「未確認飛行物体(=保守的南部の縄張り意識強い白人?) vs 黒人兄妹!"バズる"現代の西部劇こそ今年最も興味を引く作品」NOPE ノープ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
未確認飛行物体(=保守的南部の縄張り意識強い白人?) vs 黒人兄妹!"バズる"現代の西部劇こそ今年最も興味を引く作品
長年ネタにされすぎてきたので、今後はUFOじゃなくてUAP。KYじゃなくてRTR("read the room" 空気を読む)。
《起源/興り》最初の映画は2秒間の馬の駈ける映像だった。それは頑として動かずそこに居座ることで権利を主張してきた"白人の地"というイメージのあるもの/場所(白人ばかりの映画馬業界もそう)を、実は自分たちの方が以前から持っていて奪還しようという試みか。タイトルが指す強い否定のように黒人の正しい歴史を開拓する。『ゲット・アウト』でも組んだダニエル・カルーヤくん流石の存在感と、ハイテンションな妹エメラルド役キキ・パーマーの好演。一方で、言うならば黒人に先んじて覇権を持つ白人と近づいて/上手に擦り寄って甘い蜜を吸おうとする抜け目なく飄々とズル賢い(?)アジア系スティーヴン・ユァン。チンパンジーにまつわる過去のトラウマ必至の血みどろな記憶、この辺りのドキドキハラハラというより居心地悪くバクバクする容赦ない暴力描写なんかは前作『アス』を彷彿とさせた。すべてコントロールできるだなんて思うのは人間のエゴ。
"最悪の奇跡"…降り刺さる鍵(=所有権/所有物の象徴)の雨、血の雨、そして動かない雲。ホラー/スリラーというジャンルで今まで誰も見たことのないような画期的アイデアと奥深さで持ってして、アメリカ社会を描く/映し出すことで映画を更新してきた鬼才ジョーダン・ピールは、やはり賢すぎるのかもしれない…作品を重ねるごとにそれは確信に変わっていっている。いちいち印象的な小物使い含め小技が効いている巧妙な見せ場作り。旗でもスカイダンサーでも、既に世の中に普通にあるものを思いがけない用途やシーンで使うことで効果的な場面や作品を作り上げてしまう天才。今後もそんな僕たちの目を見張らせるような唯一無二ユニークな存在であり続けてくれ。
彼の手(頭?)にかかればどんなものだって怖くなる。今作では子供のときにTVで見ていたようなUFOやUMAに迫る2時間特番なんかにホラーテイストを混ぜ合わせたような、遠くから見ているのではなく、もし真上に"それ"が半年も動かずにいて、生活が脅かされたら?…という究極シチュエーションを突き詰める。ホイテ・ヴァン・ホイテマによる美しい撮影で、この上なく不穏な空気を演出する。注目を引きたくなければ見るな。上を見るな…上を見るな…見上げちゃだめ。←これもまたKKKはじめ白人至上主義者たちによって、白人を見ただけでなぶり殺されたりしていた黒人分離政策ジム・クロウ法などのことを指し示しているのだろうか(あるいは現代的事なかれ主義か)?今回も真にオリジナルでものすごく掴まれた"オプラ映像"。カメラを向けることの暴力性に見る/見られるの関係を空のジョーズとして描いていて、一見の価値ありです。
APPLAUSE
P.S. 『スコーピオン・キング』見直したくなるかも(あのいい発色したオレンジ色のパーカーいい)?あと、スティーヴン・ユァンの少年時代とチンパンジーのゴーディは、前田航基とパンくん??