「そこまで『スピルバーグ』を意識しなくっても・・・・。」NOPE ノープ ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
そこまで『スピルバーグ』を意識しなくっても・・・・。
『ジョーダン・ピール』の新作は、
どうレビューを書いてもほぼほぼネタバレになってしまうので、
ココは開き直り、一種の{バスターズ}モノとのっけから言いきってしまう。
とは言えその対象が、宇宙から飛来したものなのか、
そもそも太古から地球に存在していたものなのかが判然としないのが一つのミソ
(前作の〔アス/Us〕は後者だが)。
中途迄は何が起きているのかさえさっぱり判らぬのは過去作と類似。
なので、これは監督の一つのスタイルと見る。
とりわけ謎なのは、
{シットコム}撮影現場で起きた事件の始終を
繰り返し挿入すること。
家族の一員に近い位置付けで飼われているチンパンジーが
突然野生に目覚めた様に狼藉をはたらくのだが、
これは比較的身近な存在でも
心底判りあえないとのメタファーか。
本編に有る〔未知との遭遇(1977年)〕を思わせるカット、
或いは当該エピソードで描かれる〔E.T.(1982年)〕の一場面を彷彿とさせるシーン、
何れも『スティーヴン・スピルバーグ』の「分かり合える」ことへの
アンチテーゼとも思ってみたり(笑)。
オマージュと言えば、
その敵対する「UAP」のフォルムが
〔新世紀エヴァンゲリオン〕の「使徒」の一つに似ているのも示唆的。
これ一つを取ってみても、
本作での「UAP」=「Alien」と単純には割り切れない証左かもしれぬ。
物語は、本筋とはあまり関係のなさそうなエピソードから始まり、
中途から風雲急を告げる。
矛盾を感じる設定も幾つか散見されるものの、
終局に向かっての
小道具(大道具?)類の使い方の巧さにはとりわけ感服。
何れも事前にさらっと見せておき、最後の役立ちアイテムとなるのだが、
〔ジョーズ(1975年)〕の酸素タンクほどしつこくないのが好ましい。
また以前から有る怪現象「キャトルミューティレーション」や
人が突然に行方不明になってしまうこと、
或いは空から人工物が突然降って来る(これもやはり)奇怪な現象への
解を提示していることも興味深い。
「シミュラクラ現象」は人にプログラムされた習性で
自己の身を護るために機能する一方、怪異現象への呼び水。
そして本作では、
横に二つ並んだ点を目として、イコール動物として認識するシステムが
物語の大きなキモとなっている。
脳の奥深くに根差したより原始的な本能に翻弄される人と「UAP」の争いは
最後までスリリング。
チンパンジーを家族として迎え入れるホームコメディは
({シットコム}ではないけれど)、実は本邦でも制作/放送されている。
1968年に「CX」系で放送された〔クレオくん〕がそれで、
僅か1クールで終了してしまったが。
そのことを記憶している人は、
もう少ないんだろうなぁ。