョラス」の名を聞いて思い出しました。
最近もそうなのですが、一時期、山岳ドキュメンタリー映画がいくつか作られていましたね。