「素晴らしいダークファンタジーでした」ノースマン 導かれし復讐者 yudutarouさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしいダークファンタジーでした
こんな超大作を撮っているのに、ちゃんと作家性というか、やりたいことをやっている姿勢は凄い。初期作で既存のハリウッドとは違う感性で登場しながら二作目以降尻すぼみになったりアメコミ映画などに吸収されて独特の面白さがスポイルされてしまう監督が多い中、それだけでも貴重かも。
で、今作。ゆったりとしたカメラワークの中で繰り広げられる蛮族の肉弾戦に迫力があって、コナン(名探偵でも未来少年でもない方)の世界がここに!という感じで良かった。ファンタジー世界に際立つバイオレンスと呪術的な世界観のまぶし具合は『ゲーム・オブ・スローンズ』を想起させるが、『ウィッチ』の監督らしく、呪術方面の土着信仰的な雰囲気が色濃くて、寒々とした北方の村国家で繰り広げる復讐譚は小ぢんまりしてるんだか壮大なのか分からないんだけど独特の神話世界を見せてくれて良い。
キャストも良くて、主役のアレクサンダー・スカルスガルドの粗暴さもハマっていたし、再びアニヤ・テイラー=ジョイを起用してくれてるのが個人的に満点。他のキャストも豪華だし、役に違和感も無かったのだけど、ニコール・キッドマン以外はエンドロール見るまで分からなくて、それもハリウッド大作を見てる感覚が薄くて良かった。とはいえビョークは出る必要あったのかとも思ったけど。存在感はあったけど、あのメイクで魔女役やったら別にビョークじゃなくても強烈なキャラになるだろうし…。
ともかく、世界の狂気に取り込まれ、狂人としてしか生きる術を持たない人間の足掻きっぷりをアクション大作として作り上げたロバート・エガースには次作以降も期待しちゃうし、今作も映画館で観るべきだった。『ライトハウス』もまだ観てないから観なきゃと思った。