「様々な意味を持つ怪作」NOPE ノープ ますぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
様々な意味を持つ怪作
ジョーダン・ピール
1979年NY生まれの
コメディアン出身映画監督
父が黒人・母が白人で
幼いころに離婚し父とは離別
中間的な人種として成長する
うちに受けた差別などを
ネタとして笑い飛ばし
主にモノマネタレントとして活躍
2017年の「ゲット・アウト」
の脚本がアカデミー脚本賞受賞で
ブレイクし「アス」など引き続き
人種問題をコアにした作風で活躍
監督としては今作が3作目
でどうだったか
この監督のキャラクターである
人種問題を映画で扱う中では
「機知」を超えた
人の怖さや狂気と
いったものが軸になる事が
多いですがこの映画は
「未知」の生命体であり
ここがあまり嚙み合って
いなかった気がしました
ただ映像的には観るべきものが
大きく正直是非はまだ難しい映画
19世紀につくられた
黒人の騎手が馬を走らせる数コマの
フィルム「動く馬(実在する)」
その騎手がご先祖様だという
ハリウッド郊外の広大な牧場で
映画用の馬の訓練等で生計を立てて
いたヘイウッド家のOJ
ある日白馬に乗った父
オーティスと他愛ない話を
していると突然空から降ってきた
コインで父は頭を貫かれ絶命
航空機からの落下物で起こった
不運な事故と言う片付けだったが
OJは当然釈然としません
オーティスの信用で仕事を
貰っていた事で牧場経営は困難
馬を処分していかざるを得ず
近所のウエスタンテーマパーク
「ジュピターズクレイム」に
一番良い黒馬「ラッキー」を
売却する商談をしに行くと
付いてきた妹のエメラルドは
オーナーのジョープが
昔人気だった子供番組
「ゴーディズホーム」の
子役であることを知ると
その筋では噂になっていた
番組が突然終了した理由を
知ることになります
映画の冒頭に出てきた
血まみれのチンパンジーが
スタジオをうろつくシーンと
つながってきます
(この事故は史実が元だそうです)
その番組はゴーディと言う
名のチンパンジーと家族が交流
するコメディ番組だったのですが
その役の「訓練されているはずの」
チンパンジーが突然暴れ出し
出演者を撲殺して周り
ジョープは一人だけ
生き残ったのでした
OJは牧場に戻ると夜な夜な
突然停電になるなどの奇妙な症状や
不穏な雰囲気に苛まれ
白馬が逃げ出したこともあり
追いかけながら
辺りを見回っていると空に
謎の飛行物体をちらっと発見
物陰に隠れますが白馬が
竜巻のような風と共に
さらわれてしまいます
その様を目にしたOJは
ビデオに記録して金に
換えられないかと画策します
エメラルドも乗り気で
ホームセンターに行って監視カメラ
の準備をしに行きますが機械は
サッパリなのでお節介だか
親切だかわからん
店員のエンジェルに
「空に向けた監視カメラ」
の設置を依頼します
その後監視を続けますが
やはり停電がやって来て
カメラに捉える事は出来ません
しかし「動かない雲」の
存在に気が付いた一同は
OJは馬がいた時に出現した事から
ラッキーを買い戻そうと考えます
場面はジョープのテーマパークに
代わりそこで行われている不思議な
ショーがありました
ジョープはどうもこの未確認物体
の存在を知っていたようで
ゴーディズホーム騒動で
生き残った時にチンパンジーと
わかり合えた(気がした)
経験からか
その物体とも分かり合えると
思っていたようで
具体的にどんなショーを
やっていたのかはわかりませんが
馬を走らせて出現を煽るような
ものだったようです
するとジョープの呼びかけ通り
未確認物体が姿を現し
なんとテーマパークにいる客から
見上げていたジョープまで
すべてを吸い込んで
飲み込んでしまいました
その場に駆け付けたOJは
もぬけの殻になったパークに
ポツンといたラッキーを
救い出し馬運車で戻りますが
その間に家はその生物に覆われ
吸い込んだ人々の血の雨が降り
大変なことになっていました
OJは「見上げると吸い込まれる」
特性に気が付いてなんとか
エメラルドとエンジェルを救い出し
エンジェルの家まで逃げます
ここまでくるとその化け物を
どうすればいいかという所で
とりあえず姿を記録に捉えよう
という基本線は変わらなかった
ようで序盤の仕事シーンで
出てきた腕は確かだが
クセのあるカメラマン
ホルストに依頼します
ホルストは最初は訝し気でしたが
事情を知ると俄然乗り気になり
電力を使わないオリジナルカメラ
など良さそうなものを持ってきます
OJはここでその謎の生物に
「Gジャン」と名付け
おびき出すための特徴
「本物と模型の馬の識別は出来ない」
「旗とか吸い込むと詰まる」
「見上げなければ吸い込まれない」
などの条件を踏まえて作戦を
立てます
まぁこの特徴ってのが
だったらわざわざ旗を作るんじゃなくて
もっとでかいシートとか用意すれば
とか色々考えちゃうんですが・・
まあそれはいいとして
一同は牧場にGジャンを誘い出し
ホルストは想像を超えた生物の
撮影にかまけすぎて吸い込まれて
しまいますがなんとかGジャンの
破壊に成功
その中でどこかすれ違っていた
OJとエメラルドの兄妹の関係も
お互いを助けようとする意識にも
繋がっていました
まあそんな感じで終わっていくんですが
そのGジャンの最終形態が
あまりに意外過ぎてポカーンと
してしまいます
なんなのかよくわからない感じを
出そうとしすぎたかな
この映画って結局
良く知っていて支配しており
自分たちに都合よく使ってきた
「はず」の対象から思わぬ反逆を
受けることへの警鐘的なものを
白人が黒人をとか
人間がチンパンジーをとか
そしてジョープが未知の生物をと
繋げていきたかったんでしょうね
でも未知の生物は当然
機知ではないのですから
果たしてこれで
テーマとストーリーが地続きに
なっているかなという疑問は
ありました
観客はこの生物は何なんだ
というほうへ興味が行きますから
いつもの人種問題的描写が
なんか邪魔になってしまいます
白い馬が吸い込まれ
黒い馬が最後までヒロイックに
活躍するなんてとこも
ひょっとして・・?
悪いけどあまりに
幼稚すぎませんかね
人種問題と内容の絡めで
言うならば最近見た中では
「アンテベラム」が
良かったと思いますが
あれはなんかインテリ様達には
評価が低かったそうで
ようわかりません
映画を映画として評価しない
層はどうでもいいです
なんだかアカデミー賞も
今後はポリコレ要素の高さが
選考基準に組み込まれるとか
つまり内容がクソッタレでも
ポリコレが徹底してれば賞が
貰えるようになるんでしょうか
そんな要素でメディアが
注目作として取り上げるとか
していくのなら
アカデミーとラジー
同時受賞とかも
ありえるんでしょうね
シナリオやストーリーは
凡庸ですが夜のシーンの照度や
チラッとよくわからないものが
移りこませ方など映像的には
見ごたえはありました
その点ではIMAX版でも
面白いかもしれませんね