「鳥葬」帰れない山 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
鳥葬
夏休みに北イタリアのモンテ・ローザ山麓の村を母親と訪れたピエトロ少年。
おじさんに引き取られ、牛の放牧を手伝うブルーノ少年と出会う。普段は都会のトリノで暮らすピエトロと学校に通っていないブルーノ。山麓の村とトリノでは言葉の違いもあるようです。
有名なイタリアの小説が原作。
山での暮らしに憧れていたピエトロの父親が仕事を終えてトリノから合流すると、二人を連れて山登りに向かったが、ピエトロは高山病にかかり、氷河のクレバスを飛び越えることができない。体力に勝るブルーノに引け目に感じてしまうピエトロ。父親もブルーノを誉め讃えるので、ほんとの息子は立つ瀬がない。思春期になり父親に反発するピエトロ。とくに目標のないままピエトロは大学に進学。一方、ブルーノは村を離れ、石工職人の道へ。ピエトロが大学生になったころ偶然ある店でブルーノをみかける。互いにすぐに認識できたが、一言も言葉をかわすことなく、その場は別れる。ピエトロの父親の死を契機に村で再会した二人。ピエトロの父親はブルーノにひとつの夢を託していた。
自分の代わりに父親と交流していたかつての親友と父親の願いをかなえる作業はピエトロにとって、父親の弔いと関係修復の意味があったと思われました。
その後、ピエトロは二人の秘密基地を離れ、ヒマラヤへの旅に出る。
どっしりと大地に根を張ったブルーノの生き方に意地を張って、自分のアイデンティティーを探していたように思えました。
そして、ブルーノのとった選択。
取り返せない時間と大切だけれども、帰れない場所はピエトロを永遠に苦しめたでしょう。
ブルーグラスバンドの夫婦の悲運をテーマにしたオリジナル脚本のオーバー・ザ・ブルースカイ(2013年)を撮ったベルギー人夫妻の映画でした。だいぶ前にDVD購入して観ていましたが、すっかり忘れていました。残酷な運命とシンボライズされた鳥が出てきた映画だったと思います。このご夫婦はたぶんネイティブアメリカンへの憧れを持っていらっしゃるようです。
残酷な運命と印象に残る大自然の映像はかなりニガい余韻にしばらく浸らせてくれました。結構堪えます。